第2話『英雄帰還』

勇者「この一撃で終わらせる…!!」


魔王「返り討ちにしてくれるわ!!」


勇者「うおぉぉぉぉ!!!」


 ボキッ……


勇者「そ、そんな特別仕様の勇者の剣が折れるなんて……」


 ガバっ!!


 勇者は焦りと絶望の中、勢いよく起き上がった。


勇者「ん?」


仲間達「ZZZ」


 寝ている仲間達を見て夢だったことに気付いた。


勇者「……そうか俺達は…」


 状況を把握した勇者は再び安堵と達成感に浸る。激闘の末、念願の魔王を倒したのだ。長年に渡る緊張感と疲労の蓄積で寝てしまうのは当然のことだった。


勇者「俺ももう少し寝るか…」


 

 勇者は再び眠りについた……



勇者「ん〜…眩しいな」


 

 魔王城の亀裂から差し込む光を顔面で捉えた勇者は目を覚ました。


勇者「げッ!!」


 そして、慌てた。


 外は晴天、真っ昼間。勇者達は魔王城で次の日を迎えてしまった。


勇者「おい!みんな起きろ!!帰るぞ!」


戦士「まだ眠たい…」


 勇者は慌てて仲間達を叩き起こした。魔王を倒したもののゴンドラ王国で勇者達の帰りを待つゴンドラ王にまだ報告が終わっていない。勇者達は急いで帰り支度を始めた。


 魔王城からゴンドラ王国までの距離はかなりある。ここで魔法使いによる移動魔法の出番だ。叩き起こされた魔法使いは寝ぼけたまま移動魔法の呪文を唱える。魔法の杖から放たれた光は虹がかかるように魔王城から目的地までを示した。


魔法使い「よ〜し…いくよ?」


 光の道を高速で移動する勇者一行、その速さは新幹線にハンデをあげてもお釣りが返ってくる速さだ。目的地までアッ!っという間に辿り着いた。


魔法使い「よし!……あれ?」


 辿り着いた場所は目的地のゴンドラ王国ではなく、かつて攻略した暗闇の洞窟だった。


魔法使い「へへっ、ごめん」


 寝ぼけていた魔法使いは単純に行き先を間違えてしまった。


勇者「最後ぐらいきっちり締めてくれよ」


戦士「ハハハ!まぁ、いいじゃないか。戦いは終わったんだ」


 こんな些細なことで笑うのはいつ振りだろうか。仲間達の笑い声は徐々に大きくなり戦いの終わりを心の中で噛み締めていた。


魔法使い「……戻ろうか。ゴンドラ王国へ」


 この仲間で移動することも最後なんだなと1人思いながら魔法使いは再び移動魔法を唱える。光の進行方向は間違いなくゴンドラ王国へ向けられ勇者達は無事ゴンドラ王国へ帰還を果たした。


勇者「こ、これは…」


 勇者達はあまりの光景に驚いた。目の前にはかつて関わってきた者達や王国の民が勢揃いで勇者達の帰りを待っていたのだ。


「勇者殿達が戻ってきたぞー!!」

「キャー待ってたわー!!」

「よくぞ無事で!!」


 ざわつく群衆、まるでアイドル来日と言わんばかりの状況だ。この群衆こそが勇者達の偉業と感謝を表していた。


勇者達「?」


 騒がしい声援がピタッと止まった。


 群衆が後方から裂けるよう割れていく。ゆっくりと歩き現れたのはゴンドラ王とこの国を護る聖騎士団の聖騎士達だ。


 聖騎士達は勇者達を目の前に足を止めると乱れることもないタイミングで一斉に敬礼をした。ゴンドラ王が一歩前に出る。


ゴンドラ王「よくぞ無事で……」


 ゴンドラ王の目から滝のように涙が流れていく。しかし、王として最後の言葉をかけるまでその表情は崩れることはなく勇ましかった。


ゴンドラ王「よくぞやってくれた!勇者達よ!!!」


 ゴンドラ王の表情が一気に崩れた。


 同時に群衆の大きな声援が勇者達を包み込んだ。


勇者「俺達は世界を救ったんだな……」



 長年の勇者達の冒険は終わりを迎えた。



 つづく……


 


 




 


 

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