再会

「フィオナ…… 久しぶりだね……」

「はい……」


 フィオナは泣いている。俺に抱きしめられながら。


 もう離さないよ。


 三万回を超える転生の後に俺達は再び出会うことが出来た。


 何を言っていいのか分からなかった。


 ただフィオナを抱きしめてキスをすることしか出来なかった。


 俺は彼女の愛しい顔を一撫でしてから再びキスを交わす。


 恋人同士が交わすとても深いキスを……


 胸が暖かくなる。なぜか胸の奥にフィオナのオドを感じる。これは……?

 俺は口を離す。フィオナは物欲しそうな顔をしてから口を開く。


「んふふ…… また契約してしまいました……」


 そうか、魂の契約だ。

 切れかかっていた糸が結ばれるように再び魂の契約を交わす。 


「フィオナ…… もう離さないよ……」

「はい…… もう離さないでください……」


 お互いの顔を見つめ合い、再びキスを交わす。


 家から出てきた母さんが俺達を見てびっくりしてるのだが…… 

 ごめんね。もう少しこのままでいさせてね。


「ちょっと! ライト! その人は誰なの!? 彼女!? 紹介しなさい! キャー! どうしましょ!? ライトに彼女が出来たわ! 父さんに言わなくちゃ!」


 ははは、母さんが騒がしい。

 そんな母さんを尻目に俺はフィオナをキスをする。

 駄目だ。足りない。もっとフィオナを感じたい。

 俺はマナを取り込み、天に向かって一言。



【止まれ】



 世界が動きの一切を止める。


 風が止み、


 波が止まり、


 鳥は空にいながら動きを止める。


 母さんは興奮したまま動きを止める。


 この世界で動いてるのは俺とフィオナだけだ。


 フィオナは不思議そうな顔で俺を見ている。


「ラ、ライトさん…… 何をしたんですか?」

「ちょっと時を止めたんだ。母さんがはしゃいでしょうがなかったからね」


 ごめんね母さん。フィオナのことは後で紹介するから。

 今からしようとしていること…… 


「部屋に行かないか?」


 フィオナはちょっと驚いた顔をしてから困ったように微笑んだ。


「んふふ。ライトさんのエッチ……」


 ははは、懐かしいセリフだ。

 俺はフィオナを部屋に連れていく。

 キスをしながらお互いの衣服を脱がす。


 そして……














 フィオナは俺の横で眠っている。ごめん。無理をさせてしまったかもしれない。

 優しくキスをするとフィオの目が開く。


「ライトさん……?」

「おはよ。大丈夫か?」


「もう…… 酷いです…… あんなにいっぱいするなんて……」

「ははは、ごめん。でもフィオナも良さそうだったから」


「知りません……」


 そう言って俺に背を向ける。俺はフィオナの背を抱きしめる。

 彼女の髪からいつもの香りが…… はは、いつものって言ってもこの匂いを嗅ぐのは七十五万年以上ぶりか。

 彼女をこちらに向かせキスをする。


「ん……」


 俺達は再びお互いを求め合った。

 離れ離れになった寂しさを埋めるべく……

 果てを迎えると、フィオナは満足そうに笑顔を見せる。


「ライトさん…… 会いたかった……」

「俺もだよ……」


 フィオナを強く抱きしめた。フィオナも俺を抱きしめる。


 もう離さない。


 お互いの想いを伝えるように俺達は強く抱き合った。


 それにしても、どれくらいの時が経ったのだろうか。

 時を止めているから時間の感覚が無い。

 なんとなく二、三日はこの状態でいる気がするな。


「少し話そうか」

「はい……」


 少し彼女を休ませないとな。

 フィオナは抱きつきながら質問してきた。


「ライトさんは今までどうしていたんですか? 貴方から感じたオドで転生してるのは分かったんですけど……」

「うん、フィオナが異界に飛ばされたことは覚えてる? 俺は黒い雪を止めるために管理者を倒すことになったんだ」


「管理者? 誰なんですか?」


 そうか、フィオナは管理者のことを知らないんだ。フィオナがトラベラーになった理由も伝えなくちゃ。


「管理者ってのはね、人の…… そして世界の運命を管理する人のことなんだよ。契約者は次の管理者になる運命を持つ存在だったんだ」

「ライトさんが次の管理者? 具体的に管理者は何をするんですか?」


 説明が難しいな。何て言えばいいのだろうか?


「んーとね…… 管理者ってのは異界とも違う空間、管理者は約束の地って言ってたけど、そこで運命の糸車を回し続けるんだ。たった一人でね」

「そんな…… 駄目です! そんな所に行っては駄目です! ライトさんは私を置いていきませんよね!?」


 フィオナは涙を流しながらすがりつく。

 大丈夫だよ。君を置いていくなんてことは……ちょっとはする予定だ。

 それは後で話そう。


「フィオナ…… これから話すことは少し君にとって辛い話になるかもしれない。でも大切なことなんだ。聞く気はあるか?」

「はい…… 話してください。何ですか?」


「フィオナがトラベラーになった理由だ。トラベラーってのはね、もともとは契約者だったんだよ。フィオナもかつて約束の地に行ったことがあるらしいんだ。

 でも管理者になるのを拒み、己が死を望んだ。だけど死ぬこと叶わずフィオナはトラベラーに堕とされたってことらしい」

「私も契約者だったんですか?」


「あぁ。だけどその役目を放棄した結果、フィオナはトラベラーとして異界を彷徨うことになったみたいだ。そして異界に渡り、契約者を希望を以って約束の地に誘うことになったらしい」


 約束の地でアーニャに聞いた言葉、代行者は絶望を以って、トラベラーは希望を以って契約者を約束の地に誘う。

 この馬鹿げた円環に俺とフィオナは取り込まれたってことなんだよな。


「そうだったんですね……」


 フィオナの目から涙が一筋こぼれ落ちる。

 それから俺に優しくキスをした。


「ん…… 私、トラベラーになったことを後悔していません。だって、ライトさんに出会って幸せになれました。それ以上に辛い目にもあったけどまた出会えました。きっと私はライトさんに出会うためにトラベラーになったんですね……」


 そうだな。俺も契約者として生まれてきてよかったよ。君に出会うことが出来たのだから。

 まぁ三万回以上も転生するとは思わなかったけどね……


 俺はフィオナを抱きしめる。そして次の話に移る。


「管理者は五年後に黒い雪を降らせる。そしたら俺は約束の地に行くつもりなんだ」

「そんな!? 駄目です! ライトさんは管理者になるつもりなんですか!? それともまた転生するつもりですか!? それも駄目です! そんなことしたらまたライトさんと離れ離れになってしまいます……」


 ははは、そんなつもりはないよ。

 だからそんなに泣かないでくれ。


「ちゃんと勝算があってのことなんだ。俺は管理者を倒して、この世界に帰ってくる。転生した時にその方法を学んできてね」

「グスン…… さっき使った時空魔法ですか?」


 それは君のための魔法なんだけどね。

 そうだ、これは早めにフィオナにプレゼントしておこう。


 目を閉じる。


 イメージする。


 フィオナの中にある止まっている時計。


 凍り付いた時間が動き出す。


 マナを取り込み、時計にマナを流し込む。


 長針がゆっくり動き出す。


 トラベラーの止まっていた時間が動き出す……


 このイメージで、俺はフィオナに向かい魔法を放つ。



【時は動き出す】



 俺の時空魔法を受けたフィオナには特に変化は見られないが…… 

 きっと成功するだろう。


「ラ、ライトさん、今何をしたんですか?」

「これはね、時空魔法でフィオナの体内時間を人間と同じものに戻したんだ。たくさんのマナを使ったからきっと数年は人として生きていけると思う」


「それって、もしかして……?」


 正解。考えてる通りだよ。


 答えは聞かない。その代わり俺はフィオナを求めた。

 きっとフィオナは人として子供が出来る体になっているはずだから…… 













 でも中々出来なかったよね


 ふふ、四年もかかってしまいました

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