1521回目の転生 其の一

『ライト! ちょっと起きて! 変なんだ!』


 うーん…… 母さん、後五分だけ寝かせて……


『違うよ! 僕はレイだよ! ほら、いいから起きて!』


 誰かが俺の頬をぺちぺち叩いている……

 あれ? すごい久しぶりだな。

 こうしてレイと会うのはどれくらいぶりなんだろうね。


『そうだね。多分三万年ぶりじゃないかな』


 三万年…… そうか、俺はもうそんなに生きているのか。

 途中から数えるの止めたんだけど、これって何回目の転生なんだ? 


『1521回目だよ』


 うお…… 俺はもうそんなにも生きているのか。

 でもまだフィオナには出会えていなんだよな……


『そんな暗い顔しないで。今日君を起こしたのは弱音を聞くためじゃないんだからね』


 そういえば…… こうしてレイに起こされるのは初めてだもんな。

 一体どうしたんだ?


『大地に流れるマナ。これがおかしいんだ。今までとは全く異質なマナを感じる。人に流れるオドもそうなんだ。試しに母さんを鑑定をしてみたんだけど、今までの母さんとは全く違うオドの色をしていた』


 鑑定? お前そんなことも出来るようになってたの?


『鑑定は五百回目の転生の前に使えるようになってたよ…… 気付かなかったの?』


 マジで? 

 ってゆうか、使えるようになってるなら言ってくれよ。

 なら魔法も使えるようになったのかな?


『それは八百回目の転生の時には使えるようにしておいたよ。まさかそれも知らなかったんじゃ…… ほら! 自分で確かめてみて! 鑑定とは別にフィオナの使ってた分析魔法も使えるようにしておいたから!』


 分析も? あれってスカウターと同じだよな。たしか強さを数値化出来る魔法だ。

 よし、試してみるか。目にオドを込める。すると視界に数値が映し出された。



名前:ライト

種族:???

年齢:0

レベル:1

HP:10 MP:58992 

STR:5 INT:65309

能力:双剣術10 弓術10 体術10 身体強化術10 魔術10 

特殊1:マナの剣 マナの矢 千里眼 魔眼 理合い 分析

特殊2:理合い 混成魔法 超級魔法 神級魔法(黒洞)

付与効果:地母神の加護 地母神の祝福  



 すげぇ…… センス皆無だった俺が超級魔法を…… 

 それにしてもMPとINTの数値がおかしなことになってるな。


『そりゃ君が眠ってる間、ずっと魔物を狩り続けてたからね。ふふ、がんばったでしょ? でも君は今まで気付きもしなかったんだね……』


 レイは俺をあきれ顔で見つめる。

 いやね、俺はマナの矢が使えるからさ。魔法とかにあまり頼らなくていいじゃん? だから敢えて使おうと思わないじゃん?


『自分が魔法の修行しておいてって言ったくせに…… もういいよ! とにかく今回の転生は異質なんだ! 今までの世界とは全く違うんだよ!』


 全く違う…… どういうことだろうか? 


『フィオナに聞いたことがあるんだけど、この三千世界はどれも似たような世界だけど、時々他と異なる世界が存在するって言ったんだ』


 他と異なる世界…… 確かに言ってたな。

 フィオナはそれをイレギュラーって言ってたかな?


『そう。多分今の世界はイレギュラーに属するもの。多分だけど、時空魔法が存在する世界だと思う』


 時空魔法? でも俺が元いた世界でも時空魔法ってあったじゃん。遅延スロウとか使ってくる敵もたまにいたぞ?


『でもあれは主に精神に干渉して速くなったり遅くなったりするだけでしょ。それとは根本が違う。本当の意味での時空魔法が恐らく存在する』


 うーむ。言っている意味がよく分からん。

 で、俺はこの世界で何をするべきなんだ?


『体をライトに返すよ。この世界では君自身が多くを学ぶべきだ』


 えー…… それじゃ、また母さん達が死ぬとことか見なくちゃいけないの……?


『それはしょうがないよ。でもその悲しみを超えるだけの収穫があるはずさ! ほら、起きて!』


 わわ! レイが強引に俺を引きずる!

 光が一筋差し込んでいる場所に連れていかれた。意外と力持ちなんだな。


『そりゃ、僕は君なんだからね。力も君と同じくらい強いんだよ』


 なるほどね…… じゃあ、レイ。行ってくるわ。

 次の転生の時もよろしくな。


『うん。いってらっしゃい。また会おうね』


 レイは俺に手を振って見送ってくれた。

 

 天から差し込む光が強くなって……













 という訳で俺は久しぶりに赤ん坊の頃から転生を始めることになってしまった。

 言うに及ばず俺はライトと名付けられたのだが、転生した種族が今までの種族とは異なるものだった。


 なんと! エルフとして転生したのだ! 

 美人のエルフママが俺を愛おしそうに撫でてくれる。

 そして抱っこをして、ママは上着をめくり……


 あれ、おっぱい小さいですね。でもその控えめさもなお良し。

 エルフママは俺におっぱいを近付けて……


 フィオナ…… 許してくれ。

 いや、だってね。俺赤ちゃんだし、これってしょうがないよね? 

 しかしだな、人妻のおっぱいを飲むっていうのもなかなかの背徳感が……


 そんな益体も無いことを考える。

 でも今の体って結局は赤ちゃんのものなので、性欲とかは全く無いんだけどね。


 さて、いっぱい飲んで大きくなるぞ! 

 そして自分の足で歩けるようになったら時空魔法とやらを習得してみよう!



◇◆◇



 転生して五年が経った。

 村の中でなら一人歩きも許されるようになったので、今日は色々と探検することにした。


「ライト、遅くならないうちに帰ってくるのよ!」

「うん! 分かった!」


「ふふ。じゃあいってらっしゃい」


 母さんは俺の頬にキスをする。この人の名前もいつも通りナコという。

 やはり種族は違えど、同じ因果律の下で生きているということか……


 いや、考えまい! 今は俺に出来ることをしよう!


「そうだ。この村で一番魔法が得意な人って誰かな?」

「魔法? そうね。長老のモルガン様かしら」


 モルガン…… その人は時空魔法を使えるのだろうか? 訪ねてみるかな。


「分かったー。じゃあ、行ってくるね!」


 俺は元気よく家を飛び出す!


「ひゃほーい!」


 家は大樹の幹をくりぬいて作れられている! つまりすごく高い所に家があるのだ! 

 身体強化術を発動!



 ドスンッ!



 鈍い着地音を立てて俺は地面に降り立つ! 

 ここは森の王国アヴァリとは違って文化的水準は低いみたいだ。アヴァリは漆喰の壁の家とか結構あったからな。

 村を当てもなく歩く。ふふ、それだけで楽しいな。


 さて、長老様はどこにいるのかな? あそこで露店を出しているおじさん……もといお兄さんに聞いてみるか。

 自分もエルフに産まれたとはいえ、年齢はよく分からん。みんな若く見える。

 なのでおじさん、おばさんは禁句とした。


「ねぇ、お兄さん。この近くに長老様のおうちってある?」

「お兄さん…… 俺、そんなに若く見えるか? もう四百四十歳なのに……」


 おじさんだったか。いや、むしろエルフでも高齢と言われている年齢だな。

 エリナさんが言ってたな。エルフは六百年は生きるって。


 自分の容姿を褒められたと思ったおじさんは俺に焼き鳥を一串奢ってくれた。ラッキー。

 俺は焼き鳥を頬張りながらおじさんの話を聞くことに。


「長老様か…… お前、長老様になんの用だ? いたずらとかはしちゃ駄目だぞ?」

「そんなことしないよ! ちょっとモルガン様の使う魔法に興味があってね……」


「そうか。でもそう簡単には会えないと思うぞ。なんたって長老様は聖樹の天辺に住んでるんだからな」


 聖樹…… この世界にも聖樹はあったか。聖樹とはどこにあるのだろうか?


「聖樹は村を南にずっといった外れにある。ここいらで一番高い木だから見りゃ分かるさ」

「なるほど…… じゃあ、行ってくるね! おじさん、ありがと!」


「おう! でも長老様に会えなくてもがっかりするんじゃねぇぞ!」


 おじさんは手を振って俺を見送ってくれた。

 南か…… では身体強化術を発動してダッシュだ!



 バビュンッ!



 猛スピードで南に進む!

 おっとごめんよ! 俺にびっくりしたエルフのお姉さんが買い物籠を落としちゃった。後で謝らないとね。


 そして進むこと三十分。

 聖樹が見えてき……


 うはぁ…… 高い。天辺が霞んで見えないや。

 もはや、木っていうよりは山だな。

 幹回りはどれくらいあるのだろうか。

 小さな村が入ってしまいそうなくらい太いぞ。


 この天辺に住む長老様…… 一体どんな人なのだろうか?



 期待を胸に俺は聖樹を登り始めた。


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