ライトVSライト

 俺は膝を着くルージュの横を過ぎ、前に出る。

 目の前には変化を解き、豹の姿に戻ったオセがいる。

 さぁ、かわいがってやるかな。


「それじゃ猫ちゃん、俺と遊ぼうか」

『ふふふ。嬉しいですね。今度はあなたが私を楽しませてくれるんですか? では貴方の姿を借りるとしましょう』



 ―――ズズズッ



 突如オセの周りに霧が立ち込める。

 そして霧が晴れ、現れたのは……


『人族に化けるなど久しぶりです。ふふ、中々強い肉体を持っているようですね』


 オセは変化の術を使い俺の姿となった。

 気持ち悪いな。鏡を見ているようだ。

 変化することで俺と全く同じ力、能力を持つはずだ。

 いきなり全力で行ってもいいがまずは一泡吹かせてやりたい。

 おじさん、ルージュのためにも。


「ライトさん、ちょっと待ってください」


 ん? フィオナが俺を呼び止める。どうしたんだろう? 

 彼女はチョイチョイと手招きをしている。


「どうした?」

「ちょっと動かないでくださいね」


 フィオナは羽ペンを取り出し、俺の左目にペンを走らせる。

 いてて。初めてやられた時は驚いたが、もう慣れたものだ。

 魔眼の魔方陣だな? どんなものが見られるようになるのか。


「これは?」

「スカウターと一緒です。これでオセの力が分かるようになりますよ」


 すごいな。いつの間にそんなことが出来るように…… 

 そうか、こないだの休みの時にギルド長からスカウターを借りたんだ。あの時か。


「ありがとな」

「んふふ。どういたしまして。頑張ってく…… って、ひゃあん!」



 チュゥゥゥッ



 お礼に抱きしめてキスをする。長めに。

 はは、驚かせちゃった。さっさとオセを倒してお前のもとに帰ってくるから。


「ん…… もう。早く倒してきてください。続きがしたいです」

「え? は、はい……」


 よ、予想以上の答えが返ってきて焦った。

 俺はフィオナを別れ、オセと対峙する。

 オセの力はどんなもんだ? 目にオドを込める。すると……



名前:オセ

種族:魔神

年齢:???

レベル:458

HP:47234 MP:14286 

STR:43610 INT:20831

能力:双剣術10 弓術10 体術10 身体強化術10 魔術1 

特殊:マナの剣 マナの矢 千里眼 魔眼 理合い 混成魔法 変化

付与効果:地母神の加護 地母神の祝福



 なるほど。こんなところか。オセは相手の能力をコピーし、更に自身が持つ力を上乗せする。俺のステータスはオセに及ばないだろう。

 だがな…… 強さってのはステータスだけじゃない。

 そのことを教えてあげないとな。



 ―――スッ



 俺は手をオセに向かって差し出す。


『握手ですか? いいですよ。これから死ぬあなたへの手向けですね』

「違うよ。お互いの手の甲を付けるんだ」


『おもしろい。やってみましょう』


 対手という戦い方だ。一度、フィオナとの訓練で試したことがある。

 まずは徒手空拳での手合わせだ。お互いの手の甲を合わせる。


『どのようなつもりかは知りませんが私は格闘も強い…… ぐはっ!?』



 バチィッ!



 オセの口から血が噴き出る。

 合わせた甲をそのままオセの腕を滑らせ裏拳を叩き込んでやった。


「ごめん、でも喋りながら戦うと舌を噛み切るぞ」

『ご教授ありがとうございます!』



 ビュンッ!



 言い終わると同時にオセが下段蹴りを放ってくる。狙いは俺の足首。

 このまま食らえば転倒は免れない。当たればね。

 こんなの狙われた足を上げれば済む話だ。


 俺は下段蹴りを空ぶったオセの軸足目掛け、逆に下段蹴りを放つ。


『甘い! え……?』



 ドカッ!



 オセはそう言うや否やダウンした。

 そりゃ俺のをまともに顔面に喰らえばな。


『そんな…… 下段蹴りの軌道だった……?』


 フェイントだよ。軌道だけ下段蹴り、途中で足をたたんで足を鞭のようにしならせ上段蹴りに変化させた。


「起きろ。そのまま顔面を踏み潰すぞ」

『く……!?』


 俺の顔をしたオセは悔しそうに起き上がる。俺は再び手を差し出す。乗ってくるかな? 



 クルッ ガッ



 オセは俺の手首を掴み動きを封じる。貫手で俺の喉を狙ってきた。


『取った! 死ね!』



 ―――ピクッ



 あ、これ多分フェイントだ。手首に籠った力がそれを物語る。

 オセは途中で貫手を止めて俺の手首を外側に回すように投げを放つ。

 この力に逆らわない。そのまま投げられる……が、着地は足からだ。

 こんなのに引っかかるかよ。今度は逆に投げを放つ。オセがやった投げを同じ技で。



 ドスンッ!

 


『ぐはっ!』


 鈍い音を立て、オセは背中から地面に叩きつけられた。

 落下地点と落ちた体勢が最悪だったね。

 オセの顔が俺の足元にある。


 攻撃の選択肢は一つ。下段踵落としだ。

 足を蹴り上げて…… 思いっきり蹴り降ろす!



 グチュッ!



 全力でオセの顔面を踏み抜いた。嫌な音を立てて顔面が陥没する。自分の顔だからなんか気持ち悪いな。


『…………!?』


 言葉も無くオセが距離を取る。タフだな。魔神じゃなきゃ絶対死んでる。


「だいぶいい顔になったね」


 その顔は血まみれで前歯は全部無くなっていた。

 ふふ、悔しいか? オセは歯の無い口を開けて叫ぶ。

 おぉ、恐い恐い。


『何故だ!? 戦闘能力は私の方が上のはず!?』


 俺が有利な理由か? ふん、そんなの決まっている。

 実際、力ならオセの方が強いだろう。

 だがな、戦いなんてのはステータスで決まるもんじゃない。


「努力の差なんじゃないの? お前がどのくらい長く生きてきたのかなんて知らん。でもその長い人生をお前は楽しむことだけに使ったんだろ? お前のくだらない欲望を満たすだけのためにさ。

 俺は戦力差が絶望的にある相手に勝つために努力してきた。その俺がだらだら生きてきたお前に負けると思う?」

『…………!?』


 オセの顔が歪む。もう驚いているのか悔しがっているのか分からん。

 どのくらいのダメージを与えたのだろうか? ステータスを確認してみよう。



名前:オセ

種族:魔神

年齢:???

レベル:458

HP:35710/47234 MP:14286 

STR:43610 INT:20831

能力:双剣術10 弓術10 体術10 身体強化術10 魔術1 

特殊:マナの剣 マナの矢 千里眼 魔眼 理合い 混成魔法 変化

付与効果:地母神の加護 地母神の祝福



 大分ダメージを与えることが出来たようだ。

 もう少し痛い目を見てもらいたい気もするが…… そろそろ勝負をかけるかな!


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