凶戦士
「ぐ…… がぼ……」
「…………」
フィオナが胸を貫かれていた。
ゴボゴボと口から血を吐いて痙攣している。
俺達の無事を祝ってフィオナを抱きしめ、キスをした。そして急に投げ飛ばされた。
そしたらこれだよ。何が起こった?
美しい顔を歪め血を吐き、白目を剥いたフィオナの顔の後ろに見えるのは……
逆立つ黒髪。
頭から生える山羊の角。
ウロコに覆われた身体。
赤黒い皮膚。
トカゲの尾。
猫のような目。
一度しか会っていないが、その姿を忘れたりなどしない。
俺から全てを奪った憎き相手。
アモンだ。
奴はニヤニヤと笑っている。
『…………』
ブォンッ
ドサッ……
アモンは腕をフィオナごと振りかざす。
フィオナが俺に向かって飛んできた。
受け止め、そのまま地面に寝かせる。
「…………」
物言わぬ愛しい人にキスをする。
フィオナ、ごめんな。少し待っててくれ。
今アモンを……
―――コロシテクルカラ
終わったら、すぐに復活してあげるからな。
俺は怒りすぎると、どうも冷静になってしまう。
ふふ、今からお前を斬り刻んでやる……
全身に力を込める。視界から一つずつ色が失われていく。
視界から完全に色が消え、脳が微振動を始める。
―――コォォッ
さぁ、終わりにしよう。
串刺しにしてやる。
アモンの顔面を突き刺そうとした時……
―――ゴゥンッ
うわっ!? 炎を吐いてきた!
避けられなかった。
高熱が俺の顔を焼く。
―――バスゥッ
鈍い音が聞こえた瞬間、激痛が走る。
足を攻撃された……って、右足が無い。
「くっ!?
回復魔法を発動。
一瞬で足は元通りになる……が、ヤバいな。
このままでは……
その後も思考しつつ、攻撃を繰り返す。
まるで頭と体が別々に動いていているように。
だが実力は僅かだがアモンの方が上だ。
このままだとジリ貧になって俺が負ける。
どうする?
今の俺にやれること……
あれしかないか。
思い出す。
アモンと初めて出会った時、俺は身体強化術をめいいっぱい発動した。
発動すれば死は免れない最終段階だ。
あの時は死を覚悟したが、今の俺の体ならそのリスクに耐えられる可能性がある。
筋肉痛も無いし、寿命が縮むってこともない。
やってみるか。距離を取って身体強化術をかける。最終段階までな。全身に力を込める……
―――ドクン
…………
……………………
―――ズバァッ
握り潰している。
次の瞬間、アモンは宙に魔法陣を描く。
反撃だろうか?
―――カッ!
―――バササッ
―――ドクンッ ドクンッ ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクッ
心臓の鼓動が早くなる。
は、早すぎる……
くそ、あの時と同じだ……
身体強化術の最終段階は諸刃の剣。
発動を終えれば、心臓は爆発し、全身から血を噴き出して絶命する。
俺は強くなった……
耐えられると思ったのに……
俺はここで死ぬのか……?
意識が遠くな……
嫌だ……
死にたくない……
父さん、母さん……
フィオ……
「ライト様……」
アイシャを抱きしめた。
右手のダガーで彼女の胸を貫いた。
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