第46話 尊い犠牲


直ぐに救急車駆け付けて、モンクは病院に運ばれて行った。

紅葉はモンクの事が詳しいので、付き添いで一緒に救急車に乗って病院へ。

モンクは救急車の中で心配停止に。


「 心配停止。 心臓マッサージ! 」


救急隊員の迅速な対処により、どうにか命の危険は乗り越えた。

紅葉は怖くて仕方なかった。

その移動中祈るしかなかった。


病院に着き、直ぐに手術室に運ばれて行った。

紅葉は外で待つことに。

モンクママと紅葉ママも駆け付けて来た。


「 ママさん! ごめんなさい。 私…… 。」


紅葉はモンクママに抱きついた。

全てモンクに頼りこんな状態にしてしまい、紅葉は何て言ったら良いのか分からなかった。


「 紅葉ちゃん。 無事で良かったわ。

何で謝るのよ。 ウチの息子は皆を守ったのよ?

こんな嬉しい事は無いわ。

…… 絶対に無事に帰って来るんだから!

だから泣かないで? 」


モンクママは優しく紅葉を抱き締めていた。

紅葉は優しい温もりを感じた。

紅葉ママも泣きながら抱きついた。


「 無事で良かった…… 。 晴ちゃんは絶対に大丈夫! だって私の可愛い息子同然なんだから。

だから泣くんじゃない! 気を強く持ちなさい! 」


紅葉ママはこんな時だから強く保っていた。

手術中の電気が消え、中から先生が出てきた。

とても長い手術だった。


「 無事成功し、命の危険は去りました。

おめでとうございます。 」


その言葉を聞き皆は一安心する。

だが、先生から残酷な話をされてしまう。


「 ですが、血を流し過ぎて心配停止の時間が長く、脳に損傷を与えてしまいました。

その為、息子さんは…… 昏睡状態になってしまいます。 …… 申し訳御座いません。

全てを出し切りましたが、こんな結果になってしまいました。 」


その時、三人の頭は真っ白になっていた。


「 先生! 息子が目が覚める可能性はどれくらいありますか!? 」


「 …… 残酷な事だと思いますが、ほとんど0に近いです。 なのでこれから、どうすれば良いか一緒に考えましょう。 」


ずっと目を覚まさない可能性が高かった。

このままずっと寝たきりの昏睡状態で面倒を見るのは、お金もかかってしまう。

そして、付きっきりで面倒も見る事に。

それがどれだけ過酷な事か…… 。

紅葉は声が出ず、立ち尽くす事しか出来なかった。


もう一つの選択…… 。 安楽死…… 。

その選択も絶対に考えないといけない。

このまま生きさせるのも、モンクには苦しいだけなのかも知れない。


「 イヤ…… イヤ。 そんな…… 。 」


紅葉はモンクと離れたくなくて、泣きながら震えた声で話した。


「 先生。 ウチの息子は大丈夫!

生命維持でお願い致します。

私達は信じています。 」


モンクママは迷わずに答えた。

その言葉はとても重たく、これから過酷な看病が続く事を意味していた。


「 お金ならなんとか…… 。 仕事は休職致します。 病院のお金は、今までの蓄えと主人が何とかするので安心して下さい。 」


紅葉はホッとしていた。

これからモンクの面倒をママさんは見ることを、決意し先生と話をした。

そして、病院の一室で寝たきりになるのだった。


その光景を遠くから見ていたサムとジャッカル。


「 …… 本当に愚かだ。 何故あんなにもなるまで、力を使った。 人間に何故あんなにも大きな力が出たのか? …… 分からない。 」


ジャッカルは今まで感じていた人間とは大きく違っていて、動揺を隠せずに居た。


「 だから言っただろ? 人間は弱いかも知れないが、誰かの為なら命を賭けても守る生き物だ。

私達には到底理解は出来ないだろうが。

能力に頼りきりで、傲慢になっていたのかもな。

良く分かったな。 じゃ、行くか。 」


二人はその場から姿を消していた。

サムは自分の星へ帰って行ったのだ。


それから何日か過ぎ、モンクは静かに眠っていた。

手足ももうボロボロで、使い物にもならない。

目が覚めても過酷な人生が待っている。

眠っている病室には沢山のお花と、千羽鶴にお菓子やパンが沢山あった。


「 あんたは幸せ者だよ。 晴斗…… 。」


モンクママは優しくモンクを撫でる。

毎日のように色んな人がお見舞いに来る。

海荷や桃。 パン屋の店長と奥さん。

ラーメン屋のみんな。 伴の前までの不良仲間。

先生とクラスのみんな。 伴と白夜。

バスの運転手。 沢山の人が来てくれている。

モンクは皆に囲まれていて、幸せ者だった。


紅葉は学校が終わると、一直線に病院へ通っていた。 いつ目が覚めるか分からない。

でも、モンクママ一人に負担を掛けたくて助けるのに必死だった。


「 ママさん。 こんにちわ。 面倒見るの変わるね。 少し休んで来て? 」


「 いつも悪いわね。 じゃあ、お願いね。 」


これが毎日行われている。

紅葉は全然苦には思わなかった。

絶対に目が覚めると信じているのだから。


「 よっ! 紅葉。 」


海荷がやって来た。

二人は椅子に座り、モンクの寝ている顔を見ていた。


「 本当に良く寝てるなぁ…… 。 お寝坊さんなのが酷くなったなぁ。 いつ起きるのかな? 」


紅葉は必死に笑顔を作り、冗談混じりに海荷に話していた。


「 あんた…… 大丈夫? 毎日来てんだろ?

そんなんじゃ身が持たないよ。 」


「 大丈夫! 勉強もここでしてるし、音楽聴いたりここでご飯も食べてるし。 全然大丈夫! 」


紅葉は笑っていたが、海荷にはそんな紅葉の笑顔は見ていて辛かった。


「 何かあったら言いなよ? 友達なんだから。」


そう言い海荷は帰って行った。

病室を出るとそこには白夜の姿があった。


「 白夜か。 アイツ必死に看病して、…… 見てると本当に辛くなる。 …… 何で寝てンだよ! 」


泣きながら訴えかけていた。

白夜は海荷をゆっくり抱き締めていた。


「 大丈夫だ。 あいつはバカ野郎だけど、紅葉を悲しませる事は絶対にしない。

だから安心しろ。 」


二人はお互いを慰めあっていた。

白夜も信じていた。 モンクがいつか目覚めるのを。


その頃、サムの星では会談が開かれていた。

沢山の偉そうな人が丸く円を描くように座り、その中央の高い所には王座のような椅子がある。

ジャッカルは沢山居る中の一人として、椅子に座っていた。


「 遅くなりました。 若王子のご帰還です。 」


偉そうな執事がそう言うと、大きな門が開きそこにいた宇宙人達は立ち上がり迎える。

その門から入って来たのは、姿は大きく変わり王の風格を持ったサムだった。

そうなのだ。

サムの正体はクロニクル星人の王子だったのだ。


「 皆。 席に座ってくれ。 」


そう言い皆は腰を下ろす。

サムも王座の椅子に腰を下ろす。

その姿は堂々としたまるで別人だった。


「 それでは私は地球に行き、色々調べてきた。

そして地球を今後どうするか決断してきた。」


そうなのです。

サムは何故地球に来ていたのか?

家出では無く、地球とクロニクル星人は決別していたのに来ていた理由。


…… それは地球をどうするか?

ずっとクロニクル星人は怒り、地球を壊したくて生きてきた。

そして、サムが最後の決断を下す為に地球へ探索に来ていたのだった。

とても恐ろしい理由で来ていた。


クロニクル星人達は王子の決断を聞く為、サムをじっと見ていた。

この決断により全てが終わる。

永き地球人との争いも終結する。

サムは立ち上がり、皆に伝える。

その姿は前の見た目とは違い、王の風格により表情は怖かった。


そして、サムの出す決断は!?

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