第44話 一人じゃない
モンクは急カーブに差し掛かる最後の一直線の道で止める為に立ち塞がる。
クラスの皆はモンクの能力を使ってる姿を見て動揺していた。 紅葉も同じく。
「 白夜君…… モンクンに何が起きてるの?
あれは普通じゃないよね? 」
白夜は内緒にしてと頼まれていたが、バレてしまった以上、隠せないと覚悟し全てを話した。
「 あいつは…… 一緒に暮らしてるサムって言う同居人にさっきみたいな能力を教えてもらったらしい。 サムの正体は宇宙人だったんだ。
だから色々な力の使い方を習ったんだ。
さっきの能力もその一つだ。 」
紅葉は動揺して頭の中が真っ白になる。
今のバスの事や宇宙人。 能力…… 。
理解出来る訳がない。
「 何よそれ…… 。 能力って。 宇宙人?
そんな漫画みたいな事…… 。 何でモンクンが最後の一直線の道に立ってるの?? 」
白夜には海荷の電話で全て理解していた。
モンクは自分の全てをぶつけてでも止める覚悟で来ている事を。
「 あいつは…… 弱虫なんかじゃない。
今、俺達を助ける為にビビりながらも下で立ってるんだ。 」
クラスのみんなもその話を聞いて、ビックリして声もでない。
あのいつも弱々しく優しいモンクが、今みんなを助ける為にバスを一人で止めようとしている事。
頼りなくて、女の子にもいじめられるモンクが。
「 出来る訳無いよ!! 無駄死にだよ!
白夜。 モンクンを止めて? もし助からないなら、犠牲を増やす必要なんて無いんだから! 」
紅葉は激しく動揺し、白夜の体を揺らす。
その必死な紅葉の想いをただ黙って受け止めていた。
「 そうかも知れない。 …… でもあいつは絶対辞めない。 俺が同じ立場なら1%でも可能性あるなら、絶対同じ事をする。 あいつはそんな奴だよ。
一番分かってンだろ? 」
紅葉もそれが良く分かっていたから止めたかった。 大切な幼なじみなのだから。
「 モンクに出来る訳ないじゃん…… 。
弱虫モンクだよ? 力だって無いし、跳び箱もまともに飛べないあいつが? 出来る訳……。 」
いじめっこの妃が割って話してきた。
先生が立ち上がり話始める。
「 妃さん。 全然私にも理解がまだ出来ないわ。
でも晴斗君は今まで逃げた事なんてないわよ。
あの子の目はいつも純粋で、嘘偽りなく騙されてばかりで損な立ち回りしてるけど。
…… 私は…… 晴斗君なら絶対に出来るって思うの。 残酷な事言ってるのは分かる。
ぐすっ。 でも晴斗君を信じたいの! 」
先生は泣きながら話した。
もしかしたらモンクに死ねと言ってるのと同じかも知れない。 残酷で自分勝手かも知れない。
でも、もしかしたらモンクなら…… 。
その希望が先生の頭から離れなかった。
「 先生。 間違ってねぇよ。 あいつは俺の一番の親友なんだぜ? 止めるに決まってんだろ?
あいつは俺を助けてくれたんだ。
今回だって簡単に助けてくれるよ。
だから泣くなって! 」
伴は運転を手伝いながら必死にフォローしてくれた。 モンクなら出来るって信じていたから。
( モンク…… そうだよな? 絶対出来るよな?
お前なら絶対に。 また笑えるよな? )
伴は心中では怖くて堪らなかった。
モンクが大好きだから死んで欲しくないからだ。
プルルルーっ!! 白夜のスマホに電話がかかってきた。 モンクからだ。
直ぐに白夜は電話に出る。
「 おいっ! お前何考えてんだよ!?
死ぬ気か? 」
モンクはハンズフリーにして、スマホ地面に置いてイヤホンだけで会話し始めた。
「 んな訳ないだろ? 僕はみんなを助けるよ。
絶対に死なせない。 安心しててくれよ。
みんなには少しだけ怖いかもだけど、直ぐに止めるから安心してって伝えて。 」
相変わらず人の心配ばかりしている。
「 …… 本当に、バカ野郎だな。 相変わらず。 」
「 伴君と運転手さんには最後まで気を抜かずに、ここまでたどり着いてって伝えて。
頼りにしてるって。 」
モンクは伴を信じていた。
離れた所からヘリコプターで実況していた。
当然モンクの姿を撮っていた。
「 一体あの青年は何なんでしょうか!?
空を滑るように下りて、道路真ん中に立っています。 」
その映像は日本中に流されていた。
「 晴坊…… おいっ! お前こっち来てみろ。
映ってるあの青年って。 晴坊だよな? 」
パン屋の店長がモンクに気付く。
奥さんも遠くからの映像で良く見えないが、パン屋夫婦が見間違える訳が無かった。
「 晴ちゃんだよ…… あのバスって晴ちゃんの乗っているバスだったの? 何でバスの通る所に立ってるのよ? あなた!! 」
二人は動揺してパニックになっていた。
店長は奥さんを抱き締め静かに見守る。
「 鈴木君!? あれ…… 鈴木君じゃないか? 」
ラーメン屋の店長もテレビを見て直ぐに気付く。
ラーメン屋は常連さんも含め、テレビに釘付けになる。
「 晴斗? 晴斗よね…… 。」
家ではお母さんもモンクに気付いていた。
隣から紅葉ママも駆け付けて、二人は手を握りテレビを見続けた。
「 大丈夫! 大丈夫よ。 あの子にはサムちゃんから貰った力があるんだから。 絶対大丈夫!
あいつは男の子なんだから。 」
紅葉ママを安心させる為に必死に慰める。
自分も怖くて堪らないのに。
「 ウチの紅葉が…… 。 晴君が!?
どうなってるの!? 」
二人もただ時が過ぎるのを待つしか無かった。
その頃、伴のかつての仲間だった不良の翔もテレビを見ていた。
「 あれは…… 伴のダチじゃねぇか? 」
色んな今までモンクとの付き合いがあった人達が、テレビに釘付けになっていた。
警察もバスは止められないが、近くを走る車を全て止めていた。 だからバスの後ろを走る車は一台も無かった。 反対車線も同じく止めていた。
「 あの子は一体なんなんだ? 」
警察達も一人立ち尽くすモンクに違和感しかなかった。
バスがもうすぐモンクの前に来る。
モンクは白夜に最後に話をする。
「 …… 白夜。 みんなに伝えてくれないかい?
全て終わったら話して欲しい。
頼めるかい? 」
「 …… 分かった。 」
白夜は直ぐにスマホの音がみんなに聞こえるように、スピーカーにして電話を続けた。
「 キムナリ君には絶対夢を諦めないでって。
君ならお父さんのようになれるって。 」
キムナリ君はその声を聞き涙が沢山流してしまう。
「 妃さんには、もういじめたりしないで勉強頑張ってって。 本当は優しいの僕は知ってるって。 」
妃は涙を堪えていた。
「 委員長にはおじさんと仲良くって。
あんまりワガママばっかりダメだよって。
おじさんも絶対お父さんに負けないくらい、委員長を思ってくれるって。 」
委員長は眼鏡を外しハンカチで涙を拭っていた。
「 先生には、もっとしっかりしてって。
僕は優しい先生が大好きだよって。 」
先生は我慢出来ずに号泣してしまう。
「 伴君には、もうお母さんには迷惑かけちゃダメだよって。 乱暴もんだけど僕は大好きだよって。」
伴は必死に運転を手伝いながらモンクの話を聞く。
「 白夜とは色々あったけど友達だよな?
後はクラスのみんなにも大好きだって。
伝えてくれる? 」
白夜も泣き出しそうになりながら我慢し、モンクにバレないようにしていた。
「 おい! 紅葉には…… 紅葉にはなんて伝えれば良いんだ。 」
モンクは一番何を言って良いのか分からなかった。 少し考えて…… 。
「 紅葉ちゃんには…… 幸せになってって。 」
紅葉が白夜から無理矢理スマホを奪い取る。
「 モンクン! 勝手な事ばっかり言ってんな! 」
紅葉はモンクに怒っていた。
「 私は…… モンクンが居ないと幸せに何かなれないから。 …… だから絶対に生きて。
絶対に止められるから。 」
モンクは聞かれていて気まずくなる。
どう話せば良いか分からなかったから、白夜に全てを任せたのに。
モンクはその時アドレナリンが上がり、今だから恥ずかしいけど勇気を振り絞り告白しようと決意した。
「 紅葉ちゃん…… 。 僕。 僕ね。
前からずっと…… 。 えっ…… と。 僕と付き 」
「 私と結婚して下さい! モンクが大好きなの。
高校卒業して立派に暮らせるようになったら、結婚して欲しいの。 」
まさかの紅葉からの逆告白!
モンクは相変わらずだらしなく、先に言われてしまった。 ただの告白では無く、プロポーズ。
モンクは嬉しくて涙が止まらなくなっていた。
ずっと片思いしていたから嬉しかった。
「 うぐ…… 。 グスン! 本当にいつも先に言っちゃうんだから。 僕もずっとずっと、大好きだったよ。 うん! お互い安定したら結婚しよ。
…… 絶対に生きて帰る。 」
紅葉もOKが出て嬉しくて涙流しながら喜ぶ。
周りからは拍手喝采! 歓声が上がる。
「 おめでとう! 」
「 ヒューっ!! 熱いなぁ! 」
「 紅葉おめでとう♪ 」
モンクにもみんなの声が聞こえてくる。
でも、そろそろ時間だった。
バスが最後の一直線に差し掛かる。
「 じゃあ、そろそろだね。 みんなにはシートベルト締めてしっかり掴まっててって伝えて? 」
紅葉達は直ぐに席に着き、しっかり衝撃に備える。
「 さぁ。 上げて行こうか!! 」
モンクはもう恐怖何かとっくに無かった。
だって、もう一人ではないのだから。
こんなにも沢山の仲間に信じて貰えている。
最高の幸せ者になれていた。
モンクは最後の戦いが始まる…… 。
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