第43話 モンクとサム



モンクは急いで山道へ向かう。

エアグライドと言う能力を使い、空をスノーボードしているように移動する。

今は誰かに見られても仕方ない。 派手に空を駆け抜ける。


( たまに練習してたから自由に動けるぞ。

このままバスを見つけて止めてみせる。 )


モンクは能力を最大限に使いバスの居る山道へ向かう。


海荷はタクシーに乗り下山先に向かっていた。

怖くて怖くて仕方が無かった。


( みんなを、モンクを助けて下さい。

お願いします………… 。 )


海荷は願うしか出来なかった。

ずっとモンク達と撮った記念写真を手に下山先へ向かうのだった。


バスはブレーキオイルが無くなり、無理矢理壁に押し付けながら曲がったりしていた。

バスの中は悲鳴しか聞こえない。

伴が運転手を手伝っているお陰で、どうにか曲がっている感じだ。


「 さすがに限界か…… 。」


白夜は諦めかけていた。


「 何いってんの?? モンクンが居たら絶対諦めてないよ? 最後まで私達も頑張ろうよ? 」


紅葉は白夜を慰めていた。

本当は自分も怖いのに。


「 悪い。 情けなかったな。 ん? 電話。

海荷からだ。 …… もしもし。 どうした?

今は話してる余裕なんてねぇーんだよ! 」


海荷から白夜に電話をかけてきた。


「 モンクが! …… モンクが。 」


必死に涙ながら話そうとする海荷。

白夜はその海荷の態度で何か嫌な予感がする。


「 モンクが? どうしたんだよ!? 」


「 モンクが…… バスを止めるって飛んでった。

だから、だから。 」


海荷は動揺を隠せない。

白夜はその内容を聞き、モンクの事だから絶対に無理をする事が分かった。


「 絶対に無理だ。 あいつはここまで来るのに沢山能力使って来んだろ? しかもこんな人数乗せたバスをアイツ一人で止める? 出来る訳ねぇよ。 」


白夜はモンクの能力の限界を少しだけ聞いていた。 無理をすると体や脳に負担をかける事。


「 ひっぐ。 で、でもモンクは絶対止めに来る。

だから、だから。 」


海荷は上手く話せない。

みんなを助けて欲しいし、モンクにも死んで欲しくない。 海荷は分からなくなっていた。


「 分かった。 ありがとな。 生きてたらまた会おうな。 じゃあな。 」


白夜は電話を切った。

白夜は一人で考えていた。

どうすれば良いのかを…… 。


モンクはエアグライドで空を音速の如く移動する。 山道を走るバスを見つける。


「 あれか! 」


直ぐにモンクはバスの上に乗り中に居るみんなに声をかける。


「 おーいっ! みんな大丈夫かい? 」


中から返答が直ぐに来ない。

中から女子達のざわつく声が聞こえる。


「 モンク君? モンク君なの? 」


桃の乗って居るバスだった。

モンクのクラスが乗っているバスはもっと先に下りているようだ。

周りの生徒達はモンクに驚いてばかりいた。

それはそうだ。


「 はぁはぁ。 違ったか。 クソ…… 。」


「 モンク君大丈夫!? どうしたの? 」


モンクは桃に訳を話した。

桃は驚愕する。 当然の反応だった。


「 モンク君! 行くつもりなの?

絶対無理だよ! 大型バスだよ? 不良なんかとは訳が違うんだから。 絶対にダメ! 」


モンクは少し微笑む。

屋根に居るからお互いの顔は見えない。


「 桃ちゃんも心配してくれるんだね。

ありがとう。 僕は行くよ? あそこには僕の大切な物が沢山詰まってるんだ。 見捨てるなんて出来ないよ。 」


桃は涙が出てしまう。 モンクは決心した事は決して曲げない事を知っていたからだ。


「 うっ。 …… じゃあ約束して?

絶対生きて帰って来て。 誰かの為にじゃなく自分の事も大切にして。 お願い…… 。 」


モンクはまた微笑んでしまう。


「 僕の大切な人に同じ事言われたよ。

本当に嬉しいな。 ありがとう。 絶対帰って来るよ。 約束する。 行って来る! 」


バスの上からエアグライドでまっ逆さまに山道を下って行く。

周りの生徒達は、空を駆ける姿を見て驚きを隠せない。 桃は泣きながらモンクを見つめていた。


「 桃。 今のって…… 。 」


桃は無理矢理笑いながら話す。


「 私の一番大好きな人。 」


桃はモンクの無事を祈り続けていた。


モンクは疲れてヨタヨタして途中で不時着して少しだけ休む。


「 はぁはぁはぁ…… ヤバい。 体が限界だ。 」


目の前にサムが現れた。


「 やぁ。 相棒。 相変わらず無理してるね。 」


「 サム? はぁはぁ。 どうしてここに? 」


突然現れたサムに驚く。

サムは悲しげな顔でこっちを見つめてくる。


「 本当にすまない…… 。 僕のせいでバスがあんな事に…… 。 ごめん。 」


モンクは安心した。 サムがジャッカルと同じ考えでは無いことに。


「 何言ってんだよ? お前には関係ないだろ?

気にすんなよ。 」


「 ジャッカルは人間への敵意は計り知れない。

アイツが起こしたと言う事は、晴斗君には止められない可能性は100%に近い…… 。 それでも行くのかい? 」


「 おいおい! 何日僕と一緒に居たんだよ。

僕は諦めだけは悪いんだ。 死に物狂いで食らいつくさ。 無理だと分かっていてもね。 」


サムは不安そうに見つめる。

止めても無駄なのは分かっていたから。


「 本当は僕が止めたい…… 。 でもどうしても出来ないんだ。 それがこの地球に来た条件の一つだから。 人間に能力を使って手助けは禁止されてるから。 キミに能力を教えたのも本当は規則を破ってるんだ。 だからこれ以上は無理なんだよ。

…… ごめん。 」


モンクは一瞬驚いたが直ぐに笑う。


「 あははっ! 謝る事が何処にある。

キミは僕に能力を授けてくれたじゃないか。

だから抗えるんだよ。 感謝仕切れないよ。

能力だけじゃない。 僕はずっとずっと、一人で寂しかったんだ。 サムと一緒に暮らして友達が出来て、僕の日常は全然違くなった。 本当にありがとう。

僕の家に来てくれて。 」


サムは涙を流しながら照れ隠しをして、背中を向ける。


「 僕は何もしてないよ。 キミの力さ。

ただ少し早まっただけだよ。 自信を持って!

僕は…… キミに会えて本当に良かった。

あの日、キミが見つけてくれなかったらこんなに最高な日々にはならなかった。 ありがとう。

今日で晴斗君と暮らし始めて365日。

最高の365日だったよ。 ひっく! グスッ!

本当にありがとう…… 。」


サムの目には大粒の涙が流れていた。

モンクもつられてもらい泣きしてしまう。


「 僕にとっても最高な365日だったよ。

…… ありがとう。 サミュエル。 いつでも帰っておいでよ。 あそこの家は君の家でもあるんだから。」


サムはくしゃくしゃな顔で笑う。


「 そうだね! また帰って来るよ。

だから生きてくれよ? 僕はキミが生きるのに賭ける。 人間の無限なる可能性を見せてくれ! 」


サムと話して足の震えは消え、迷いが無くなっていた。


「 おうよ! 運命なんて変えてやるよ。

サム。 ほいっ! 」


サムに袋を投げた。 中には沢山のカレーパンが入っていた。


「 絶対に忘れないでおくれよ。 」


「 最後までありがとう。 僕はキミの勇姿を見届けたら帰るよ。 頑張れ! 」


そして熱い握手をして、モンクはまたエアグライドを使い下山していく。


「 感謝するのはこっちの方なのに…… 。

能力が勝つか。 人間が勝つか。 」


高い所から見届けているサム。


その頃、バスでは白夜が地図を広げえ経路を見ていた。


「 駄目だ。 最後の最後に急カーブがある。

絶対曲がり切れない…… 。」


紅葉達は言葉を失う。

キムナリ君は外を見ていると。


「 ねぇ。 あれなんだろ? 」


クラスのみんなは外を見る。

高い山からスノーボードをするかの如く、華麗に滑り凄いスピードでバスを追い抜いて行く。

そう。 モンクだった。


「 モンク!? 何でアイツ来やがった。 」


伴はモンクに気付き驚く。

クラスのみんなも驚いえしまう。


「 ねぇ…… 。 あれモンクンだよね?

モンクンだよね。 」


紅葉はモンクの姿見て安心してしまう。

何故飛んでいるのかは分からなかったが。

モンクはかなり先まで行き一直線の所で待っていた。 そこで止められなければ、急カーブで崖から落ちてしまう。


「 さぁ。 バスが来るまで10分。 よっしゃーーっ!! 」


モンクはバスが来るのを待つのみだった。

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