第35話 サム


クリスマスが終わり、紅葉と白夜は別れてそれぞれ別々に生きてきた。

新しい年を迎えて1月になった。

モンクは立派にバイトも出来るようになり、自分の意見も少しは言えるようになった。

桃は相変わらず告白は出来ずにいたが、モンクとの関係を続けていた。

海荷もたまにご飯を作りに来てくれたりする。

今もモンクの事が好きでいた。


紅葉は別れてから寂しくしていたが、次へ進むには時間が掛かっていた。

傷付いた心を癒すのは時間が掛かるのだ。


サムはいつも通り。 毎日をエンジョイしていた。

だが少し変化もあった。

一人で高い所から町を眺める事が多くなった。

モンクは能力をほとんどマスターし、サムが教えなくても大丈夫なくらいの実力になった。

モンクも「 能力 」のハイジャンプをして、サムの良くいる高いビルにジャンプする。


「 よっと! 相変わらず高いなぁ。

最近見渡す事が多くなったね。 どうしたの? 」


サムは元気が無かった。

ゆっくり口を開いて説明してくれる。


「 晴斗君。 実はね…… 。 僕の星から最近連絡が来るんだ。 そろそろ帰って来いって。」


「 そうかぁ。 色々大変なんだね。」


モンクはサムの素性や過去をほとんど聞いて来なかった。 聞かれたくなさそうだったから。


「 僕はこの地球が大好きだ。 だからもう少し居たいんだ。 もう少しだけ居ても良いかい? 」


「 聞く必要はない。 だってもう家族だろ? 」


熱い握手をして友情を深めた。

高い所から食べるカレーパンは格別に旨かった。


サムはモンクが学校に行ってる間に、家事や趣味を楽しんでいた。

すると、庭に見知らぬゴツゴツとした大男が現れた。 サムはタメ息をついて中へ入れる。


「 また来たのかい? ジャッカル。

私はまだ帰らない。 まだ分からないのか? 」


「 そうですが、さすがにそろそろ私達の星に帰って来て貰わないと……。」


ジャッカルは老けたおじさんなのに、サムに対しては敬語で目上の人に話すような口調。


「 ジャッカル。 ここの星に居るときは絶対に、私の事はサムと呼べ。 良いな? 」


「 …… 分かりました。 サム。

この星の何が良いんですか? 調査はとっくに済んでるのでは無いですか? 」


深く考えこむ。 サムにも帰りたくない理由は沢山あった。 モンクが大好きだったから。


「 ここの人間とも仲良くなれた。 調査はほとんど終了している。 だからもう少し待っていろ。」


「 ……。 了解しました。 」


そう言い残し直ぐに消えていた。

離れた所に瞬間移動し、高い所から町を見渡す。


「 こんな星にいつまで時間をかけるつもりだ。

あそこに住んでる人間のせいなのか?

我々の能力の使い方まで教えるとは。

邪魔になるなら……。 」


なにやら深い事情がありそうだ。

そのジャッカルと呼ばれる男は地球を探索するのだった。


1月になり今は冬休み。

家には来客が。 チャイムを鳴らすとサムが直ぐに出る。


「 はぁーい、 どちら様?? 」


「 えっ!? あなた一体誰なの? 」


サムを見てとてもビックリしている。

もしかしたら……。


「 あれ? もしかして晴斗君のお母さん? 」


「 そうよ。 もしかしてサム君?? 」


モンクのお母さんが帰って来たのだ。

モンクのお母さんは大学の先生をしている。

とても頭が良くて、離れた頭の良い大学で勉強を教えている。

モンクには迷惑を掛けて申し訳ないと思う。

でも、夢の大学の先生になって働く為にはこうするしかなかった。

お父さんは海外でバリバリ仕事するエンジニア。


「 あなたがサム君ね。 いつも電話で聞いてたわよ。 晴斗をいつもありがとう。

いつも元気無かったあの子が、あんなにも元気になるとは思わなかったわ。 本当にありがとう。」


「 いいえお母さん。 僕は何もしておりませんよ。 ただ晴斗君が頑張っただけですよ。」


二人は直ぐに意気投合し笑って話、仲良くなっていた。 相変わらずのコミュニケーション能力。


「 あれ? あなたの目は綺麗ね。 こんなに

綺麗な青見た事ないわね。」


「 あはは。 良く言われます。」


モンクママは物知り。 気になると調べずには居られない。 サムの瞳は綺麗過ぎた。

何処かで見た事があったのだ。

だから部屋に行き色々な本を読み調べる。


モンクが帰って来た。

サムが直ぐにモンクママが帰って来た事を伝える。


「 母さんが帰って来てる? 息なりだなぁ。」


直ぐにモンクママが部屋から出て来る。


「 ただいまぁ。 晴君。 元気にしてた? 」


夜はママの手料理でパーティーだ。

沢山の豪勢な料理。 サムも大喜び。


「 母さんは当分居られるの? 」


「 うん。 当分は家事とか任せてね。

サムちゃんもゆっくりしててね。」


サムも安心する。 やっぱり勝手に住んでいて、もし拒否されたらどうしようかと思っていた。


「 ママさん。 ゆっくりさせて頂きますよ。」


美味しい料理に大満足のサム。

みんなで楽しい夕食になった。


モンクママは夜に一人で調べもの。

サムの瞳をまだ調べていた。


「 ん? これだ。 もしかしたらサムって……。」


何か見つけた様子。 その資料にはかつて宇宙人に会った人の研究内容が記されていた。

とても綺麗な海色の瞳。 色々な能力を使える。

細かく記されている。

その資料を書いた人はみんなに嘘つき呼ばわりされたのだ。

嘘にしてはあまりにも詳しく記されていて、その内容も凄く興味深くモンクママも一度見て気になっていた。


「 何々……。 その学者によると対話を求めていたが、人間側が研究に利用しようとして交渉決裂して帰ってしまった。 私のとった行動は今でも恥ずべき行動だった。 何なのこの話は……。」


モンクママは読む内に魅了され朝になっていた。

もしもこの資料に書いてある宇宙人なら、何故何十年も経った今現れたのか?

興味もあったが、それと同時に恐怖もあった。


「 まぁ、どうせ作り話よ。 本当にね。」


モンクママは忘れる事にした。

現実に宇宙人何て居るわけも無かった。

だから信じる訳も無かったのだ。


「 ママさん。 おはようです。」


「 サム君。 おはよう。 直ぐにご飯にしようね。」


サムの優しいその笑顔見て、モンクママは少しほっとする。

基本モンクが学校へ行ってる間は、モンクと二人きりになる。 楽しく昼メロを二人で見たり、ご飯食べたりして楽しむ。

一緒に二人でお買い物へ。

夕飯の為に食材を買い込む二人。


「 サム君が居ると荷物多くても、二人なら沢山買えて助かるわ。」


「 いえいえ。 居候いそうろうの身分なので、当然お手伝いしますよ。 お買い物は大好きです。」


二人で仲良くお買い物して帰ろうとする。

すると、近くで工事していたビルの上から鉄骨が落ちそうになっていた。


「 あれ危なそうね。 怖いわぁ……。」


心配そうに見ていると、案の定工事現場の人のミスにより、鉄骨が地上目掛けて落ちて行く。

下には幼稚園児の女の子と、そのお母さんが手を繋いで歩いていた。


「 危ない!! 」


工事の作業員の人が大きな声で叫ぶ。

下に居る親子は気付かなかった。


「 嫌ぁーー!! 危ないっ! 」


モンクママは大きな声で叫び目をふさいでしまう。 当然だ。 助けられなくて残酷な光景が待って居るのだから。


「 晶子ちゃん。」

「 ママぁ!! 」


下に居た親子は叫び声でやっと分かったが反応出来る訳も無く、二人で抱きしめ合いながらうずくまる。 誰もが目をふさいでしまう。


「 パワーハンド。」


サムはそう呟き、親子の所へ既に移動していた。

鉄骨は親子目掛けて落ちて来たが、サムは片手で軽く支えてしまう。 ドゴーーンッ!!

凄い地響きと音が周りに鳴り響く。

土煙が起こり周りの人は何が起こったか分からない。 サムは鉄骨をヒョイっと投げてまた凄い音が鳴る。 ズドォーーンッ!!


「 晶子ちゃん? 大丈夫?? 」

「 ママぁーー! 」


二人は無事に助かり泣きながら生きてる事に感謝していた。 土煙が無くなると近くで見ていた大人達が、直ぐに駆けつける。


「 大丈夫ですかぁ!? 」


無事に助かり一安心。 周りから拍手や動画や写真を撮る人まで現れる。

モンクママさんは見てしまった。

土煙で見えにくくなっていたが、モンクママの角度からは良く見えていた。

サムが鉄骨を軽々と持ち上げる姿を。

直ぐに汚れた姿で他の人にバレずにこっそり戻って来る。 だけどモンクママの驚いた表情を見て、サムは見られていた事が分かってしまう。


「 ママさん。 もしかして見てました? 」


「 うん。 あなた…… やっぱり宇宙人なのね。」


疑惑が確信に変わる瞬間だった。


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