第33話 大切な存在


紅葉はストーカーから逃げて何処かの路地裏に隠れていた。

直ぐに周りの人に助けを求めれば良かったが、初対面の人にも言えず交番を探して走っていたら路地裏に来てしまったのだ。


「 助けて。 助けて。 白夜君。。」


心の中で何度も唱えた。

でも白夜はスマホを家に置いてるので呼べない。

どうすれば……。 普通なら110番。

電池がもうほとんど無くて、かけられたとしても直ぐに切れてしまう。

直ぐに切れたら警察は果たして助けに来れるだろうか? イタズラだと思うかもしれない……。

頭の中に浮かぶのはいつも頼りにはならないけど

何故かモンクの事しか浮かばなかった。


「 モンクン助けて! 」


切れる前に何となくの場所とピンチな事を

伝えられた。


「 モンクン……。 モンクン。」


いつも紅葉の後ろをついてくるばかりの泣き虫モンク。 紅葉が居ないと何も出来ない。

そう思うのだがどうしたものなのか、モンクに頼ってしまった。


その頃モンクは遅い足で走り直ぐに駅前に向かっていた。


( 筋トレとバイトで鍛えてたけどまだまだ体力は増えてないなぁ。 はぁはぁ。 待っててくれ。)


モンクは何故能力を使わないのか?

実は家で能力の特訓のし過ぎで、運が悪く能力を一時的に使えなくなっていた。

駅前に着くと周りには沢山の人だかり。

全然見つからない。 ん? あれは?


「 白夜! 紅葉ちゃんは? 」


白夜も必死に探していた。

珍しく息を切らして汗だくになっていた。


「 はぁはぁはぁ。 何の用だよ!

おめぇには関係ねぇんだよ。 俺が見つけるから引っ込んでろよ。」


「 そうだけど……。 警察には連絡した? 」


「 あっ……。」


焦っていた白夜は警察に電話をしてなかった。

直ぐに連絡をして警察達も探してくれることに。


「 何処に行ったんだよ。 紅葉……。」


焦っていつものようには頭が回らない。

モンクはゲームセンターに行き、紅葉の気持ちになって何処に逃げたか考える。


「 ん……。 こっちだ! 白夜来い! 」


「 何で分かるんだよ。 モンク! 」


能力は使ってはいない。 でも紅葉の事をずっと見ていたモンクには何となく、相手から逃げるのに必死でいつの間にか人が居ない所へ行って居るのでは?

そう思い路地裏に二人で走って行った。


その頃紅葉は怯えながら隠れていると、そこにストーカーが近寄って来ていた。


「 何処行きやがった……。 あの野郎のせいで全てが終わったんだ。 落とし前つけてやるよ。」


仕事を失い、紅葉に復讐をしに来ていたのだ。

紅葉の命が危なかった。


( 助けて。 助けて…… 。 モンクン!! )


心の中では白夜ではなく、モンクの事ばかり考えていた。 ずっといつも一緒に生きてきた。

頼りにはならないけどいつも一緒に居ると楽しかった。 モンクには私が居ないとダメダメなんだから。

と何度も考えていた。


「 おいっ! 隠れたつもりか? 見つけたぞ。」


遂に見つかってしまう。

絶対絶命のピンチになってしまう。


「 ごめんなさい。 許してください。」


「 舐めてんのか!? 許す訳ねぇだろ!

絶対にぶっ殺してやる。」


胸ぐらを捕まれ泣きわめく紅葉にはお構いなしに、危害を加えようとする。


路地裏を二人は走っていると、モンクが紅葉とストーカーを発見する。


「 見つけたぞ。 白夜。 スマホ貸すから紅葉ちゃんと安全な場所に避難して、警察に場所を伝えてくれ。 僕は時間稼ぎするから。」


「 お…… おう。 任せろ。」


白夜はモンクがいつもよりも行動力があり、モンクに付いて行ったら紅葉も発見出来た。

更にストーカーを足止めして、紅葉と白夜を逃がす何て言っている。

白夜は仕方い状況で言うこと聞くしかなかったが、凄いイライラしていた。


( またコイツは俺よりも先に行動しやがって。

いつも、いつも……。 )


何か過去を思い出していた。

モンクは胸ぐらを掴むストーカーに飛びかかる。


「 やめろぉおーー! 」


凄い勢いで飛びかかり、二人は路地裏のゴミの山にぶつかる。

直ぐに白夜が紅葉の手を取り、ここから離れる。


「 後はアイツに任せろ。 早く逃げるぞ。」


「 白夜君!? で、でもモンクンが。」


白夜はモンクを気にする紅葉を力いっぱい引っ張る。 折角のモンクの頑張りを無駄にしない為に。


「 痛えなぁ。 何だ? おめぇは? 」


「 紅葉ちゃんの幼なじみだ。 貴方が誰かは知らないが、紅葉ちゃんを傷付ける奴は許さなッ、

うげっ! ごほっ! ごほっ! 」


邪魔なモンクのお腹にパンチしてきた。

最近殴られるのが日課になりつつある。


「 邪魔だって言ってんだろ? 離せよ! 」


モンクは必死にしがみついて離れない。

顔にパンチをもらおうが、肘で顔に攻撃されようが耐えていた。


「 どんな理由かは分からない……。 でも僕にとっては大切な友達なんだ。 うぐっ! だから、どんな事をしてでも止めてみせる。」


大人のパンチを沢山浴びて、ヘロヘロになりながらも全く離れない。


「 はぁはぁ。 仕方ねぇな。 お前には関係ないが、死んでもらおうか? 」


ポケットからナイフを取り出してきた。

モンクは倒れながらも足にしがみついていた。

その時、モンクは昔の事を思い出していた。

小さな頃。 幼稚園児のときに紅葉の家の隣に引っ越して来た。

隣の家に挨拶に家族で行った時、モンクは恥ずかしがりやでもじもじしてた。

すると、小さくて可愛い大きな瞳の女の子が近付いて来た。


「 わたしは紅葉。 宜しくね。 お名前は? 」


「 ぼく、晴斗 ……。 宜しく。」


モンクは初めて会ったときに、もう一目惚れしていたのだ。

こんな可愛い女の子のお隣さんになれて、凄い幸せだった。


( あの時から好きだったんだ。

だから、何があろうと絶対守るんだ ……。)


モンクはしがみつきながら気を失っていた。


「 可哀想だけど死んじまいな!! 」


「 俺の親友に何してるんだ? 」


そこに現れたのは怒りん坊星人の伴だった。


「 何だお前は? 」


「 ば…… 伴く、ん……。 来てくれたんだね。」


モンクは紅葉の所に向かう前に、もしもの時の為に伴に助けてくれ。 とメールをして位置情報を送って居たのだ。


「 色々そいつには迷惑かけたんだよ。

だから今度は俺が助けるんだ。」


「 うるせぇ! 死ねぇ!! 」


ナイフを持って伴に走って来る。

簡単にナイフを避けて、足を上に蹴りあげてナイフを弾き落とした。 これがケンカばかりしていたガキ大将の強さ。


「 悪いなおじさん。 眠ってな。」


首を軽くチョップするとストーカーは気絶してしまう。 そこら辺の鍛えてない大人では、伴には到底敵わないのであった。


「 モンク。 大丈夫か?? またぼろぼろだな。」


「 ありがとう。 警察が直ぐに来るから僕たちはここから離れよう。 面倒になるから。」


伴におんぶしてもらい警察に任せて帰るのだった。


その頃、紅葉は警察に事情を説明したり色々大変だった。 本当に災難な1日だった。


「 モンクン…… 。 大丈夫かな?

絶対大変な目にあってるよ。 白夜君は何でモンクンに任せたの? モンクンはビビりで弱いんだよ?

なのに何で任せたりしたのよ。」


いつもの温厚な紅葉と違い、モンクの為に怒っていた。 一人にした事で心配していた。


「 紅葉。 お前何か勘違いしてねぇか?

あいつはお前が思っている程、もう弱くねぇと思うぞ? あいつは成長したんだぞ。」


「 えっ?? 」


白夜は知っていた。 モンクがバイトをしたり、クラスでも頑張って喋るようになったり、イジメられてる友達を身を呈して守ったり。

もう前までのバカにしてたモンクでは無かった。

力は弱くても、強い心と誰にも負けない優しさを持ち合わせていた。

紅葉は誰よりもモンクを見ていたと思っていたが、いつの間にか大きくなってたくましくなった事を感じるのだった。


ぼろぼろになったモンクは疲れて眠りについていた。 伴は相変わらずモンクの面倒を見る。


「 何だか良くわかんねぇけど、モンクはまた男らしくなったのかな? どうでも良いけど笑。」


伴はモンクの家にゆっくり歩いて行くのだった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る