第32話 成長


失恋して学校生活やバイトでも元気がないモンク。 ずっと片想いだったからとてもショックが大きかった。


( はぁ…… 白夜の何が良いんだよ。

顔も良いし頭も良いし。 良いところしかないな。)


授業中も上の空。 遠くばかり眺める。


( コイツ。 さっきからため息ばっかり。

しょうもない奴なんだから。)


海荷は隣の席からずっと気にしていた。

紅葉が白夜と話している所を見て、何となく悟ってしまう。 周りの生徒達も二人が付き合ったのを段々分かり始めていた。


「 白夜君。 今日一緒にご飯食べよう? 」


片想いが実った事により、紅葉はウキウキでとても幸せそう。


「 うん? あぁ。 そうするか。」


白夜も相変わらず表情では分からない。

何故付き合ってるのか? 本当に好きなのか?

本人にしか分からない。


( なんだよ。 あの態度は…… 。

僕ならもっと幸せにするのに。)


単なる妬みである。


モンクは昼休みに教室から出て行く。

二人を見ていたくないだけだ。

一人で久しぶりの体育館の前でお弁当を食べる事にしていた。 キムナリ君と食べたくても気分が乗らなくて、一人で食べたかったのだ。

一人で考える事が多かったから。


「 何かどうでも良くなっちゃったなぁ。

目標が無くなっちゃったなぁ……。」


1人でいじけるのだった。


「 おい! ボンクラ! しょうもない……。

いつまでいじけてんだよ。 男だろ?? 」


海荷が気になり来てくれたのだ。

ほっとけなかったのだった。


「 あぁ。 もう知ってたのかぁ。

失恋って初めてで喪失感が凄くて。

何で好きだったの分かったの? 」


モンクをずっと見ていたから。

でも素直に言える訳もない。


「 紅葉以外知らない奴なんて居ないから!

あんたって隠すの下手だからね。」


それは本当の話だ。 クラスのみんなが何となく

分かっていた。 モンクの紅葉との話す表情はとてもウキウキしているからだ。


「 そうかぁ。 単純だから隠せないんだよね。

まぁもう大丈夫だよ。 ありがとう。」


モンクは元気が無かった。

治るのは時間が掛かりそうだ。


「 あんたがウチが失恋した時助けてくれたろ?

だから少しは気にしてやってんだよ。

ほら! これでも食えよ。 お腹いっぱいだから

やるから。」


コンビニの人気のスイーツをくれた。

海荷なりの励ましだった。

海荷は教室に戻って行った。


「 ありがとう……。 行っちゃった。

本当に不器用なんだから。」


モンクも海荷の気持ちに励まされた。

少しは元気になれた気がした。




白夜。 透かしていて何を考えて居るかは分からない。 友達も全然居ない。

小学校の時からモンクと一緒で高校まで一緒。

女の子にはモテモテ。 イケメンで気が回る。

惚れない女の子何か居なかった。

紅葉と一緒に途中まで帰り、別れて1人で家に向かう。

鞄に入ってるクマのキーホルダーを見つめる。


( 紅葉からのお揃いのキーホルダー。

こんなの付けられるかよ。 恥ずかしいし。)


鞄に付けて帰るのだった。

やっぱり白夜の考えてる事は分からない。


それから月日が流れた。

モンクは元気になり、バイトや勉強を頑張っていた。 周りのバイトの仲間からも、凄いと思われるくらいに仕事が出来るようになっていた。

桃とは二人で休みに遊びに行ったり、青春を謳歌していたのだ。

あっという間に冬になり、サムが来てから半年が経過していた。

まだまだ弱い所が多かったが、前よりもたくましくなり大きくなっていた。


「 鈴木君も大きくなったなぁ。 俺の思ってたよりもずっと大きくなったよ。」


仕事も1人でこなせる。 接客態度も良い。

本当に大きくなっていた。


紅葉はと言うと白夜と上手く行っていた。

紅葉が誘い色々な所へデートに行ったりしていた。

面倒くさがりやな白夜は、引っ張られながらも紅葉と上手くやれていた。

みんな上手く行っていた。


ある日の事……。 紅葉は誰かから付けられてる気がしていた。 姿は見えないがいつも誰か居るような気がしていた。 怖くて白夜に相談する。


「 白夜君。 最近誰かから付けられてるような

気がするの。 怖いの……。」


「 そうなの? 大丈夫か? 当分は俺が家まで送るよ。 誰か心当たりないのか? 」


紅葉は色々考える。 誰か心当たりはないか。


「 あっ! そう言えば……。」


1ヶ月前……。 電車で痴漢にあったのだ。

紅葉は直ぐに声を出して、周りの男達に捕まり駅員さんの所へ連れてかれた。

被害にあった事を説明し警察に連れてかれたのだ。

もしかしたらその相手かも知れなかった。


「 そんな奴居たのかよ。 怪しいな。」


二人は早くストーカーが居なくなる事を祈るのだった。

その日の夜。 モンクの家に紅葉が来た。


「 どうしたの? 何かあったの?? 」


「 実は……。」


ストーカーの話を全て話した。

親身になり話を聞いた。 今も大切だったからだ。


「 ん〜。 それは怖いね……。 白夜が居るから大丈夫だろうけど心配だよね。

危ないときとかはいつでも言ってね?

僕ならいつでもどんな時も飛んで行くから♪ 」


「 さすがはモンクンだ。 やっぱり落ち着くよ。

昔からの幼なじみだもんね。」


紅葉は家に帰る。

モンクは深く考える。


「 晴斗君。 心配なのかい? 」


「 当たり前だよ。 危ない奴も居るからね。

何かあったら助けないとね! 」


モンクは今でも好きだから、少しでも力になりたかったからだ。 見返りなんかには期待していない。

ただ幸せで居て欲しかったから。


週末の日曜日。 紅葉と白夜はデートへ。

街中で色々探索したり、美味しいご飯を食べたりしていた。


「 白夜君は何でデートのときスマホ持たないの? 絶対不便だよぉ。」


「 荷物が邪魔だから基本持ち歩かないんだよ。」


相変わらずの変わり者だ。

二人はゲームセンターへ行くと白夜はトイレへ行ってしまう。

一人になり待ちながら周りを見渡していると、一人の男性がこっちを見ている。

目が合ってしまう。 その男性は何処かで見た事があるような……。


( あの人ってたしか…… えっ!? 痴漢? )


そうだった。 勘は的中していた。

ストーカーの正体は痴漢をしてきた男だった。

直ぐに怖くなり走って逃げる。

男は直ぐに追いかけて行く。

男は逆恨みして紅葉に仕返しをしに来たのだ。


「 あれ? 紅葉。 何処行ったんだろ。」


ゲームセンターの中には探しても見つからなかった。 スマホも無いから店員さんに紅葉の特徴を言って聞く事に。


「 ん? ああ。 その子ならいきなりビックリしながら走って出て行きましたよ。」


( なんだって? デート中なのに? なんでだろ。

もしかして…… 嫌な予感がする。)


白夜は直ぐにわかった。 もしかしたらストーカーに遭遇してしまったのか?

白夜は急いで外へ出る。 スマホを持たなかった自分を後悔する。


その頃モンクは桃とデート中。


「 それでね、お母さんが転んで皆が大笑いで。」


「 それは面白いねぇ。」


二人は公園で無駄話をしていた。

そのとき桃はモンクへ告白をする決意をしていた。


「 モンク君? 実は話したい事があるのぉ。」


「 ん? どうしたの? 」


勇気を振り絞り、モンクへ告白しようとする。


「 実はね。 …… 前から。」


するとモンクのスマホが急に鳴り出す。


「 あれ? 誰からだろ? ちょっと待ってね。」


着信は紅葉からだった。


「 もしもし? 紅葉ちゃん。 どうしたの? 」


「 はぁはぁ…… モンクン。 助けて。

駅前に居るんだけど、ストーカーが追っかけて来てるの。 助け……。」


ブチッ! 電話が途中で切れてしまった。

小声で話してたから聞き取りにくかったが、ストーカーに追われてるのだけは良くわかった。


「 ヤバい! 紅葉ちゃんのピンチだ。

ごめんね。 ちょっと行って来る。」


白夜が居るから大丈夫だろうけど、心配だから行く事にした。


「 でも白夜君居るんだよね? なら大丈夫だよ。」


桃は嫉妬していた。 モンクに想われている事に。


「 ごめんね。 でも紅葉ちゃんは僕の大切な幼なじみなんだ。 ほっとけないよ。 」


直ぐに走るモンク。 その時分かった。

モンクは紅葉の事が好きな事を。


「 そうだったのかぁ…… 。 何となく分かってたんだよね。 でも彼氏が居るんだからチャンスはあるから諦めないもん! 」


桃も諦めが悪かった。

そしてモンクは駅前に走って行くのだった。


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