第31話 紅葉の告白
モンクの具合は桃とたまに来る伴の看病のお陰で、あっという間に良くなっていた。
1日休んでしまったが今日からは学校へ行ける。
学校へ行ったらまずは海荷へのお見舞いのお礼を言わなければいけない。
今日はある決心をしていた。
それは…… まさかの!? 紅葉への告白。
何故いきなり思いたったのか?
それは最近の自分の行動は、前とは違い感謝されたりする事が増えた。 それがここまでの自信に繋がったようだ。
学校に着くと胸の高鳴りが抑えられない。
緊張なのか? それとも満身しているのか?
今日のモンクは誰にも止められない……。
( よーし。 今日の放課後僕の気持ちを伝えるんだ。 そうすれば上手く行く気がする。)
でもモンクは学校に来れるようになったが、ケガや痣だらけにより絆創膏や包帯巻き巻きのミイラ男になっていた。
教室に入ると皆からざわめきが起こる。
当然だ。 普通はこんな事ないのだから。
「 大丈夫かい? モンク君? 」
「 ちょっと転んだだけだから。 ありがとう。」
キムナリ君だ。 相変わらず優しい。
「 大丈夫モンクン? ケガしてるなら言いなよ!
お見舞いに行ったのに。 全く……。」
「 ごめんね。 もう大丈夫だから。」
紅葉には心配かけたくは無かった。
男のどうでもいいプライド。
色んな人に声をかけられた。
いつの間にかこんなにも心配されるようになっていた。 前のモンクなら絶対に誰からも心配されなかっただろう。 モンクは照れ臭かった。
「 あんた何その怪我!? ふざけてんの? 」
「 あはは。 大丈夫、大丈夫! 」
海荷だ。 酷い姿に声を上げてしまう。
本当はクールに迎えるつもりだったが、酷い姿を見て居ても立っても居られなかった。
「 よっ! モンク。 昼メシ交換しようぜ! 」
「 うん。 良いよ。」
モンクはいつものように伴に不平等交換をされてしまう。
モンクは相変わらず変わらない伴に、さすがはガキ大将だなぁって思った。
そしてパンを交換した。
( ん? このパンは焼き立ての?
どうなってるんだ? )
伴から貰ったパンは、いつものコンビニのパンでは無かった。
何処かの個人店のパン屋で買ったようだ。
袋にお店の名前が…… 「 パン屋 エレガント 」。
( えっ!? あの有名なお店のエレガント?
しかも焼き立て。 ここら辺には無くて、10キロ以上も離れてるのに。 どうなってんだ?? )
パンが入っている紙袋に手紙が入っていた。
( 色々悪かったな。 朝自転車で買って来た。
パン好きなら食え! 伴。)
と手紙に書いてあった。
その手紙は何言ってんだ? って内容だが、モンクにはちゃんと分かっていた。
伴の気持ちがこもった手紙に、朝早く起きて暗い朝に自転車をこいで遠くのパン屋にまで行ってくれた。
モンクはまだ温かいパンを鞄に入れ、凄い嬉しくなっていた。 最高の親友だ。 かけ替えの無い親友。
授業が始まりいつもよりテンションが上がる。
海荷は授業を受けるモンクの姿を見て、痛々しく思い苛立ちもあった。
「 あんたってさぁ。 前から思ってたんだけど、人の為に無理し過ぎじゃない? そんなんは、ただの自己犠牲だから。 」
あんまり考えた事はなかった。 自分が周りにはそんな風に見えていた事を。
「 体が勝手に動いちゃうんだから仕方ないよ。」
「 でもいつも空回りの方が多くない?
誰にも気付かれない事の方が多いし。
しかも不器用だから器用な奴に先越されちゃうし。 絶対に自分の為にも気をつかえよ。」
モンクは小さいときから人の為に色々やってきた。 最近は評価される事は多かった。
でも沢山やってもほとんどが空回り。
得する事や感謝なんかはほとんどされた事がない。
それでもモンクは思った。
やっぱり自分はそう簡単には割りきれないと。
休み時間。 モンクの席にあいつが来た。
白夜だ。
「 よっ。 相変わらずボロボロだな。
また余計なお節介してたんだろ? 」
図星だ。
「 白夜には分からないだろうが、自分の行動に後悔は無いよ。 やらなかったら後悔するより絶対良い。 同じモノサシで計らないで欲しいな。」
白夜には強気になれた。 勝手にライバルにしてるから。
「 俺様のモノサシで計ったら、お前何かマイナスにしかならねぇよ。」
白夜はそれを言い残し帰って言った。
( むむっ?? 何しに来たんだ? )
白夜は心配していたのかも。 白夜にしか分からない事だった。
放課後。 モンクは紅葉の所へ一直線。
想いを伝える事に……。
心臓はバクバク。 爆弾のようだ。
爆発する前に終わらせなければ。
「 も、 もも。 紅葉ちゃん! 今からちょっと良いかなぁ?? 」
「 モンクン……。 ちょっと予定が。」
ガックシ。 仕方ない。 諦めよう。
次の機会にするしかない。
「 全然大丈夫。 違う日にするよ。」
諦めて違う日に。
仕方なく気分を変えて体育館の前のいつもの場所で、ゆっくり考える事にしよう。
するとそこに紅葉と白夜が来た。
( えっ? どうして二人が? 予定では?? )
モンクは直ぐに隠れる。 二人はそのまま体育館裏に行った。
モンクは凄い気になってしまう。
体育館の中にあるボール倉庫に入り、窓から二人を覗く。 でもさすがに声が聞こえない……。
( なら超聴覚!! )
この能力を使えば人の何倍も良く聞こえる。
デリカシーの欠片も無いが、これは仕方ない行動だ。
「 白夜君……。 実は前から好きだったの。
付き合って下さい! 」
モンクの頭は真っ白になっていた。
終わった…… モンクの青春も。
( 嫌? 待てよ。 白夜の返答にもよるぞ。
もしふってくれれば、チャンスはあるぞ。
コイツは女の子なんか興味無かった筈。
行けるぞ!! )
しょうもないモンクの戯れ言。
神よ…… どうか。 どうか宜しくお願い……。
白夜は考えている。 行けるか?
「 うん。 別に良いよ。 宜しくな。」
終わった。 本当に。 しかも告白する瞬間まで見せられてしまう。 圧倒的敗北!!
能力を切り、モンクはボール倉庫で少しだけ眠りに着く。
( 少し眠ろう……。 もう、疲れちゃったなぁ。)
「 あのー! ボール取れないんですけど!! 」
モンクは部活をしようとしてる人の邪魔になっていた。
こうしてモンクの初恋は無惨に破れ去るのだった。
モンクはそのまま、帰り道の途中にある町を見渡せる公園に行く。
ここは落ち込んでるときに来る場所だった。
( 元々分かってた事じゃないか。
自信があった? バカらしい……。 マドンナが
僕の事何か好きになる筈ないだろ。)
ジャングルジムの上で町を見渡しながらたそがれるのだった。
そこへ海荷が偶然通りかかる。
( ん? モンクやん。 腑抜けやがって。
よーし。 ビックリさせてやる! )
こっそりジャングルジムに登り、驚かせようとする。 近寄って行くとその背中はいつもと違う。
( あれ? コイツもしかして。 泣いてる? )
モンクは一人で泣いていた。
ずっと大好きだった紅葉が他の人と付き合う事に、ショックしかなかった。
海荷はゆっくりと降りて、何も言わずに帰るのだった。
( あのボンクラ…… 泣いてた。 もしかして、フラれやがったのか!? )
海荷は知っていた。 モンクが好きなのは紅葉な事を。 モンクの目線はいつも紅葉を見ていたから簡単に分かった。
夕方までずっと町を眺めていた。
( まぁ仕方ない。 今日はもう帰ろう。
久しぶりサムと戯れるとするか。 男同士仲良く。)
ショックのあまりサムと戯れて誤魔化す作戦。
「 良いねぇ。 久しぶり人生ゲームでもしようか? あれは第2の人生を味わえて最高だからね。」
急に隣にサムが現れた。
「 今日はショック過ぎてビックリもしないよ。
一緒に家に帰ろうか? 」
「 うん。 帰ろう♪ 」
サムは心配して探しに来たのだ。
最高の相棒と共にゆっくり歩いて帰って行った。
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