第28話 不器用な二人


モンクは伴が裏口から逃げる気がして先回りしていた。


「 モンク……。 もう構うなって言ったよな?

しつけぇんだよ。 関係ねぇんだよ。」


「 そうかもね……。 でもおばさんが心配してるから。 僕が止めたく来たんだ。」


そのときのモンクは、もう迷いは無かった。

伴を連れ戻す決意をしていた。


「 今の俺は自由だぜ? センコー《先生》にはバカにされないし、勉強しなくていいし何より俺の事を必要としてくれる。

最高な仲間達なんだよ。

おめぇみたいないじめられっこには分かんねぇだろうけどな。」


モンクにはとても痛い言葉の数々。

だからと言って、引く訳にはいかない……。


「 そうなのかい?

僕には君が幸せそうには見えなかったよ?

ただ伴君は楽な道に逃げたかっただけなんじゃないの? 何も考えずに苦労しない楽な道に。」


「 うるせぇんだよ!! 」


ドスッ!! ボゴォッ!

モンクに重いパンチが顔面に入る。 凄い威力。

2発入っただけで気絶してしまいそう。


「 痛ててて…… 図星だったかな?

昔からだね。 自分に不都合な事は暴力で解決しようとするんだよね。

君の理想の仲間達も同じなのかな? 」


ズドッ! ボゴォッ! また何発も入る。

伴は確信を突かれていた。 学校生活をしていて先生達には白い目で見られ、周りからは乱暴者と言うだけで距離を置かれる。

そんな生活にうんざりしていたら、ゲーセンで偶然会った不良達と意気投合して、自分の様なはみ出し者と仲間になった。

凄い楽だった。 誰も勉強やルールで縛る者は居ない。 自分の居場所だと思った……。


「 うっ…… じゃあ、何で間違えてないなら椿先生から逃げたんだ? 分かってるんじゃないのかい?

自分が悪い事をしていて、あいつらは悪い奴だって事を……。」


「 さっきからうるせぇんだよ!

何なんだよ。 お前は…… ゴミ野郎なんだよ。

ビビりで友達の居ないお前なんかに!! 」


ズドォーーンッ!! 重い蹴りが腹に入る。

モンクはぶっ飛んで壁にぶつかり、倒れ込んでしまう。


( 今のはマズイ…… 。 うっ、思いっきり入り過ぎた。 まだだ……。 まだ倒れる訳にはいかない。)


モンクはふらふらになりながらも立ち上がる。


( 何なんだよ……。 モンク。 何で立ち上がる?

弱いクセして何で立ち上がるんだよ。)


「 痛いなぁ……。 僕には友達は居るよ?

紅葉ちゃんにサムに桃ちゃん。 それと海荷ちゃんにキムナリ君にバイト先のみんな。 沢山出来たんだ。

僕は変わったんだよ? 強くなったんだ。

力では無く心が。

今の僕なら伴君の暴力には

負ける気がしない。

それと、最高の暴力野郎の友達…… 伴君。 」


足はふらふらになりながらも何度も立ち上がる。

伴の目を覚ませる事が出来るのは、自分しか居ないと思ったからだ。


「 友達、、、 俺とお前が? 」


「 うん。 …… 君の意思何か関係ない。

僕が友達だって思ったから。 ずっとずっと

一緒に生きて来たよね? 僕はいじめられたりも

したけど、楽しい事も沢山あったよ?

君がいつも一人の僕に話をかけてくれたんだ。

次は僕が〈声〉をかける番だ。

一緒に帰ろう? 」


伴の心にモンクの言葉が突き差さっていた。

伴はいつの間にか友達だった筈なのに、周りのみんながモンクをバカにしていたから、その勢いでいじめていたら同じいじめっこになっていた。

でもモンクの事を友達だと思っていたから、いつも声をかけて合コンのときも修学旅行のときも、モンクを誘っていた。

自分では忘れていた感情だが、勝手にモンクを誘うのが当たり前だったから。


「 モンク。 俺は……。」


「 伴! 僕は友達だからこそ、お前に腹立ってるんだよ。 散々いじめて置いて、このままで終われると思ってるんだ? 僕達はずっと友達だろ?

分からないなら分からせてやるよ!

目を覚ませ伴!! 」


感情が高ぶり、ふらふらな足で走り伴にモンクの本気のパンチを入れる。


ボゴォーーッ!

パンチが顔面に入るとぶっ飛び、しりもちをついてしまった。 威力が強かった訳ではない。

モンクが初めて暴力をしなのが衝撃的だったから。


( 痛ぇーーっ。 モンク……。

お前はなんなんだよ……。)


モンクは全てを出しきり気絶してしまう。

伴は立ち上がり、その場から立ち去る。

その足は重く、ゆっくり歩いて行く。


モンクの言葉が頭の中で鳴り響いて止まらなかった。


それから何時間が過ぎ、伴は仲間達とハンバーガー屋に居た。


「 お前ら…… ちょっと良いか? 」


「 何なんだよ? 伴。 しんみりしちゃって。

何でも言えよ! ( 友達 ) だろ? 」


その言葉は軽く聞こえた。 あの憧れの仲間になれた不良だが、もう一緒に居たときの迷いの理由が分かっていた。


ここは俺の居場所ではない事を……。


「 俺…… ここから抜けるよ。」


その言葉を聞くなり不良共がざわつき、立ち上がる。


「 おい! 何言ってんのか分かってんのか? 」


「 うん。 友達に言われて学校に行きたくなって。

あいつに俺が必要だったんじゃない。

俺にあいつが必要だったのが分かったから。」


その言葉を聞いてキレ出す不良達。


「 伴! バカにしてんのか?

面貸せや! 来いよ。 ボスに落とし前つけて

貰わねぇとな。 バカな奴だぜ。」


伴は不良達にアジトに連れて行かれてしまう。

不安しかない。


その頃、モンクは目を覚ます。


( 痛えーっ。 …… 骨がいってるかも。

良く分かんないけど、そんな感じ。

病院行かないとヤバいかも……。)


ボロボロになった。 伴の姿はそこには無かった。

説得失敗したのか? それはそれで仕方ない。

仕方なく帰ろうとしていたら、メールが来ていた。

確認すると桃からだった。


( モンク君大変! 友達とハンバーガー食べてて、伴君に偶然会ったら何か悪い人達と変な空気に

なって、何処かに連れてかれちゃったの。

怪しいから今はこっそりつけてるの。)


「 伴……。 今行くぞ。 今度は僕が救う番だ。」


直ぐに桃に言われた場所に向かう。


アジトの倉庫に伴達は着いた。

当然だが簡単には抜けれない……。

不良達の謎な話だ。


「 すみません…… はぁ、はぁ。

抜けさせて下さい。」


散々殴られまくりヘロヘロな伴。


「 おい。 伴。 良いわけないだろ?

俺達仲間だろ? 今からでも遅くはない。

謝れば許すから。 なっ? 」


ボスからまたやり直そうと提案される。


「 ボス……。 俺にはあの学校が居るべき場所だったみたいなんです。 だから。」


「 舐めんじゃねぇ!! 」


また暴力が始まる。


倉庫の側でその叫び声を聞いていた桃。


( 伴君……。 大丈夫かしら? 警察に電話したけど、凄い心配なの……。)


震えながら見守る桃。

そこにモンクが到着。 ヘロヘロだった。


「 モンク君!? そのケガどうしたの?

手当てしないと! 伴君は警察に電話したから

もう任せて大丈夫だから。」


「 ありがとう。 はぁはぁはぁ。 大丈夫!

桃ちゃん。 本当にありがとう……。」


その目は虚ろになり、足もふらふら。

でも倉庫に入って行った。


( モンク君……。)


倉庫を開けるとボロボロな伴が居た。

一人を多数でボコボコにしたのだ。


「 伴!! 助けに来たよ。」


「 何だコイツは? 」


「 …… ん? モ…… ンク。」


伴はもう気絶寸前。


「 すみませんが伴君は僕の友達なんです。

だから…… うぐっ! 」


直ぐに脇に蹴りを入れられる。

そして倒れたモンクの背中に馬乗りになり

動けなくする。


「 決めるのは俺らだ。 邪魔すんな。

落とし前つけてんだよ。」


鉄パイプを持って伴の前に立つ不良の一人。

最悪な予感がモンクの頭に過る。


「 伴。 悪いが手使えなくさせてもらうぞ?

落とし前だ。」


モンクの怒りが爆発する。


「 何言ってんだ!? 落とし前?

勝手に決めんなよ。 僕の友達だぞ。

その手はお前らみたいに、人を傷つける為に使うんじゃない。 これから沢山の人の為に使うんだよ!

ふざけんじゃねぇよ!! 」


モンクは激情し声を荒げながら暴れる。

馬乗りされていて全く動けない。

伴はそのモンクの話を聞いて昔の事を思い出す。

幼稚園児の頃の約束を……。


「 伴君は力強いんだね。 将来はプロレスラー?」


「 何言ってんだよ? 俺には夢があるんだ。

でっかい家を作る大工になる! だからプロになったらお前の家は俺が作ってやるよ。」


「 凄いんだねぇ。 約束だよぉ?? 絶対だよ? 」


モンクはちゃんと覚えていたのだ。

伴は忘れていた約束。 伴は涙が止まらなかった。

不良が鉄パイプを振り下ろそうとする。


「 モンク…… ありがとう。 もう良いんだ。

約束守れなくてごめん……。」


モンクの中で何かが弾ける。


「 もう許してやらない……。 うぉーーっ!! 」


馬乗りになってた不良が噴き飛ぶ。

壁にぶつかり気絶してしまう。


「 なんだ? 一体!? 」


怒りが頂点に達してしまったモンクが立ち上がる。 鉄パイプを振り下ろすの止めて、モンクに向かってくる。


「 超パワー、超反応! 」


モンクが能力を使う。









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