第19話 楽な道
お給料を渡してしまい、またお小遣い0に。
モンクは、海荷を笑顔にしたくてした行動。
後悔なんてなかった。 でも、最初の給料が無くなり落胆していた。
( はぁ〜。 仕方ないけど、ショックでかいなぁ。)
重い足で、どうにか家まで向かいました。
家では、サムがスタンバイしていた。 鍋やガスコンロ、すき焼きの準備をして。 どう言えば良いのか?
「 ただいまぁ……。」
「 お帰りなさいませ。 鍋の準備が出来ております。 旦那様。」
ヤバい。 余りの給料を楽しみにしていた、サムが国内ドラマに影響され、お迎えをちゃんとする奥さんの様になっていた。 言いにくい……。
勇気を振り絞り、言うしかない。
「 サム。 すまない。 実は給料を、海荷ちゃんに貸しちゃったんだ。 ごめん。」
「 君のお金だから仕方ないけど、海荷ちゃんはどうしたの?? 」
「 実は……。」
全てを話し、彼氏のお母さんの為に貸した事を話した。 いつ戻って来るかは分からない事も。
「 そうなんだね。 でも、晴斗君の表情は何でいつもより暗いんだい? 何か後悔でもあるの? 」
それはその筈。 モンクはあまり彼氏を好きではなかった。 理由は分からないが。 だから、不安が少しだけあった。 海荷の為に貸した事は、迷いや後悔はない。 彼氏が気掛かりになっていた。
「 ちょっとね。 彼氏さんに騙されてないか、少し気になってね。 僕の思い過ごしだと思うんだけど。 何か気になって。」
「 晴斗君。 友達の為って難しいよね。 その友達の事を思って行動しても、間違えてるかは分からないからね。 一緒に信じよう! 彼氏さんを。 」
鍋がポツンとテーブルに残っている。
「 仕方ないから、野菜だけの野菜鍋にしようか。 寂しいけど……。沢山野菜はあるからね。」
「 これは酷い……。 こりゃあ。」
二人は卵を準備して、お肉の無いすき焼きをした。 仕方ないけど、侘しい食事になった。
次の日。 モンクはいつもの様に学校へ。
海荷が笑顔で待っていた。 直ぐに教室で、モンクの方へ向かって来る。
「 モンク。 昨日はありがとう。 彼氏が喜んでたよ。 大学辞めずに済みそう。 借りたお金は、彼氏が少しずつ返すって。」
少しほっとした。 彼氏さんは、ちゃんと返してくれるのだと。
「 なら良かったよ。 あの……。」
モンクはやっぱり気になって、彼氏の事を聞きたくなる。 でも、ウザく思われるのが嫌で言わなかった。 彼氏を信じるしかない。
後からこの行動は、裏目に出る事は誰も知らない。
学校が終わり、バイトをして絞られて家へ。
最近の日課になっていた。
モンクはサムを喜ばせたくて、今日は夜ご飯をラーメン屋で済ませる予定にしていた。 サムが店に来て、モンクとテーブル席へ着く。
「 大きなお店だね。 匂いも凄い。 さすがはお店だね。 楽しみだなぁ♪ 」
サムはハイテンション! モンクの働いているお店に、来ただけでも嬉しいのに、しかもラーメン。
サムはラーメンが大好き。 カップラーメンしか食べた事はないけど。
「 サム。 カップラーメン何かとは、大違いなんだぞ? 麺は手作り麺だし、注文されてから直ぐに来るし。 ダシのスープが最高なんだよ? 」
モンクは自分の店の様に自慢する。 サムも嬉しくなっていた。 期待が高まる。
「 いらっしゃいませ。 君がサム君だね。 初めまして、柳内です。 鈴木君をいつもお世話してます。」
店長がわざわざ、接客しに来てくれた。
「 初めまして。 サムです。 店長さん。
これからも宜しくお願いします! 晴斗君は、がんばり屋で絶対に何でも出来ます! 」
「 それは嬉しいね。 最高の友達だね。 鈴木君の面倒は任せてね! サム君。 ごゆっくり。」
店長はいつも格好いい。 モンクの憧れ。
「 格好いいね。 晴斗君にもあんな大人になって欲しいなぁ。」
「 そうだね。 どんな仕事をするかは、まだ分かんないけどあんな大人になりたいな。」
話してる内に、ラーメンが来た。
「 はい、お待ち! 濃厚味噌ラーメン大盛のチャーシューと卵トッピングです。 後、餃子です!
ごゆっくりどうぞ! 」
それは正に、王の食事。 それは言い過ぎか?
夜ご飯に相応しい、最高の量にスケール。
サムは圧倒される。
「 なんじゃい? こりゃあ。 旨そう。
いただきます! 」
ズルズルー!!っ 激しく麺をすする。
「 旨いぞぉぉお!! 」
感激の余り、大声を出して立ち上がる。
「 おいっ! 大袈裟過ぎるぞ。 恥ずかしい。」
店長とバイト達は、こっちを見て笑っていた。
「 本当に美味しいんだもん。 カップラーメンも良いけど、今度からは毎日ここで夜ご飯食べようよ? そうしよう! 」
「 そんな事してたら、バイト代直ぐに無くなっちゃうだろ? たまに来ようよ。」
二人はラーメンを沢山食べた。 餃子も手作りで美味しい。
「 この餃子も美味しい。 今度、作ってみようよ? 晴斗君なら出来るよ。」
「 こんなには美味しく出来ないよ。」
店長が駆け寄って来る。
「 サム君。 どうだったかな?
ここのラーメンは? 」
「 最高ですよ。 毎日来たいです。 あんたが優勝ですよ♪ 」
笑われるサム。
「 ありがとう。 でもね、いつかは鈴木君もこのラーメンを作るんだよ? その時は、第1号に君に食べて貰おうかな? 」
「 はいっ! 喜んで。」
サムは、早くモンクのラーメンが食べたかった。
いつ出来るようになるのかな?
今度は、桃も誘ってお店に来たいサム。
最高な1日になった。
次の日になり、学校へ行く。
モンクは席に着くと、海荷の姿が見えない。
休みは珍しくはないが、心配になる。
学校が終わり、バイト先へ行く。
海荷はシフトに入ってるが、休みの連絡がない。
どうしたのだろうか? 連絡をしても繋がらない。
明日は来ると思うのだった。
帰り道、心配しながらも家に向かう。
少し寄り道をして、サムにおみあげを買う。
急に雨が降ってきた。 早く帰らなければ。
「 絶対喜ぶぞぉ。 どんな顔するかな?
ん? あそこのマンションの屋上に、雨の中なのにだれかいるぞ。 何してるのかな? 」
帰り道で、雨に濡れながら屋上に立ってる姿を偶然見つける。 地上から角度のお陰で、少し見えるくらい。 他の高い所から、見てみる事に。 興味本位である。
( 変なの。 こんな夜に雨の中。 傘も差さずに、ずっと立ってる。 能力で見てみよ!
…… 超遠視! )
( 女の子? ずぶ濡れじゃないか……。 あれ?
海荷ちゃん!? )
その姿は、海荷だった。 直ぐに、移動して屋上に上る。 マンションの10階くらいの高さの屋上。
嫌な予感がしていた。
屋上に上ると、そこにはやっぱり海荷の姿が。
「 海荷ちゃん。 どうしたの? 風邪引くよ?
何してるの? 」
海荷は屋上から、下を見下ろしている。
「 モンク……。 ごめんな。 彼氏に騙されてたみたい。 二股掛けられてて、全部嘘だったみたい。
彼氏が全てだったのに……。」
「 そうだったの? そんな所に居たら危ないよ?
こっちに来て話をしよ? 」
少しずつ近付く。
「 来ないで! もうどうでも良いのよ。 ウチにはもう何にも無い。 家族にも愛されてないし、彼氏にも騙されてたし。 だからもう……。」
かなり不味い展開。 どうして、こんな風になる前に止められなかったのか? モンクは面倒だったり、ウザがられるのを恐れ、疑惑があったのに指摘しなかった。 これは、そのツケが回ったのか。
「 何言ってるんだよ? 危ないよ。 僕と一緒に帰ろう? サムも居るから、一緒にエビフライを作ろう? 僕達はもう友達じゃないか。」
必死に説得する。
「 うるさい! うるさい! ほっといて…… えっ? ヤバいっ! 」
興奮していて、足を踏み外し地上へ落ちる。
それは、人生の終わりを意味する。 海荷にはスローモーションの様になり、モンクが慌てる姿が見えながら落ちて行く。
「 そんな!! 嘘だ。待って! 」
直ぐに走ろうとしても、絶対に間に合わない事が直ぐに分かる。
( ふざけんな。 僕の前から友達を死なせるものか。 絶対に! )
モンクは雨に濡れた、床を集中して見つめる。
「 グラスホッパー!! 」
モンクは能力を使い、海荷を助ける決断を下す。
間に合うのか? 能力は上手く使えるのか?
そして、海荷を助けられるのか……。
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