第2話 嫌いな虫

???「感染完了」


確かにそう聞こえた。

だが周りを見回しても誰もいない。

昨日のこともあり頭が混乱しているだけだ、そう思いまた寝ようと思った、その瞬間。



???「絶対命令が設定されました」



俺「!?」



どこから聞こえて来ているわけでもなかった。

脳に直接伝えられているからだ。



俺「誰だ!絶対命令って何だ!」


俺の声は届いていないらしい。

聞こえる声は案内電話の自動音声のように冷たかった。



???「絶対命令A、右手を上げる、制限時間1分」

???「罰、兄が転ぶ」



俺「なんだそれ」



さっきまで寝ていたせいでまだ夢が続いている、その程度に考えていた。




???「絶対命令が破られました」

???「罰を執行します」


ドンッ



兄「痛った!」


廊下で兄が転んでいた。



俺「え...」

俺「いやまさかな」



少し驚いたがただの偶然だろうと深く考えなかった。しかし、またその声は聞こえた。



???「絶対命令が設定されました」



俺「またか!」



???「絶対命令A、虫を食べる、時間制限10分」

???「罰、右手小指の爪が剥がれる」



俺「は!?虫!?」


俺は虫が苦手だった、けんたと同じように。

なぜだかけんたのことを考えていた。

考えていると昨日のけんたとの会話に引っかかった。



ー昨日の朝ー


俺「おい、昨日のあれなんだったんだよ」

けんた「虫がいたんだよ、足元に」

俺「なんだそんなことか大袈裟だなぁ」





この時俺は悟った、



けんたの奇行の原因を...



俺も同じ状況にいることを...





身体は震え、悪い汗をかいていた。




俺(そうだ..虫を食わないと爪が..)




だが、行動に移そうとした時には手遅れだった。




???「絶対命令が破られました」



俺「しまった!」



???「罰を執行します」




俺「...え?」



恐る恐るゆっくりと頭を下に向けた。





俺「ウワァァァ!!」




宣言通り右手小指の爪は根元から綺麗に剥がれていた。

一瞬の出来事で自分自身剥がされたことに気づかなかった。

ただ足元にはしっかりと血の着いた爪が落ちていた。





その光景はまるで
















俺の嫌いな虫のようだった....




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