絶対命令感染症

くらげもち

第1話 冷たい声

 最近親友のけんたの様子がおかしい。

 昨日は朝会中に発狂した後泣きながら走って保健室に行った。

 昨日のこともあり今日は欠席すると思っていたが、俺がついた頃には机で寝ていた。

 案の定皆けんたの噂をしていた


 しんじ「うわーキモイのいる」

 こうた「な」


 めぐみ「けんた君どうしたんだろ」

 ゆうこ「タケシ聞いてみてよ..親友でしょ?」

 俺「えぇ..うん」

 俺は少し気が引けたが、思い切って聞いてみた


 俺「おい、昨日のあれなんだったんだよ」

 けんた「虫がいたんだよ、足元に」

 俺「なんだそんなことか大袈裟だなぁ」

 俺「皆〜こいつ虫にビビって発狂してたらしい」


 こうた「まじかよ、ダッセェェ」

 ゆうこ「なんだ心配して損したー」

 せいや「あっけんた!肩に蜘蛛!」


 けんた「え、いないよ」

 せいや「引っかかんないか」


 これで解決したと思われた。

 しかし数時間後の昼休憩にまた異変は起こった。

 普段通りにたわいもない会話をしながら弁当を食べていると、



 ガタッ


 俺「どっか行くの?」

 けんた「う、うん..ちょっとトイレ」

 俺「お前トイレは逆だr....え」


 めぐみ「なっ何?」


 グチャ



 けんたがめぐみの弁当を奪い床にぶちまけたのだ


 ゆうこ「ちょっと何やってんの!?」

 けんた「ごめん...ごめんごめんごめんごめん」


 けんたは走って逃げようとした


 俺「おいちょっとまてよ!」

 けんた「どけよ!!!」


 俺は突き飛ばされて机の角で後頭部を打ってそのまま意識を失い倒れた。



 目を開けると俺は保健室のベッドにいた。

 隣から静かな泣き声が聞こえる...けんただ。

 俺はけんたがめぐみと俺にしたことを思い出し怒りに身を任せてカーテンを開け、けんたの胸ぐらを掴んだ。



 俺「お前自分がやったこと分かってんの?」

 けんた「ごめん...ごめん...ごめん...ごめん...」

 俺「ごめんで済むわけないだろ!」


 気がつくと俺はけんたを殴っていた。

 すぐに近くで驚いていた保健の先生が俺を引き離した。


 俺「マジで何がしたかったの?頭湧いてんだろ」

 けんた「.....」


 俺は気分を悪くしたまま帰って布団に入った


 ピンポーン



 兄「はーい」

 けんた「あの...たけしくんいますか..」

 兄「呼んでくるからちょっと待っててね」

 兄「たけしーけんたくん来たよー」


 俺(謝りに来たのか?なんでもいいけど話しつける必要があるな)


 俺「今行くー」



 俺「何?」

 けんた「今日は、本当にごめん...」

 俺「いやごめんじゃなくて、まずなんでめぐみの弁当ぶちまけたんだよ」

 けんた「いや..それは...」

 俺「またあれか?弁当に虫がついてましたってか?」

 けんた「いや..そうじゃなくて...」

「あ、怪我は大丈夫..?」

 俺「は?話逸らすなよ」

 けんた「めぐみには明日謝るから!」

 俺「当たり前だろ」

 けんた「そうだよね...」

 けんた「あの..それで..怪我の様子を見せて..」

 俺「は?なんでだよ」

 けんた「お願いだよ..」

 俺(一応心配してるってことか?まあなんでもいいか)


 俺は言われた通り後ろを向きけんたに後頭部の怪我を見せた。


 けんた「あぁ...なんてことしちゃったんだ...」

 けんた「本当にごめん...ごめん..ごめん...」

 俺「まあ反省してるなら俺のことはもうぃ..」

 けんた「うっ...うぅ....」


 けんたが後ろで泣いている


 俺「ん?どうした?」

 俺「うわぁぁ!」


 この時俺は人生最大の恐怖をおぼえた...

 振り向いた時目に映ったのは






 ハサミを振りかざしているけんただったのだ。



 俺は咄嗟に後ろに飛び家に入りドアを勢いよく閉めた。

 俺(なんだったんだ...あのまま背を向けたままだったら俺はどうなっていたんだ..)

 俺はパニック状態に陥った。


 兄「なんだ今の音は!」

 兄「おいどうしたたけし!」


 俺「な、なんでもないよ」

 兄「ならさっきのはなんだ!」

 俺「あいつが虫を投げてきたんだよ」

 俺「恥ずいから言わせるなよ!」

 兄「なんだびっくりしたじゃないかー」

 俺兄「ハハハハハ」



 俺は両親を幼い頃に亡くしていてずっと兄と2人で暮らしてきた。

 だから兄をこれ以上困らせたくなかったのだ。

 しかし、体は自然と震えていた。



 兄「どうした?そんなに虫が怖かったのか?」

 俺「ちがうよ」

 俺「ちょっと風邪っぽいから明日学校休むね」

 兄「そうだったのか今日は早く寝ろよ」

 俺「うん」



 言われた通り早く布団に入った。

 でもあんなことがあって寝れるはずがない。

 布団の中でけんたがなぜ俺を襲ったのか、今日のことを誰かに言うべきか、これから学校に行ってまた襲われはしないか、延々と考え続けた。


 俺(..対象は俺だけか?皆も危ないんじゃないのか?)


 俺は皆にメールで今日あったことを送り注意するように言った。


 ― 3年J組チャット―


ゆうこ「やっぱあいつやばいって」

「明日学校休んだほうがいい」俺

しんじ「いやwあいつを追い出せばいいだろ」

とうや「それな」

こうた「確かに」

かりん「決まり」





 翌日、けんたはいつも通り教室に入ろうとした。

 しかし眼帯をつけていることと教室内の雰囲気はいつも通りではなかった。

 黒板には「クズ、キチガイ、死ね」といった暴言の嵐。椅子には画鋲がばらまかれ机は倒されていた。



 けんた「皆...やめてよ...」

 しんじ「どの口が言ってんだよ」

 しんじ「かーえーれ かーえーれ」

 皆「かーえーれ かーえーれ」

 けんた「..嫌だ...」


 こうた「は?声が小さくて聞こえねぇーよ!」



 ガンッ


 けんたはこうたに蹴られて倒れた。


 めぐみ「えっ鼻血出てる..」

 ゆうこ「ちょっとやりすぎだって」


 こうた「たけしに比べたら軽いもんだろ」

 しんじ「そうだよ、今は先生達会議中だから学校から追い出せばいい」

 せいや「当然だよな、クズなんだから」



 けんた「やめろ...」

 けんた「やめろ...やめろ...やめろ..」



 けんたはクラスメイトに引きずられながらも必死に学校からでまいと足掻いた。

 しかしついに力つきて校門の外に追い出されてしまった。



 けんた「クソ...クソ...たけし..ごめん..ごめん..ごめん..ごめん...ごめん」




 ???「絶対命令が破られました」

 ???「罰を執行します」




 けんた「.....ごめん...........」









 ???「感染対象を発見」



 ???「感染完了」



 学校で何が起こっていたか知る由もないたけしの脳内になんの前触れもなく冷たい声は届いた



 たけし「ん?なんだ今の」

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