主人公にインタビューしてみた②(未来ver.)


Q1. 自己紹介をお願いします。


「ハーシェル・ルイス、14歳。ナイル帝国の第一王女よ」

茶髪を一つに束ね、城の庭園の椅子に腰かけたハーシェルは素っ気なく言った。



Q2. ――ああ、さっきの子の14歳の方ですね。それにしても、随分雰囲気が変わりましたね。本当に同一人物ですか……?

 ところで、犬派ですか? それとも猫派ですか?


「猫ね」

 ハーシェルは言った。

「私も、あれくらい自由気ままに過ごしてみたいものだわ。どこへでも好きなところに行けるもの。城の中には飽き飽きしたわ」



Q3. 大切な人はいますか?


「……」

 ハーシェルは目をそらして黙り込んだ。


 ――いるんですか?(威圧)


「……ああーっ、もう、分かったわよ! いるわよ! これでいい?」

 ハーシェルは怒ったように言った。


 ――誰ですか?


 ハーシェルはしばらく言いたくなさそうに口を引き結んでいたが、やがて小さな声で言った。

「昔、まだこの城に来る前に、よく一緒に遊んでいた男の子がいたんだけど。私にとってはやっぱり、今でも一番大切な人。あっ、母様を除いてね。……まあ、お互い随分変わってしまったけれど」

 黒髪にグレーの瞳の少年を思い浮かべ、ハーシェルは悲しそうに笑った。



Q4. 金貨が100枚あったら、何をしますか?


「貧困層の生活改善に使うわね。うちの国はまだマシな方なんだけど、苦しんでいる人がいることには変わりないもの。お金はいくらあっても足りないわ」

 腕を組んだハーシェルは、頷いて言った。



Q5. ここ最近で一番楽しかったことや面白かったことはありますか?


「そうねぇ……やっぱり、城を抜け出して一人で街をぶらぶらするのは最高ね。毎回、口うるさい側近をまくのが一苦労なんだけど、実はそれもちょっと楽しんじゃってたり。スリルと達成感があるっていうか。

 そうそう、最近剣の腕がだいぶその側近に追いついてきたのよ。いつか絶対抜いてやるから覚悟なさい」

 ハーシェルは近くにこっそり控えているであろう側近に向かって、ひやりと宣戦布告した。

 がさがさっ、とバランスを崩したような音が植木の後ろから聞こえた。



Q6. 悲しかったことはありますか?


「ウィルが幼い頃と変わってしまったこと。それから、私の目の前である人が殺されたこと。誰かは言わないでおくわ」

 ハーシェルは静かに目を伏せて言った。



Q7. 目の前に傷ついた子供がいるとします。どうしますか?


「もちろん助けるわよ。あたりまえでしょう?」



Q8. 見覚えがない異性が声をかけてきました。どうしますか?


「状況を見て、場合によっては殺すわ。また刺客かもしれないし」

 ハーシェルはさらりと怖いことを言った。



Q9. あなたの願いは何ですか?


「野原で暮らしていたあの頃にもどること。それさえ叶えば、他には何もいらないわ」

 微笑んだハーシェルの瞳が、震えるように小さくゆれた。



Q10. 最後に、このインタビューを読んでいる人にメッセージをどうぞ。


 ハーシェルはすっと真顔になった。

「この物語は、私、ハーシェルを主人公とした恋愛ファンタジーです。自分が王女であることを知らず、花咲く野原の上で穏やかな日々を過ごしていた少女、ハーシェル。しかし、ハーシェルが力を秘めた石の封印を解いてしまったとき、日常は崩れ去ります。不思議な力をもつ石とは、いったい何なのか。そして、ウィルの正体とは……? 児童文学的な、比較的読みやすいファンタジーです。ぜひお楽しみに」

 ハーシェルは完全な棒読みで言い切った。


 ――はい、やっぱり宣伝でしたね。ありがとうございました。

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