第9話 教科書

 3つの問をクリアしたハルカは腰を下ろし、胡座あぐらをかく。誰も見ていないので、スカートの中身がどうだろうとお構いなしだ。


 ついに最後の1問となった。


 ――――――――――


【問題3】


 20 + 26 = カフェ


 11 + 4 = なべ


 3 + 5 + 8 + 7 = ???


 ――――――――――


 今までの問題は、


 問題1『アメリカ』

 問題2『すいよう』

 問題4『ぼう』


 最後の鍵を解く問題5の文字列は、


 ――――――――――

 【問1】◎○○○

 【問2】○◎○○

 【問3】○◎○

 【問4】○◎

 ――――――――――


 これに当てはめると、問題5の正解は『あい◎う』になる。問3は3文字なので、最悪、問5のワードが分かれば、自動的に問3の答えも分かるのだが、『あい◎う』に入る文字が分からなかった。

 やはりここまで来たら、正攻法で突破するしかない。


「出題者が、同じ解き方で解ける問題を出すわけないじゃん、それじゃあつまんねーし」

 脱出ゲームが得意だった親友サキの言葉を思い出す。

 言われてみればそうだ。

 問題1は漢字変換、問題2はスマホのフリック入力、問題4は漢字の部首。どれも違う解き方だった。

 なので、少なくともこの3つの方法じゃ通用しない。

 それとは別に、ひらがな表やアルファベット順も試したがダメだった。

 そもそも今回は他と違い、数式が出てくる。結局はこの数字が何を示すのかが分かれば解けるような気がする。


 とりあえず足し算もしてみた。


 20+26=46

 11+4=15

 3+5+7+8=23


 46…ヨロ、白、フォーティーシックス

 15…イチゴ、囲碁、フィフティーン


『カフェ』や『なべ』とも繋がらない。また、3つ目の式がわざわざ数字4つになる意味が分からなかった。

 なのでただ足し算をするわけではないらしい。


「考え方としてはアルファベットに近いのかもね」

 問2を考えている時に、数字をアルファベット順に変換する方法を思いついたが、正解じゃない気がした。ただ、一番しっくりくる方法だった。


「20が『カ』になって、26が『フェ』、11が『な』で4が『べ』としたら……」

 ただ、それだと3つ目は4文字以上になる気がする。問3の答えは3文字だ。


「新しい法則を探さないと」

 新しいアイデアを探すべく、ハルカはノートのページをめくった。

 謎解きのメモを書いたノートは、世界史の授業で使うものだった。

 世界史…日本史も年号があったりして、暗号はあるけど……カフェは関係ないか。


「っていうかこんなの書いてたんだね。ワタシ全然授業の内容覚えてないわw」

 色分けをしたり、矢印や四角で囲んだりと、他人からも見て見やすいノートだった。実際は、ノートを作ることに必死で、授業の内容があまり頭に入ってなかったようだが。


「あれ?このページ化学じゃん」

 ページの途中に化学の授業のモノが出てきた。ふと思い出したが、化学のノートを家に忘れて仕方なく世界史のノートに板書を写した時のモノだ。家に帰ったら化学のノートにこの内容を写すつもりだったが、すっかり忘れていた。


「こういうとこしっかりしないとダメだよねー」

 ハルカは肩まで伸びた髪を指でかきながら、白い歯を見せて微笑む。


 だが、その表情が急変する。



「『カフェ』ってもしかして…」

 リュックを慌てて開けて、お目当ての教科書を探す。頼む、持っていてくれ。ワタシ。



 あった。よかった。



 お目当ての教科書を見つけたハルカは表紙をめくる。



「おいおい、こんなのありかよ」

 少しの怒りと少しの悲しみを含んだ顔は、この混乱を物語る。

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