第10話 扉
ハルカが取り出したのは、化学の教科書だった。
「こんなの、理系の勉強オタクしかわかんねーよ」
表紙を開くと、そこには”周期表”が載ってあった。
周期表——地球上や空気中、人間の身体を作るもの、我々の住む地球や宇宙は全て、酸素や炭素と言った原子から成り立っている。周期表はその原子を便宜上、規則に従って番号順に並べた表だ。
番号1から順に
――――――――――
【問題3】
20 + 26 = カフェ
11 + 4 = なべ
3 + 5 + 8 + 7 = ???
――――――――――
原子番号20は『Ca(カルシウム)』、26は『
11は『Na(ナトリウム)』、4は『Be(ベリリウム)』。
「つまり『Ca』と『Fe』で『カフェ』、『Na』と『Be』で『なべ』ってこと」
ハルカは周期表を指でなぞりながら確かめる。
「3番は『
最後の回答を入力した。
……正解の文字が表示された。
――――――――――
【問1】
【問2】す
【問3】リ
【問4】ぼ
――――――――――
至福の時間がやってきた。
問題5のタブを開くと、全ての文字が埋まっており、あとは完成した4文字を入力するだけだ。
「『あ・い・ぼ・う』ね。どういう意味?これ」
少し首を傾げながら、回答ボタンを押した。
表示される『おめでとう』の文字。ああ、やっと終わった。長かった。これまでのことが走馬灯…は見えないが、解放され、いつもの日常に戻れることに高揚感を感じる。
「……いや、何も起こらないんだけど?」
時計の短針が一度傾く程の時が流れたが、前を見ても、後ろ横上下、どこにも変化が無い。何かが動くような音もしない。
一応謎解きはクリア出来たらしい。スマホに表示された画面は『おめでとう』という文字と、画面いっぱいに描かれた『鍵』の絵のみ。
「鍵を手に入れただけってこと?っていうかこれどうやって使うんだよ」
もう一度スマホの画面を
鍵の絵をタップしたり、上にスワイプしてみるが、画面が変わる様子が無い。
「今度は鍵穴が必要ってこと?」
鍵と
部屋のどこか……?
あっ……
「もしかして、こいつか!」
ハルカは足元にスマホを置いた。その床には油性マジックで書かれた四角と『てつ』の文字。
ピッ
初めて、この部屋でハルカ以外の音がした。間違いなく、この部屋が発した音だ。
ゴゴゴゴゴゴ…
心臓が跳ねそうな轟音が背後から聞こえたので、思わず振り返る。
ゴゴゴゴゴゴ……
「全部開くのかよ」
振り返ると、壁が動いていた。
正確には、その壁一面がスライドするかの様に下から上へ持ち上がって行った。
ついにこの部屋から出られる。ハルカは持ち上がる壁を見ながら、余韻に浸っていた。
ダンッ
そして音は消え、扉が完全に開いた。
ハルカは扉の先を見つめる。
「はぁ?ええええええええええええええ!?ナンデエエエエエ!!どういうことォおおおおお??」
この日1番の大声、そして乙女からかけ離れた表情。
第二幕、開演。
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