Route 357

中古で買った魂

泣き叫ぶ排気音は80km/hを超えた

サイドミラーに映り込む赤いランプ

夜の闇に逃げ込むようにアクセルを捻る

法律もモラルも引きちぎって


折り曲げた白いナンバーは

テールライトに染められて

額を伝う血流と一緒になった

JCTを越えて 橋を越えて

バカ野郎は人としての在り方を忘れた

そっと目を閉じる そして

そっとアンダーグラウンドへ堕ちる



アウトレットを越えた頃

パンダほど可愛くない車体と死の気配が

すぐ後ろでうるさく声をあげている

運が悪いと諦めてもいい けど

そんな言葉は頭のどこにも無かった


この暗い15年に蓋をしようとした

どうにでもなれと投げやりに

愉快な仲間も いつか抱きたい女も

みんな忘れて漆黒の羽を授かった

変わりたかったけど

たぶんもう戻れない そう思った



喧騒から離れた海岸でエンジンを切る

何も聞こえない 何も見えない 何も感じない

死にたいようで 死にたくない 僕はどうしたいの

ふと思い出す 存在を消したいと泣いた夜のこと

世界は美しいと言うけれど

それほど世の中キレイじゃない

ガードレールに突き刺さったアイツのように

受けた傷も 犯した罪も 荒んだ心も全部棺桶の中へ

この身を包んで燃え続ける青い炎は

何もかもを灰へと変えた


地獄行きの僕に名前も知らない女が声をかけた

冷たくなった手を引かれて月明かりの下へ出る

星が、星があまりにもキレイで心までキレイになりそうだった

波は儚いメロディーを奏でて

潮風は黒くなった肺を洗ってくれた気がした

上を向いて歩いたのはいつぶりだろうか

地獄行きだけど 楽しければそれでいいや

そう思えた



あれから何年経ったろうか

今も僕は何も変わってない

エンジンが壊れたあの夜

オーバーホールした魂は現役で

やっぱりマフラーは泣き叫ぶようで


でも流れる街並みの中で見つけた僕の一番星はにっこりと微笑んでいて

今日もあの娘の下へフルアクセルでサンゴーナナをカッ飛んでいくんだ

もう止まらない止まれない 僕の人生

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