Route 357
中古で買った魂
泣き叫ぶ排気音は80km/hを超えた
サイドミラーに映り込む赤いランプ
夜の闇に逃げ込むようにアクセルを捻る
法律もモラルも引きちぎって
折り曲げた白いナンバーは
テールライトに染められて
額を伝う血流と一緒になった
JCTを越えて 橋を越えて
バカ野郎は人としての在り方を忘れた
そっと目を閉じる そして
そっとアンダーグラウンドへ堕ちる
◇
アウトレットを越えた頃
パンダほど可愛くない車体と死の気配が
すぐ後ろでうるさく声をあげている
運が悪いと諦めてもいい けど
そんな言葉は頭のどこにも無かった
この暗い15年に蓋をしようとした
どうにでもなれと投げやりに
愉快な仲間も いつか抱きたい女も
みんな忘れて漆黒の羽を授かった
変わりたかったけど
たぶんもう戻れない そう思った
◇
喧騒から離れた海岸でエンジンを切る
何も聞こえない 何も見えない 何も感じない
死にたいようで 死にたくない 僕はどうしたいの
ふと思い出す 存在を消したいと泣いた夜のこと
世界は美しいと言うけれど
それほど世の中キレイじゃない
ガードレールに突き刺さったアイツのように
受けた傷も 犯した罪も 荒んだ心も全部棺桶の中へ
この身を包んで燃え続ける青い炎は
何もかもを灰へと変えた
地獄行きの僕に名前も知らない女が声をかけた
冷たくなった手を引かれて月明かりの下へ出る
星が、星があまりにもキレイで心までキレイになりそうだった
波は儚いメロディーを奏でて
潮風は黒くなった肺を洗ってくれた気がした
上を向いて歩いたのはいつぶりだろうか
地獄行きだけど 楽しければそれでいいや
そう思えた
◇
あれから何年経ったろうか
今も僕は何も変わってない
エンジンが壊れたあの夜
オーバーホールした魂は現役で
やっぱりマフラーは泣き叫ぶようで
でも流れる街並みの中で見つけた僕の一番星はにっこりと微笑んでいて
今日もあの娘の下へフルアクセルでサンゴーナナをカッ飛んでいくんだ
もう止まらない止まれない 僕の人生
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