1 骨色の魔法 その3
「やっほぅ。二人とも来てたんだ、仲良くしてた?」
この空気で仲良くしてたように見えるのか? 頭にユニセフ
「お、カルミナ・ブラーナできてたの?
「編曲者本人が目の前にいるからはっきりとは言わないでおきますけれど」と
「はっきり言ってくれた方がましだよ!」意味わからんけど悪口だってことだけはわかる。ていうかさっきまで目の前ではっきり最悪とか言ってましたよね?
「
「なんで
「わたしはそこまで言ってない。わたしが本気になったらあなたがこれまで
「
「こんないやらしい
「いやらしいの意味がすり
「じゃあわたしは帰るから。いやらしい人と同じ部屋にいたくないし、用事も済んだし」
「ちょっと待って
「
「……
通して五分足らずの曲とはいえ、さっきはじめて見てちょっと
はったりではなかった。たしかに
演奏を終えると
「あんだけ
「……あれ、何者なんですか……」
自分でも
「クラシック畑じゃちょっとした有名人だったんだけどね、
「えっと……? プロのピアニストなんですか? めっちゃ
「ううん。いずれプロになるだろうなって言われてはいたけどね。あれだよ、元神童ってやつ。小学生の
「へえ……」
「でもなんでそんなやつがうちみたいな
「まあ、色々あんのよ。色々とね」先生は意味深に
「あんたほんとのほんとに最低だな!」
「でもまあもったいないよね。
「あ、はあ、その」
「カール・オルフの
それっぽい言葉を並べて言い訳する。
「ふうん。難しい方のパートをあたしに
「え、ええ、まあ……
やばい、意図を
「じゃ、
「あの、先生の
「あたしは立って
「はい、だから低音部の方を」
「いちばん難しいのが低音部の左手で次が高音部の右手でしょ? それをあたしが
え? いや、あの?
先生は
「はい1、2、3」
先生はカウントをとって
しかし演奏どころではない。
ドアが開いた。
部屋を出しなに冷たい
「そういういやらしいことするために
「……い、いや、これはちがっ──」
「ちょっとムサオ、立ち上がろうとしないでよ。
「なんでこんな事態でもまだ
「どんなにつらく
「
「誤解じゃなくない? ムサオがいやらしい変態なのは事実でしょ」
「どこがっ」
「女装」
「ああ、いやあのそれは」
事実なので強く否定できないが、しかし。
「やってるのは事実ですけどやりたくてやってるわけではなく見てもらいたいからで、あ、あの、見てもらいたいってのは動画をって意味で」
「だから女装動画を見てもらいたくて女装してんでしょ」
「ち、ちがッ、……ちがわなくもなくもないですけどっ、そういう動機じゃなく
「
「言い方ッ」
これ以上この方向で話を続けていてもいじくられるだけなので
「だいたい学校でその話をしないでくださいよ、バラさないからっていう約束で授業を手伝ってるんじゃないですか。ムサオって呼ぶのもやめてくれって何度も」
「えええー」
先生は不満そうに口を
「ムサオって呼びやすくていいのに。じゃあ他の活用形にする?」
「なんですか活用形って」
「虫けら」
「五段活用かよ。しかもなんのひねりもなく悪口じゃないですか」
「むすっとしてる」
「当たり前だろ! だれのせいですか!」
「無節操」
「ちょっ、なにが? これまで十五年間
「ムソルグスキー」
「だれが
「あれえ、ムソルグスキーは悪口のつもりで言ったんじゃないんだけど、
「え、あっ……そ、そうですよね。失礼な発言でした。ムソルグスキーに
「あたしは『一生女に
「ど直球で悪口じゃねえか! あんたがムソルグスキーに
「どう? あたしの言いっぷりに比べれば
「どんな話のつなぎ方ですか」
「だいたい、仲良くったって、とくに接点ないですよ。クラスはちがうし音楽の授業だってべつべつなんだし」
「あたしっていう接点があるでしょ」と先生は自分の胸を指さした。「弱みを
「こき使ってる当人がよくもまあ平然とそんなこと言えるもんですね……」
あなたたちのためを思って言ってるんだよ、みたいな顔されるの
とはいえ、
あれだけのピアニストに、こんな
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