2 十一月のよく晴れた朝に その1
ネットというのは
とはいえ動画につけられたコメントの三分の一くらいは
ヘッドフォンをかぶって目を閉じ、演奏にだけ集中した。
課題曲はショパンのエチュード『エオリアン・ハープ』。両手の
関連動画に出てくるサムネイルをクリックしまくり、
たいへん
しかも、
なぜ
それとも
*
二日後の放課後、また音楽室で
「なんでうちの高校来たの? 音楽科のある学校行けばよかったのに。プロ目指そうとか考えなかった?」
「そういう
わざと下手に
「いや、無理だろ?」
「……なにが」と
「わざと下手に
うまく言葉を選べず、
「ある程度以上になったら、下手に
うまく表現するのは難しいのだけれど、たとえていうなら、
「あなたのこと、ただの性犯罪者だと思っていたけれど、評価をあらためる」
「そりゃどうも。……どのくらいあらためてもらったのかな」
最初がひどいマイナスだったけどちょいプラスくらいにはなってるだろうか……。
「ただ者ではない性犯罪者」
「変わってねーよ! むしろなんか悪くなってるよ!」
「
「
「ベートーヴェンは《楽聖》だから《楽性犯罪者》というのはどう? 尊くない?」
「もっと他の部分でベートーヴェンになぞらえてほしかった!」
「
「いいかげんそこから
「そういう意味じゃねえよ! 知らん人が外から見てたらまるで
「だいたいあってるじゃない。
たしかにその通りだった。誤解されたくないなら
「たぶん
「目の前でグランドピアノのそれなりの生演奏を
「……え?」
「言っていることわからない? じゃああなたにもわかりやすく性的に言い直すと、
「かえってわからんわ!」
「そうか。
「いやそんな話もしてませんよ? いちいち性的な方に引っぱるのやめてもらえる? ていうか最初の言い方でちゃんとわかったから! たしかに
「きみのピアノはやっぱり大したものだと思う。きみになら金
「あ、あの、金
「そんなのわかってる」
「んぐっ……」
今のは
「
「世界中のだれよりおまえに言われたくねーわ!」
「とにかくわたしは、そんなのじゃないの」
「プロを目指そうとかそんなレベルじゃない。わたしよりも達者に
曲がった黒い鏡の中の自分に問いかける。
いや、と
あれをもっと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます