本性

 娘は1歳。進とM子はケンカした。些細な言い争い、いつものこと、たいてい、M子がだまり、進が翌日笑顔で何もなかったようにふるまい、自然に鎮静化。

この繰り返しであった。

だが、今回は少し違った。

M子は家にいたたまれなくなり、娘を連れて実家に戻った。進とちょっとケンカしたと話した。

母は、

「誰にでも良いところと悪いところはあるものよ。私が別れたのはね、良いところより悪いところ、絶対に許せないって思うところが上回ってしまったからなのよ。すごく好きなところもあるし、実際嫌いにはなれなかった、だから、未だに交流はあるんだけれどね」

と、話し始めた。

M子の父と母は離婚した。でもケンカ別れではない。好きな面以上に許せない面が見えた。それを見ないためには別れるのが一番と二人は考えたのだ。

再び母は言った。

「進ちゃんの良いところと嫌なところを見て、どうしても許せない悪いところが出てきて、良いところが見えなくなってしまったら、別れることを考えるのもありよ。」

母は聞いた

「進ちゃん、ちゃんと仕事してる?」

M子は

「うん」」

と、答えた。

この時、気づいてあげていれば、と母は後悔している。

進の暴力がすでに始まっていたこと、仕事もせずダラダラ家にいてM子を家政婦のようにこき使っていたことを。


M子は実家では友達に会いに行ったり、楽しい時間を過ごした。

この時も進は毎日電話やラインで、男と会っていないかと疑い、寂しいから早く帰ってきてくれとせがんでいた。

そして、数日後、M子たちは帰って行った。


 娘は2歳。歩き回り、言葉もだいぶ話すようになってきた。

そんなある日、M子が突然実家に帰ってきた。

肌寒い3月6日のこと。

娘は薄い服一枚、M子はパジャマ姿。

娘をくるむようにコートがかけられていた。


「こんな時間にどうしたん、またケンカしたん?」

母は進にラインで、

「また、ケンカしたの?ケンカしすぎでしょ。しばらくこっちにいて話聞いて、落ち着いたら帰らせるわね」と告げた。

この後、母は激怒する。

なぜなら、M子が、パジャマを脱ぐとあちこちに青く大きなあざがひろがっていたからだ。

頭にはこぶができていたからだ。

首には何かで押し付けられたような、絞められたような跡が見えたからだ。

母は進にラインした。

「M子が落ち着いたら変えるように言うつもりだっだけれど、進ちゃん暴力ふるってるってわかったからには返せないわ!頭にはこぶできてるし、手足は傷だらけで腫れてるし、よくそれで大切にしてるみたいなこと言えたね。

しかも、M子を法的手段で訴えるとか言ったらしいよね。」

進の返事

「すみません。つい、かぁーっとなった時に自分でも何言ってるかわかんなくて、気をつけるようにしてたけど自分でも抑えられなくて この性格を治すように努力するとしか言えないです。ごめんなさい。」

母の返事

「かぁーっとなったら殴っていいわけ?ご近所さんも心配して飛んできたっていうじゃない。それ、相当ひどいってことでしょ。

親としてはこんなの許せるわけないってことだけは覚えておいて。どんなけがしてるか写真添付しておくから反省しなさい。」

そして、母はたくさん撮った写真の中の数枚を進に送った。

進の返事

「殴っていいわけないです。ずっと性格治そうと思っても変わってなくて、でも変えないといけなくて、友達にもM子に暴力したこと全部話して俺自身変わらないとどうしようもないって怒られて。

もし、今度あったらもう自分自身で抑えれないと思うので、M子にも娘にも俺と二度と関わらせません。本当にごめんなさい。」

(このラインのやりとりは、ほとんど事実そのままの記載のため、へんな言い回しや言葉使いがあるかもしれません。)

これから数日後、進はM子の実家に行くとM子に連絡してきた。

当然、呆れたのは母、

関わらないと自分で言っておきながら数日後には会いに来るというのですから。

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このDV夫と果たして別れることができるのか @sinjitukiroku

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