第45話:エステル、本拠地殴り込みへ‥
私は一度ギルドに戻り、グローザの本拠地を調べていた。
以前からこのカンパニーは悪い噂が絶えなかった。
例えば、違法奴隷や殺人、汚れ仕事を請け負うカンパニーと言う噂だ。
一度調査を行ったが、何者かの圧力で調査が打ち切りとなった。
裏に大物が居る‥それは間違いないとみている。
今回の話も実は気になっていた事がある。
リヒターに何故、決闘を挑んだかだ。
基本的に全ての行動は必ず「誰か」が得をする。
国に有る不都合もそうだ、パラディース王国では賭博は禁止だ。
だが‥暗黙の了解として公に存在している。
ここで誰が一番得をするのか?
調べれば分かる事だ、何処の誰が、これを推しているのかが。
その得をする人物を探す事で誰が黒幕なのかへの第一歩となる。
だが、今回は全く見当がつかなかった。
彼らの住む世界と、リヒターの住む世界はハッキリ言って正反対だ。
クライアント同士を食う訳でもないし、クライアントから煙たがられる訳でもない。
リヒターが受ける仕事は基本的に住人が困っている事のみだ。
貴族の依頼は全く受けてこなかった‥
何故だ?別の目的があるのでは‥? と私は睨んだ。
リヒターを消したい誰かが居るのであれば、暗殺をする方が早い。
しかし、それをしなかった。
考えていても答えは出ない、私は住所を調べ直ぐにグローザの拠点へと向かった。
奴の拠点は街から離れた豪華な屋敷だった。
その大きさを見て1人で来たのは失敗だったなと感じたが、もう遅い。
私はゆっくりと鉄の門を開けた。
キィー
屋敷の庭にはボコボコと穴のある芝生と金色の噴水があった。
芝生が何故穴だらけなのかと言う疑問もあるが‥
趣味の悪い噴水‥金持ちは何故こういう所に金をかけるのかが理解出来ない、無駄な使い方だと思う。
しかし‥妙だ、静かなのだ、見張りが誰も居ないのだ。
本来この手の奴は護衛を置く筈なのだが‥
私は警戒しつつ、屋敷のドアを開けた。
すると目の前に有ったのは大量の死体だった。
私はその死体を確認した。
首筋を噛まれ、絶命している死体、腸をぶちまけた死体‥言える事は、皆死んでいて苦悶の表情をしている事だ。
何が遭ったのか分からないが、悲惨な状況だった。
すると後ろから足音が聞こえ振り向くと、死んだ筈の男が立ち上がり、私へ近づこうとしている。
青白い顔、死んだはずの男が動く‥この瞬間、私は有る事が脳裏に過った。
あの後味の悪かった依頼‥ヘッケラー村の猟奇事件だ。
私は死体が動き出すと思い、ホールに居る全ての死体を氷漬けにした。
こいつらが外へ出てしまったら最後、街は崩壊してしまう。
リヒターの両親の事も気になるが、これも問題だ‥
私は屋敷内を見て回ったが、酷い有様だった。
壁一面に血、床一面に血、天井も血、全てが血だらけで、死体が転がっている。
一体誰がこんな事をしたのか‥まだ犯人はこの屋敷に居るのか‥
そんな緊張感を持ちながら、一部屋ずつ調べて行った。
だが、何も見つからなかった、全てが死体だった。
こうして何も得る事無く、最後に庭を見て回っていると、小さな小屋が有った。
私はその小屋へ入ると、なんと隠し階段が有ったのだ。
ここに誰かが居る、そう思い私は一歩ずつ下りて行った。
下りた先は拷問室だった。
冷たく、嫌な臭いがする空間だ。
ムガベはきっと此処で‥そしてリヒターの両親も此処に‥
嫌な事を考えてしまい、私は急いで一部屋ずつ見て回ったが誰も居なかった。
そして‥最後の部屋へと行きつきドアを開けると、3人の男女が居た。
2人の男女は壁に貼り付けられ、痛々しい姿だった。
切り傷、痣、血、折れた腕や足‥人間がする事じゃないと思った程、酷い有様だ。
そして‥もう一人の女、こいつは何者か分からないが、異様な雰囲気を出している。
「‥私はエステル・スノーだ、ギルドの権限で調査に来ている。お前は誰だ」
彼女はゆっくりと私に振り向きこう言った。
その女は、赤い髪が印象的だが‥顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
「‥貴方、リヒターに近づく雌犬ね?」
リヒターを知っている‥?
「どういう意味だ!お前が殺したのか!」
彼女は苛立ったのか、壁を殴り拳から血が流れている。
「黙りなさい、私は機嫌が悪いの‥最後の言葉よ、リヒターに伝えて「幸せに‥なってね」と叔母様が言ってたと‥」
そう言って、彼女は部屋を後にした。
張り付けられた男女を見ると、死んでいた‥
きっとこの二人が‥リヒターの両親なのだろう‥
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