第32話:必要ない、この現場が語ってくれる

僕達は、最初に噛まれた男性の家へと入った。

家に入ると、とても煩雑していた。

食器が床に散乱し、血が壁や床に付いていたり、まるで強盗傷害事件が遭ったのかと思う位に酷い家だった。

そして気が付いた事も有った、異臭が部屋中にするのだ。

余りの臭さに吐き気を催す程だった…


「レイ、何の臭いですかね…」


「何かが腐ったかの様な臭いですね…でも、何処からこんな臭いが…?」


僕達は取り合えず臭いに耐えながら、家中を見て回った。

この家は1階建てで部屋が2つ、キッチン、トイレ、風呂場がある一般的な家だ。寝室と思われる部屋は大きな窓が割れていて、ベッドに大量の乾いた血が付いていた。血の飛び方を見ると、首筋辺りから血が飛び散った様に思えた。

次の部屋は大量の本が置いてあり書斎の様だ、この部屋は綺麗で、触られた形跡すらない。

キッチンは、荒らされ放題で、食器や調理器具等が散乱している、まるで暴れたかのように。

トイレと風呂場は有ら荒れた形跡は無かった。


リビングへ戻ると、レイが気になる事を言った。


「先ほどから気になったのですが、魔力が混ざった血とそうでない血の二種類がありますね」


「魔力が混ざった血?」


「はい、以前人間は精霊と契約する事で魔法が使えると言いましたよね?精霊は人間の持つ魔力で属性や相性を知り、それを元に契約をするのですが…それが無いのです、何故か…本来有り得ない事なのですが…」


「つまり…人間の血と人間以外の血があるって事?」


「いえ…はっきり言いますと…魔力の無い人間の血があるという事です」


魔力の無い人間の血…どういう事だろう?

レイが言う事は、人間は魔力を持っている、その魔力が無い人間が存在しているという事なのだろうか?

気になる事だ、帰ったらベルベット達にも聞いてみよう。


「そうなんだ、一旦これは帰ってから話をしよう。最後に物置を見て帰ろう」


「そうですね、このままだとお姉さんの体まで臭くなりそうです…」


こうして僕達は一旦本部へと戻った、既にベルベットとエステルが帰っており、腕を組んでいた。

僕達が戻って来るのを見て、ベルベットは迎えてくれた。


「おかえり、リヒター、どうだった?」


「おかしな点が1点見つかった位かな…」


「そうか、我々も面白い事が聞けたぞ」


「では、一度情報を整理しましょう。」


こうして僕達はレイが用意した紅茶を飲みながら情報交換をした。

聞き取りをしていたベルベット達が得た情報は有益な物が殆ど無かったが、一つだけ気になる事があると。


1、2週間前から森で動物の死骸が増えているのだが、動物やモンスターでは無く、何か別の物が喰らった様な形跡があって気味が悪い


この件に関係があるかは分からないが、明日調べるとの事。


村医者に噛まれた男性の事を聞くと、村長が言っていた通りの事を言っていた…だが、村医者の体調が悪そうで、咳や高熱を出しているそうだ。


この事を聞き、後でレイに魔法で治療をお願いした。


次に僕達の気になった点を話した。

気になった事は、血に魔力がある物と無い物がある点。

現場自体は非常に荒らされていて、何が起きたのかが分からない位だった。

部屋も異臭がし、何の臭いか分からない、ただ…腐ったような臭いだった。

そして、ベッドには首から血が飛び散った様な形跡があり、何者かがベッドで襲った可能性があると伝えた。


それを聞くとエステルが質問をした。


「気になったのですが、魔力が無い血とはどういう人が持っているのでしょうか?」


ベルベットは即座に答えた。


「死人だ、人間は死ぬと魔力を失うんだ」


「では、死人が動く事は有り得るのでしょうか?」


ベルベットは少し考え、答えた。


「普通は無いし魔法でも無理だろう、だが…悪魔には可能だ」


「まさか!ネクロマンシー!!」


悪魔と聞き、レイは思い出したかの様に早口で話し出した。


「昔、父から聞きました…悪魔には死者を操る者をネクロマンシーと呼び、死者の軍団で戦い、以前精霊と戦ったと聞きました…」


この後少し話を続けたが、推測の域を出ないと判断し、皆で晩御飯の買い出しの序に村医者の元へと向かう事にした。


村医者の居るのは村の中心に位置する診療所だ。

僕達はノックをしたが、反応がない。

再度強めにノックをすると、診療所の中からガシャーン!と何かを落とす音が聞こえた。

不審に思い、僕達はドアを開け、診療所の中へと入った…

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