第31話:あと、一つだけ良いですか?
様々な困難(僕だけ)を経て、僕達はヘッケラー村へと着いた。
この村は元々鉱山の採掘で栄えていた村なのだが、しかし、年と共に若者は街へ行き採掘場は閉鎖されると、村に住む人口は急激に減り今では静かな村だ。
村に着くと気になったのは、誰一人として、外に出ていない事だ。
いくら活気のない村だったとしても、人が一人も歩いていないのは不自然だ。
不気味な雰囲気を感じながら、僕達は村の内部へと歩く。
村は木材で作られた家、整地されてない道、手入れされていない公園や長い年月を経たボロボロの看板…死にかけている村…が僕の印象だった。
依頼書に示された住所へ行くと、村の中で一番大きな家が村長の家の様だ。
僕達はドアをノックすると、歳を取り、腰が曲がっているお婆さんがドアを開けてくれた。
「貴方方は何方様ですかな?」
「僕達は、フリーダムコールのリヒターです、依頼についてお話をお聞きしたく村長さんにお会いできないでしょうか」
するとお婆さんは、僕達を家へと招き入れ応接間へと招いてくれた。
僕達は椅子に座り、お婆さんが出してくれたハーブティーを頂いた。
ミントの爽やかな匂いが鼻を刺激し、頭が冴える気がする。
そして、杖を持つおじいさんが応接間へと来ると、自己紹介をした。
「この度は私達の依頼を受けてくれまして有難う御座います、私はこの村の村長を務めるコロンボ・ケーンと申します、皆様お待ちしておりました」
「ご丁寧に有難う御座います、早速ですが状況について教えて抱けないでしょうか」
こうして村長のコロンボさんの今回の事について詳しい話を聞いた。
最初に起きたのは、5日前の夜だそうだ。
村に住む3人家族の父親が家に帰ると妻がフラフラと立っていたそうだ、心配になり彼女に声を掛けると突然奇声を発しながら腕に噛み付いてきたそうだ。
驚いた彼は噛み付かれながらも、何とか家から脱出し、治療を受けに村医者の元へと行った。
村医者が言うには、妻が噛み付いてきたんだ、ヒステリーで噛み付くなんて信じらねぇ、浮気した事まだ怒ってるのかとしっかりと受け答えが出来ていたそうだが…
治療を終えると、急に大量の汗を流し、顔色も悪い為一日ベッドで休ませたそうだ。
翌日、噛まれた男性は失踪し、村人達で村中を探したのだが見つからない。
彼の家を見に行くと、所々に血が床にあるが、彼の妻と子供の姿は無かった。
不審に思い、王国騎士団に調査依頼を出したのだが…彼らから門前払いを受け、ギルドで僕達の話を聞き、フリーダムコールへ依頼を出したという事だ。
「それが原因で村には人1人出ていなかったのですね…」
「そうなんです、此処に住むのは老人や病弱な人達ばかりで怖がって外に出れないのです…ですので、事件の調査だけでもして貰って、それを騎士団にと考えてまして…」
「はい、分かりました。ではまずは聞き取り等をしますので、大きな部屋等はこの村に有りますでしょうか?そこを本部として置き、事に当たろうと考えてます」
「でしたら、村の外れに空いている家が有るので、そこを自由にお使いください」
「ありがとうございます、あと、一つだけ良いですか?」
「何でしょうか?」
「過去に似たような事とか、伝承とかありますか?」
「いえ…特には…黒い森の丘には魔女が出るという噂位ですかね…」
「ありがとうございます、それでは空き家を使わせてもらいます」
そう言って、村長さんが言う空き家へと向かった。
村の外れにある家は、生活用具が全て揃っていたが誰も使った形跡が無かった。
不思議な家だ、誰かが住む予定だったのだろうか。
僕は魔法で掃除をし、皆を集め今回の事件をどう調べるかを話し合った。
「では、皆、概要は聞いた通りなんだけど…聞き込みとか調べたり色々とやる事が有るので、一旦メンバーを2つに分けようと考えてます」
彼女達は僕が真剣なのを察してか、メンバー分けに文句を言わなかった。
こういう協調性が有るから…憎めない。
「今回は、聞き込み班をエステルとベルベットにします、人選理由は、人当たりの良いエステルが聴き、ベルベットの持つ冷静さで相手が嘘をついてるかどうかを判断して下さい」
「分かった、任せろリヒター」
「了解です、リヒター」
そう言うと、彼女達は聞き込み班は外へと出て行った。
さて…僕とレイはと言うと…
「お姉さんは嬉しいわ、リヒター君が私を選んでくれるなんて!」
「ええ、僕達は現場へ行きましょう。レイは観察力が高いと思ったので、小さな違和感をも逃さないと思いましたので選びました、それでは行きましょう」
「うふふ、そんな遠まわしに『気が利く』なんて言わなくてもお姉さん、何でもしてあげ…」
「はいはい、行きますよ」
そう言って、彼女と共に最初に噛まれた男性の家へと向かった。
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