第2章:冬休みはギルドで働こう

第21話:冬休みだ、働こう⇒先輩(笑)に絡まれる

遂に始まった冬休み…労働の喜びを知る期間だ…

僕達は重い足と希望を胸に市街地にあるパラディース王国首都ギルドへ向かった。


外観はレンガで作られた大きな建物で、看板に「ギルド」と書かれている。

そんなに特徴的ではないが、この辺りは色んな人達が居る。

中へ入ると、高そうな装備を着ている人、グループで席に座って何か話している人達、壁に寄り掛かってるだけの人、ガラの悪そうな人達が酒を飲んでいたり…様々だ。男性陣の殆どは此方を見ている…


男達の目線は…当然ベルベットとレイだ。

いやらしい目つきで彼女達を見ているのが何となく分かる、確かに彼女達は魅力的なのは裸をー…以下略

僕達はカウンターへと進み、綺麗に髪を束ねている受付嬢へ話しかけた。


「いらっしゃいませ、本日はどの様なご用件でしょうか?」

「ギルドに登録しに来ました」

「はい、畏まりました、それでは記入用紙にご記入下さい。」


貰った用紙に僕達3人はスラスラと記入し、彼女に渡した。


「はい、確認しますね…」


彼女は書かれている内容を確認した。


「はい、皆さんの記入内容に不備は有りません、それでは最後にギルドカードを授与しますので、こちらの水晶に手を当てて下さい。」


そう言って彼女はカウンターにある水晶玉を手で示した。

この水晶玉は、得意な属性、年齢、体重、魔力等の様々な情報を採取し、それを「レベル」という数値で出してくれる、凄い物なんだ、どうやって作ったのかが凄く気になるけど、企業秘密だそうだ…で、この「レベル」は最高が999で、最低が1だ。

そしてもう一つレベルとは別に「ランク」が存在する。

これは一定数依頼をこなしていくとランクが上がる権利が貰えるのだが、指定レベルに達していないと幾ら依頼を受けても上がらないのだ。


「では、リヒターさん、お願いします」


僕は頷き、水晶玉に手を乗せ、一瞬発光し、手を離すと数値が表示された。


「レベル200かー…微妙だな…」


次にベルベットとレイなのだが…


「測定不能」


と出た、壊れているのか、それとも999を突破しているのか…どちらなのか分からないが、兎も角凄い。

彼女達は涼しい顔をしている、精霊だし人間なんかと基準にしたら、化け物レベル間違いなし…

それを見た受付嬢は首を傾げながら見ている。


レベルチェックが終わり、受付嬢は発行されたギルドカード手に取ると見て驚いている。


「あの…お三方、属性を…聞いても良いでしょうか?」

「闇だ」

「光です」

「光と闇です」

「すみませんが、上司にご報告させていただきたいので席に座ってお待ちください…!」


そう言って彼女はカウンターを後にし、ギルドの奥へと消えていた…


テーブルで待っているのも暇で、僕は依頼ボードを見に行った。

依頼ボードには、ランク毎に分けられ、様々な依頼表が張ってあった。

新人は大体Fランクから始めるので、Fランクで高い報酬の物を探していると、後ろから男性から声を掛けられた。

振り返ると、ガラと頭が悪そうな二人の男性が立っている。


「おい、新人。ここではな、先輩に挨拶するのがルールなんだ」

「そうなんですか?じゃあ…こんにちは」

「…ち、で、先輩の言う事は絶対だ、分かったな?」

「へぇ…そうなんですね?」


何故こうも絡まれるのだろう…極力騒ぎにならない様に穏便にしよう。

頭にバンダナを付けている先輩Aは、僕の首に腕を乗っけて、馴れ馴れしく話す。


「おい、お前の周りに居た女二人、俺達に紹介してくれよ?」


ニヤニヤした笑い方が嫌悪感を巻きたてるが、我慢…

すると顔が細い先輩Bは僕の正面に立つと、低い声で脅しているかの様に言う


「先輩の言う事は絶対だ。逆らうと…痛い目に遭うぜ?良いのか?俺達はレベルが高いんだ、お前みたいなヒヨッコじゃ勝てねぇぞ?」


先輩Aは僕の脇腹を強く突き、急かしている。


「おら、早くしろよ。俺達があの子達を可愛がってやるからよ?」

「すみません、それは出来ません…」


否定された事に腹が立ったのか、怒りを顔に表しながら威嚇してくる。


「へぇ…なんでだよ?先輩の怖さを知らないからか?ああ?」

「仕方ねぇな…じゃあ…!」


そう言って、僕は蹴り飛ばされた。

突然の事で、予想できなかったけど…そんなに痛くはなかった。

僕が穏便に済ませたかった理由は…あーあ、もう遅い…先輩、短い間でしたが、さよならです…そう心の中で別れの挨拶をしておいた…

何故なら…僕の周りに立つ二人の女性から凄いプレッシャーを感じる…

辺り一面が冷たく、ピリピリとした空気となり、彼女達二人は肩を動かしたり指を鳴らしている…


「ほぉ…私の目の前でリヒターを蹴り飛ばすとは…どうやって苦しめてやろうか…」

「この様な悪は粛清すべきですね…さぁ、地獄に返してあげましょう…」


そう、彼女二人がキレているのだ。

彼女達がキレる時、相手は確実にタダでは済まない…先輩、強く生きて下さい…!

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