第9話:一度壊れた関係は二度と戻らない

長い学校の授業から解放された僕達は真っすぐ家に向かっていた。

僕は背を伸ばし、座って居た事で凝った体をほぐしていた。


「あー…長い間座るのはやっぱり疲れる…」

「ふ、そうなのか?なら帰ってマッサージをしてやろう」

「あ、それは良いですね、お姉さんもやっちゃうよ」

「い、いや良いよ、平気だから!」


すると家の前に居る見知った顔の女が立っていた…

幼馴染のウォルスだ…彼女の顔を見た事で、僕の気分は最悪になった。


「…ねぇ、少し話せない?」

「…何を?」

「ちょっと…あんたに言いたい事が…」


ウォルスはいつになく静かだ…おかしい…何か企んでるのでは?と僕は勘繰った。

レイは僕が疑っている事を感じたのか、代わりに話をしてくれた。


「ねぇ、私のリヒター君に何の用?貴方、彼を虐めてたんだよね?」

「それは…」

「もしかして…彼が魔法が使える様になったからまた近づいてきたのかな?」

「それは違う!」


そう言ってウォルスは僕の腕を掴み、連れて行こうとする

彼女の力は何時になく強く、腕に彼女の爪が食い込む。


「い、痛いよ!止めてよ」

「お願い…お願いだから来て!」


彼女はそう言うと泣きながらお願いしてくる…

でも、僕は行きたくない…何されるか分からないから…

彼女の掴む腕を無理矢理引き剥がす。


「僕は行かないよ、用があるならここでお願いします」

「分かったわ…」


彼女は涙でぐちゃぐちゃになった顔で、ぽつぽつと話し出した。


「今まで酷い扱いをしてごめんなさい…私…リヒターにどう接して良いか分からなくて…あんな酷い事を…私…前からずっと…貴方が好きだったの…」


この言葉に僕は絶句した。

謝る事もそうだが…好きだった?好きだからあんな酷い事をするの?

その彼女の一言で、僕が今までされてきた事がフラッシュバックする。

泳げないのに川に入れさせられたり、モンスターの居る道でわざと一人にさせたり、魔法が使えない事をずっと馬鹿にしたり、恥ずかしい、屑とか…色々言われた過去だ。

僕は急に気持ちが悪くなり吐き出してしまった…


レイは吐き出す僕の姿を見て、温かい手で背中を摩り、魔法をかけて僕を落ち着かせてくれる…


「大丈夫だよ、リヒター君、もう大丈夫、私達がずっと守ってあげるからね?」


「好きだった?好きだから虐める?お前はどんだけ歪んでいるんだ?好きな奴を虐めてここまで苦しめて、今も泣きながら吐くリヒターをこうしたのはお前だと言う自覚があるのか?」


ベルベットは冷静に怒っている…言われたウォルスは何も言わない。


「お前の様な歪んだ奴が彼を好きになる資格は無い。リヒターの心の傷は永遠に残るんだ…!私達の前から消えろ!私の気分が変わらない内にな!」


そう言われたウォルスは頭を下げて、何処かへ行った…

ベルベットはまだ怒りを抑えられない様で壁にパンチをした。


「ベルベット…ありがとう、ごめんね、僕が情けないばかりに…」

「…気にするなリヒター、お前は私達が守る」

「そうよー?私達がリヒター君をしっかり守るからね!」


彼女達の優しい言葉が温かく感じる。凄く嬉しい。

今まで…誰も助けてくれなかったのに、彼女達は助けてくれる…


「ありがとう、ベルベットとレイ」

「ふむ…では褒美を要求しよう」

「そうね~言葉と態度で示してもらいましょう」


ん…?何か嫌な予感がするぞ…?

僕の予感は的中した。


「リヒター、一緒に風呂に入るぞ」

「あ、それ良いね!さんせーい!お姉さん楽しみ!」

「それはちょっと…」

「拒否権は無い、良いな?」

「そうよ~誠意を態度で見せて貰いたいわね~」


僕は勝てません、この二人には勝てないよ…

この晩、一緒にお風呂に入ったが彼女達に体中を…以下略

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