第4話 父ちゃんの仕事場2

松山は大声であちらこちらのスタッフを怒鳴り散らす。

かと思えば、一部から悲鳴のような声が聞こえてきたり。


「松山さん!大変です!入口狭すぎて筐体入りません!」

「バカか!ドア外せ!」


ヒロシもどこに立っていたらいいのか、ウロウロしながら邪魔にならないように、この戦場のような会場内に留まっていた。


高島平はというと、設営を手伝ったり、スタッフに声をかけて挨拶をしたり、差し入れもしていた。


父さん、あんなこともできるんだな。

・・・家でもしてくれたらいいんだけど。


そうして、7~8時間は経過しただろうか、会場はステージに大型モニター、客席、立派な音響設備、照明設備。朝の殺風景さが嘘のような、キラキラとしたe-sports会場になっていた。


「すげえ・・・。」

思わず声が零れた。


「だろー?設営してくれる人、運営してくれる人、色んな人がいて、成り立ってるんだ。」

「プロゲーマーだけじゃないんだね。」

「そらそうだよ、プロゲーマーなんてe-sportsの中じゃチンケな存在だよ、俺はそう思ってる。みんながいて、俺達がいるからな。」


高島平はなぜか少しどや顔だった。


「ヒロシ、眠くないか?」

「大丈夫だよ。」

「よっしゃ、じゃあリハーサル見ていこうぜ。」

「リハーサル?これから?」

「設営が終わったら、リハーサル。夜も昼もないんだよ、この仕事は。」


そう言いながら、高島平はヒロシの手を引いた。

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