第11話「超遠距離狙撃!」


 ナナミは駆けていた。


 エルメスの追撃・・・・・・・を振り切り、一人───荒野を走る抜ける。



 そして、小高い丘に登って、別れてしまった最愛の幼馴染───猛の姿を確認しようと先を見渡したその瞬間───!!


「そんな?!」


 彼女の中で全身の血が沸騰する様な怒りが沸き起こった。



 た……、

「猛ぅぅうう!!」


 巨人オーガに襲われている猛を見て、怒りに我を忘れそうになったナナミ。


「猛! 猛! 猛!!」


 ああああああああああああああああああああああああ!!


「ああああああああああああああああ!!」


 騎士団が壊滅しているとか、どうでもいい。

 エルメスが裏切り者だったとかも、どうでもいい。


 そんなことは全部、どうでもいい!!


「どうでもいいよぉぉぉおおおお!!」


 どうでもよくないことは、たった一つ──────!!



「───猛になにすんのよぉぉぉおお!!」



 ティリン♪


 ナナミはAK-47とRPG-7を放り捨てると、その場に『SHOP』を呼び出し、兵器購入の項目を選択。


 そして、この距離で猛を救うことのできる装備を選択する。


 中空に浮かんだステータス画面。


 そこには、

 強力極まりない『RPG-7』を生み出した国の装備がズラリと並ぶが、実績不足でほとんどがロックされたまま。

 その大半がグレーアウトしている。


 だけど、あった。

 たった一つあった。


 あのバカでかい巨人オーガをぶっ飛ばしうる、遠距離から敵を穿つロシアの鋭き牙が──────。


 あった!

 あった!!


「あったよ!……シモノフPTRS1941対戦車ライフル───!!」



 そう、

 これは、セミオートマチック対戦車ライフル───……口径14.5mmの大口径の小型大砲だ!


「これなら……!」


 急いでSPを叩き込んで兵器をアンロックすると、『SHOP』から迷わず購入する。


 ブゥン!


 そして、ナナミは光り輝くそれ・・が中空に現れたのをみるや、全貌を確認するまでもなく引っ手繰ひったくるようにして保持!


「お、重ッ」


 だが、ナナミは手慣れた動きで、二脚を展開すると、ズシン!! と重々しく地面に委託した。


 そこに、銃と合わせて購入した5発入り弾挿子クリップを取り出すと、ガリガリガリ! と、薬室に詰め込んでいく。


「装弾よしッ!」


 ───ガシャコ!!


「初弾装填!」


 脇についたコッキングレバーを引いて初弾を装填───!!


 ジャキン!!


「……ま、間に合ってッッ!」


 ナナミはバカみたにブチ長いライフルに取り付き、その大雑把な照準を覗き込む。

 照星と照門をあわせ、オーガを照準に収めた。


 ……小さな目標を狙撃するのは無理。

 猛を切り刻もうとする、あの「&$#ピー」野郎を直接撃つのは無理だけど───。


 ジャイアントオーガなら狙撃できる!!


「デッカけりゃ、いいってもんじゃないんだよぉッ!」


 来るであろう、凄まじい衝撃と発射音に備えてナナミは腹に力を入れる。



 そして、照準し───────撃つッッ!


 すぅぅぅ…………フッ!

「猛ぅぅぅぅう!!」

 引き金を──────……カキン!



 ───ズッッッッドバァァァァァアアン!



 発射エネルギーが銃口をブレさせ、先端についたマズルブレーキから炎が十字を描いて吹き出し視界を焼く。


 そして、


 ギャンッッッッッ──────と、真っ赤な線が一筋、戦場を疾駆する!!

「───ッ!」

 銃口からは硝煙が噴き出し、ナナミの制服パタパタとはためかせ、スカートがフワリとまくれ上がった。


 その下の、子供っぽい下着が晒されるも、ナナミは直す間もなく対戦車ライフルで狙う!


「いっけぇっぇぇぇぇぇええええ!」


 …………ボンッ!!


 初弾命中! ヘッドショット!

 敵の動きが止まった──────!


 これが示威型の狙撃!

 狙われていると分かって、なお動けるかなぁ?


 そして、

 動きの止まったデカい的など────!!

「次ぃ!!」

 案山子かかしと同じだぁぁああ!!


 5連発のセミオートで、戦車を穿つ14.5mmの銃弾がジャイアントオーガを指向するッッ!!

 体ごと向きを変えてオーガを狙う!


 そして、


 撃つ!!


 打つ!!


 討つ!!


 一体たりとも逃すものかッッ!!


「照準よし! フゥッ───」


 ───ズッッッッドバァァァァアアン!!


「次ぃ! たりゃぁぁぁあああああ!!」

 

 ズッッッッドバァァァァァアアアン!!


「もう一丁! うりゃぁぁぁああああ!!」


 ズッッッッドバァァァァァアアアン!!


 連射、連射、連射!!


 ボンッボンッボン!!!


 視線の先でジャイアントオーガが次々と吹き飛ばされていく。


「どう?! 見たッ?!」

 見てる、猛!?


 これが対戦車ライフルだよ!

 14.5mm弾のパワーは伊達ではないんだからね!!


 そうとも。

 この対戦車ライフルは、軍用装甲の30mm鋼板すら貫通できる威力があるのだ。


 生物なんぞ、たとえ分厚い皮膚や筋肉があろうともこのパワーの前にはただの肉でしかない!


「あと、一匹───!!」


 騎士団に襲い掛かっているジャイアントオーガのことなど知らないッッ!



 ───猛を襲う奴だけ・・・・・・・が私の目標!



 ふと…………。

 照準ごしにジャイアントオーガとナナミの目が合った。


 デカいだけあって、視力も人並み以上。

 その分、色々スケールが違うのだろう。


 身長は人の3倍。

 視界も広く、視力もそれに準じるらしい。

 だから、ナナミを見つけ──────そして、彼女の殺気に触れ…………。



 ───奴は恐怖した。



「ふふ…………。戦場で恐怖したら負けだよ♪ 怖がるのも、怒るのも、死んじゃうのも……───生き残ってからにしないとねッ♪」



 じゃないと──────死んじゃうよ?



「すぅッ!──ふぅぅぅー…………!」


 ナナミは息を素早く吸って、細く細く吐き出す。

 そして、照準のブレを押さえると───撃った。



 ───バァァァァァアアアン!



 銃口から上下に十字状に伸びる発砲炎!

 沸き立つ大地の塵!

 視界を隠す様に吹き出す硝煙!


 そして、絶大な威力を誇る14.5mm弾!!


「いっけぇぇぇぇえええ!!」


 その先に、真っ赤に燃える火箸の様なものが見えた気がした。

 

 だけど、それは気のせいだろう。

 だって、対戦車ライフルだよ?



 その初速は、音速を越えるッッ!!


 悠長に狙撃の結果を見守ると思ったら大間違いだ!!


 戦果の拡張、敵の追撃は戦術の基本!


「───狙撃が戦場を支配したなら、次は殲滅戦ッッ! すぐ行くからね、猛ぅ!」


 ドッパァァァン!


 と、ジャイアントオーガの頭が弾け飛んだのを見届けることなく、ナナミは立ち上がる。


 デカすぎる対戦車ライフルを放置すると、投げ捨てたPRG-7を肩に背負い、腰だめにAK-47保持!


 ティリン♪

 『SHOP』呼び出し。


「あとは。これと、これと、これも!」


 ナナミは購入できるだけの装備を次々にアンロック。

 まだまだ買えないものも多いけど、今買える必要なものはたっぷり購入!


 戦場は備えのあるものが勝利する。

 ないなら、ないで工夫する。


 そして、駆け抜けるッッッッッッ!!


 弾倉をたっぷりジャケットにいれた女子高生が、AK-47と共に丘を駆け下りるッッ。



「ターーーーーーケーーーーーールぅぅぅぅううーーーーー!!」




 PRG-7を背負った少女が地獄の戦場に突撃するッッ!

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