鉛のようにおもい

カッターナイフでえんぴつを削る。鈍い色を放つ刃が食い込み、身をすり減らす様を自分と重ね、その度にしとしと募る倦怠感を自覚する。男が文字をしたため始めて幾年月。胸やけに似た不快感はやがて麻薬に変わり、肺から腕へ、腕から指先へと伝わっていく。


乾いた音を立てながら、命を削りながら、ときに滑らかに、ときに遊ぶように、一センチにも満たない部屋のなか、優雅に線をつないでいく。タッタッタと踊る彼らと話をしている間は、男の胸に夢が広がる唯一の時。


そしてまた、日が暮れた窓に写る我が身を振りかえる。えんぴつと同じだと。


何のために書き続ける。


錆びついた身はほろほろと霧散する。


いつか誰かの肺に届く。

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