星間共通歴833年12月19日 記述者:マーサ・ハビシャム

 ナヴィちゃんと同じで、私も船長の所へ何を書いたらいいのか聞きに行きました。

 私はうちのひとと違って学がないから、思うことをそのまま字にすることしかできません。

 それでもよいかとたずねたら、かまわないということなので、そのまま書かせてもらいます。


 クリスマスが近づいたので、みなさんにパーティ用の食事のことについて聞きに行きました。

 あんがいみんな、クリスマスのあるところの出身らしく、ケーキと大振りの肉料理さえきっちり用意してあれば問題はなさそうです。

 ただ隊長は、「ザッハトルテがいい」と力を込めてました。それも重い、ずっしりしたものがよいようです。

 船長は「ヘルさんがいいなら」といつもの調子です。

 ナヴィちゃんは「このあいだのドライフルーツのつまったのがいい」ということですし、フランは「できればブッシュドノエルがいいわ」ということでしたが。

 まあ全部作ればいいことですね。大したことではありませんです。

 しかしボマーがリクエストしたのが、八宝飯だったのには驚きました。

 ボマーとアリの二人だけが、クリスマスのあるところの出ではありません。

 まあボマーは「ニューイヤーも近いし、だったらそっちと一緒でいーよー」ということで、お菓子をリクエストしてくれたわけです。

 どうもその上に爆竹を取り付けるということですが、いったいあの子の出身はどこなんでしょう。顔はラテン系のくせに。

 それにしてもドクターはどうして果物しかだめなのでしょう。

 フルーツ・デコレーションを作る予定なのですが、せめてサンデーやパフェにできたら、といつも思います。

 うちのひとが「ああいうものじゃから」と言いますからまあいいですが。王子さんとみっちゃんは「皆の習慣に合わせる」ということです。

 ちなみに私たちの故郷では、やはりケーキはスポンジケーキにいちごと生クリームでデコレーション、その上にチョコレートで絵を描いたものです。

 若いころは、私がケーキを作ってあのひとのところへ運んだものです。

 クリスマスなぞ何じゃい、という顔で、前日まで仕事仕事でしたが、それでも当日はむっとした顔のまま「七面鳥もあるんじゃな」と言うんです。作り甲斐があるったらありません。

 すると私は私でケーキに「今年もありがとう愛しているわ」とびっしり書きつらねておくわけです。

 あとあとで息子たちにずいぶんあきれられましたが、いいじゃないですか。


 明日はフランですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る