第3話 特技

 さて、これを持ち上げて、と。


 葵は、木の水桶に中庭の井戸から水をたっぷり入れると、持ち手をぐいっと両手で握った。


 お……重ッ!

 微動だにしない。


 一旦息を整えて大きく吸い、そして再挑戦。


 ぬんっ……。


 何とか持ち上がったものの、手がぶるぶる震える。そして一歩も動けない。


「あ、葵! そんな沢山入れたら運べないよ!」


 通りかかったお繭が、慌てて廊下から降りてくる。


「だ、大丈夫……じゃない、かも」

 ゆっくり地面に下ろそうとするが、急に体のバランスが崩れた。

 水桶はドスンと地面に落ちた。その拍子に尻もちをついてしまう。

「い、いったーい!」


「葵、大丈夫!?」

 お繭がしゃがみこんで体を支えてくれる。


 やばい。これは、左の足首が、痛い。バランスを崩したときに、ひねってしまったようだ。立てない。


「水くみ初めて? ひょっとして……」

「……うん」


 お繭の口がぽかんと開いて、しばし無言になった。


「……ひょっとして南蛮には、井戸、ないの?」


 うーん、どう説明すればいいのか。


「そう。無かったの」こう言うしかないじゃないか。


 左足をさすっている様子を見て、お繭がため息をついた。

「ちょっと水くみは無理かも。別のやること探したげる」

「ごめん、よろしく」


 お繭が水桶の水を半分くらい戻し、それを持ってへっついに戻っていった。


 さあ、どうしよう。足はまだズキズキ痛む。捻挫か。この辺に病院とか……あるわけないか。

 昔教わったテーピングをしようにも、テーピングのテープなんて無いだろうし。何か細い布を代わりにするか……。


 足を引きずるように中庭を移動して縁側に座った。

 痛む部分を確認してみると、なんだか腫れているようにも見える。


「葵、じゃあ、火を見ていてくれるかな」

 水桶を持って戻ってきたお繭が葵に声をかけ、そのまま中庭に降りていく。

「わかった」


 足をいたわりながら台所へと向かう。ふう。なんだかなあ。


「葵ちゃん、大丈夫?」

 女将さんが声をかけてきた。お繭から聞いたのか。

「あ、何とか。いや、痛いです」

「どれどれ見せて」

 見てわかるんだろうか。

「ちょっと腫れてるみたいだね。冷やしたほうがいいかねえ」

「大丈夫だと思います。包帯とか、ありますか?」

「ホウタイ?」

「え、あ、いや、細長い布とか、そういうのは」

「手ぬぐいじゃ駄目かい?」

「えと、さしあたり、すみません、それ一つ、お願いします」


 女将さんが手ぬぐいを取りに行くのと入れ違いに、お繭が入ってきた。

「葵、大丈夫?」

「うん、今、女将さんに手ぬぐい持ってきてもらうとこ。あ、お繭ごめんね。水、代わってもらって」

「いいのいいの。火のほうが大変かも」

 そう言うと、お繭は少し不安げな顔になった。

「えーと葵って、火を見てたことって、ある?」


 えーと。うーん。中学のときの研修旅行でキャンプファイヤーと、飯盒炊さんを……。


「……ないや」

「……」


 お繭が焦った顔で口を開けていた。


 そこに女将が戻ってきた。手には白い手ぬぐいを持っている。

「これ葵ちゃんに。あ、お繭、葵ちゃんの怪我、けっこう痛そうだからね。ちょっと手伝ってね」

「大丈夫ですが、ちょっと女将に、ご相談が」

 真剣な表情のお繭に、女将が頷く。事情を察したようだ。

「お繭、じゃあこっちで。葵ちゃん、ちょっとだけ火を見ておいてね。消えないようにするだけでいいから。すぐ戻ってくるから!」

「わ、わかりました!」

 お繭はちょっと不安そうな表情でちらりと葵を振り返ると、女将とともに出ていった。


 ふう。火を見て、か。

 いや、火を絶やさなければいいんだな。


 かまどの火が消えそうになったら、空気を送ればいいんだな。つまり、扇ぐか、筒みたいなので吹けばいいんだ……と、思う。多分。

 ……っていうか、このかまどの上に乗ってるこれ、何かしら。そのままでいいの?


 何も聞かずに受けちゃったけど、大丈夫かな。いっつもこうだ。ちゃんと確認しないで引き受けちゃう。だから、いろいろ失敗してきたんだ。


 そうこうしてるうちに、なんだか火の勢いが弱くなってきたような気がする。やばい。消えちゃう。


 かまどの辺りを見回すと、薪らしきものが積んであった。そこから薪を一本取り、かまどの中にくべる。


 火が小さくなった! ま、まずい。吹かないと!


 あわててそばにあった竹の筒を取り上げ、少し焦げた先っぽをかまどに近づけて、片方から息を吹き込んだ。だめだ。もっと近づいて、フー、フーフー……。

 


 気づいたら、詰め所に敷かれた布団の上で寝ていた。


「葵、大丈夫!?」

「あ、お繭。私、どうしたの?」

「女将とへっついに戻ってきたら、葵が倒れてて、慌ててここに連れてきた。もう少し目が覚めなかったらお医者を呼びに行くことにしてた」


 お医者、いるのか。遠いのかな。


「ごめん。火に竹で息を吹いてたら、気を失ったみたいで」

「ううん。でもほっとした。心配したんだから」


 お繭の目に涙が。やばい。可哀想なことをした。


「少し休んでて。あと、どんな仕事ができるか、また女将さんと相談してみる」

「私も行くよ」


 慌てる。また出来ないことを振り向けられても迷惑を掛けるだけだ。

 立ち上がろうとして、頭に電撃が走った。


「いっつー!」


 足だ。さっき捻挫した左足首だ。なんだか腫れて、くるぶしの下が赤黒くなっている。

「やっべー」

「うわ、痛そう!」お繭の顔が歪んだ。

「う、痛い。大丈夫じゃないみたい。だけど、医者って近くにいるの?」

「ううん。隣の、是付ぜふに一軒だけ」

「ぜふ?」

「そう。是付。その前の道を一里ほど行った町。ここより大きい町なの」


 そういえば昨日、行こうとしてモローに止められたっけ。あの町か。

 それにしても一里ってどのくらいなんだ。くそ、グーグルで検索出来ないのが悩ましい。


「行って帰って、どのくらい掛かる?」

「うーん、朝に出て、用事済ませて帰るとお昼かなあ」


 げげ、遠いじゃん。自分でテーピングするしかないか。

「お繭、ハサミってある?」

「ハサミ? 裁ちばさみ? 持ってくるね」


 お、あるか。まあハサミくらい、あるか。

 横に置いてあった手ぬぐいをたぐり寄せた。

 これで、何とかなるかな……。

 

 葵は中学時代に二度捻挫していて、テニス部の友人からテーピングをしてもらったことがあった。巻くと、足首がかなりカッチリして足元の覚束ない感じが無くなった覚えがある。何度か巻き直しで教えてもらったので、巻き方は何となく覚えていた。


「はい、これ」

 手渡されたハサミは、かなり大型のものだった。

 さすが、江戸時代。なのか?

「ありがとう、お繭。よし、これで……」

「どうするの?」

 手に持った手ぬぐいを、縦に切ろうとしたその時。


「あ、ダメ! 葵、切っちゃダメ!」


 お繭に両手を掴まれた。

 ビクっとして動作が止まる。


「え、どうして。ちょっと足首に巻く布を」

「どうしてって。これ、宿のだし!」


 どうしていいのか分からない。

 あれ、手ぬぐい、くれたんじゃなかったの?


「え、あ、そう。そうか。ごめん」


 何だかよく分からないままに謝った。ホッとした顔のお繭。


「だけど葵って、ほんと、変な子だね」

 クスクス笑い出した。

「私の国では、これが普通なの!」

「手ぬぐい切るのが?」

 まだ笑ってる。

「えーと、いや、その、包帯を。怪我のとこに巻くの」

「怪我の? って、サラシじゃダメ?」

「サラシ?」

「ここにあったと思う」


 お繭は部屋の隅に行くと、衣装ケースほどの大きさのカゴのような箱を開けて中をゴソゴソし始めた。

「これ」


 出されたのを見ると、白い布だ。さっきの手ぬぐいとあまり変わらない気がする。


「これ使って」

「ありがとう」


 手にとってみる。あ、さっきのよりちょっとゴワゴワしてるかな。安っぽい感じ。


「手ぬぐい切って使うなんて、すごい贅沢。南蛮には手ぬぐいが沢山あるのね」

 お繭が言う。


 そう、そうか。昔は木綿も高いんだ。手ぬぐいは高級なのか。


「これ、ちょっと切ってもいい? このくらいの幅で、長さはこれくらい」


 葵は手を広げて示した。

 お繭が「仕方ないなあ」というような表情で頷く。

 いい娘だ。


「あ、あと。そう、そのほかに、もう少しもらっていいかな?」

「え、どの位?」

「んーと、このくらい」


 空中に五十センチ四方くらいの大きさを描く。


「うーん、結構大きいね。まあいいけど、代わりに何するのか教えて」

「えーと、その」


 パンツを作るのだ。どう説明すりゃいいんだ。パンツって、どう言うんだ?

 ふんどしか?


「えーと、南蛮の、女物のふん……どしを」

「え、ふんどし。女物のなんて、あるんだ」

 お繭が口に手を当てて驚いている。

「そう。なので、針と糸もできれば貸してもらえたら」

「いいよ」そう言うと、お繭は小さな裁縫箱を出してよこした。

「なんでもあるんだね」葵が驚く。

「なんでもするからね」お繭が笑う。

「じゃあ、私は仕事の残りをしてくるね。あと、女将さんと葵の仕事の話してくる。っていうか、ここで一緒にしたほうがいいかなやっぱり。じゃ、後で来るね。それまでちょっと休んでて」

「おっけー!」

 お繭はニコリと笑うと詰め所を出ていった。


 

 サラシで包帯を作り、テーピングの要領で巻きつけて縛った。

 何とかなったかな。ちょっと足元が安定した気がする。何とか歩ける。

 折れたりしてないといいけど。


 後はパンツ。

 やや広めのH字型を切り出し、真ん中から折りたたんで端を互いに縫い付ける。何とか形にはなる。

 さっそく履いてみるが、やはりウエスト部分がゆるゆる。ゴムとか無いよなあ。

 思い立って、細く切ったサラシで紐を作り、ウエスト部分の数カ所に入れた切り込みに通して前で結ぶ形にした。これでいいか。何も無いよりはマシだ。


 同じものをもう一つ作った。予備だ。もともと履いてるのと三枚で回そう。洗濯場は、あとでお繭に訊くか。


 ふと足首の包帯を見る。そうだ。これは美味しい。撮っとこう。

 畳まれたスカートのポケットからスマホを取り出してカメラを起動する。


 そういえば、ここではまだ何も撮ってない。

 ちょっと薄暗いので左足をかばいながらヒョコヒョコと明るいほうに歩いていく。

 スマホのカメラを左足に向けると、画面には痛々しい包帯が写った。よし。パシャ。

 後でインスタにアップし……できる日がくるのだろうか。

 ちょっと暗い気分になる。


「葵ちゃん、大丈夫かい?」

 女将が入ってくる。

「ええ何とか。足をくじいて失神までしちゃって。すみません」

 座ったままで、軽く頭を下げる。

「いいのよ。怪我や病気じゃ働くのは難しいわねえ。うーん、どうしようかねえ」


 そこへ、お繭が入ってきた。

「葵、おまたせー。女将さん、ご飯も炊けましたよ」

「お繭、いつもありがとうね」

「いえいえ」


 そのやり取りを見て、なんだか申し訳ない気がした。

 自分がやるように言われてた仕事をお繭に代わりにやってもらってたのだ。サラシまで貰っちゃって。


「あら、これは何だい?」

 女将が、葵自作のパンツを手にとった。

「あ、それは、えーと、南蛮の女ふんどしです」

 そうとしか言えないじゃないか。

「おやおや、変わったものだねえ。なんだかちょっと、すぐ破れそうだけどねえ」

 あちこち手でいじっている。お繭も興味深げに見ている。


「あら、これは?」

 女将がスマホに気づいて取り上げた。

「あ、それは」

 どう説明したらいいのだろう。

「南蛮の、えーと、本です」

「本、かい? これが? 小さい硯みたいだけど」

 ひっくり返しながら興味深く観察する女将。

「あ、これちょっと使ってみますね」


 葵は女将からスマホを返してもらうと、カメラを立ち上げた。そしてキョトンとする女将とお繭に向けて、パシャ。


 ビクッとする二人。


「い、今のなんだい? 目が、眩しくて」


 そうか、フラッシュだ。目をパチパチさせている二人。


「す、すみません。これ急に明るくなるんです」

「稲妻みたいだったよ。驚いた。小さな稲妻のからくりかい?」

 女将とお繭が手で眼のあたりをこすっている。

「そうなんです。そういう南蛮のからくりです」

 そうとしか答えられない。


「で、これ」

 スマホの画面を二人に向ける。

「えっ! お繭!」

「女将さん!」

 二人が同時に声を上げた。


 画面には、きょとんとした二人の顔が写っていた。

「これなんだい? 写し絵かい?」

 眉をひそめて画面を見つめる女将。お繭も、おっかなびっくり覗き込んでいる。

「あ、写し絵みたいなものです。あと、えーと」

 葵はあたりを見回した。

「お繭、ちょっと踊ってみて」

「踊る? 私、踊りってやってないから……」

 困惑するお繭に、葵は握った両手を振り上げて肩を揺すり、腰をくねらせて見せた。

「こうやって!」

 見様見真似で同じ動きをするお繭を、葵が動画撮影する。

「ほら」

 女将とお繭が画面を覗き込む。

「ひゃあ!!」

 お繭が声を上げた。

「ち、小さい写し絵が、動いてる!」


 震え声の女将が、画面を凝視している。

 お繭は腰を抜かしてへたり込んでしまった。


「こ、これは、どういう南蛮からくりなんだい?」

 目を見開いて葵に向き直る女将。

「あ、これ、動画っていうからくりなんです」

「ど、どうが??」

 なおも女将は、画面の中で踊っているお繭の映像と、横で口をぽかんと開けているお繭の顔を交互に見つめた。

「すごい! これ、出てきたりしないの?」お繭が口を開く。

「えーと、これは、この中だけなの。出すには、うーん、別のからくりが必要かな……」


 葵の脳裏にはVRゴーグルが出てきたが、さすがにそれを説明するのは難しい。


「これさ、写し絵からくり、うちの泊り客にやってあげたら、評判呼んでお客が増えないかね!」

 商売っ気のある言葉だ。さすが女将。

「あ、でもこれ、バッテリーっていって、えーと、もうしばらくすると、このからくり動かなくなるんです。すみません」

「バッテラ? 船のことかい? この辺にはないね。モローさんに訊けば知ってるかもしれないけどねえ」

「あ、いや、バッテリーっていって、えーと、バッテラとかじゃないと思います」

「そうなのかい。残念だねえ」

 うなだれる女将。


「いやね、お繭とも相談してたんだ。葵ちゃんさ、足も痛めて、火吹も出来ない、じゃあどうしようって。さすがに南蛮の人に飯盛してもらうわけにゃあ、いかないから」

 お繭がうつむく。

「メシモリ? ごはんを盛るのは出来ます! それは出来ます!」

「い、いや、葵。飯盛ってのは……」


 お繭が葵の耳元に口を近づけてくる。コソコソと。

 葵は全てを悟った。


「……それはちょっと」

「だよねえ。いや、この宿じゃ飯盛女なんていないんだけどね。そういうお宿は隣の街に一軒あるくらいで」

 あわてて取り繕う女将。


 でも、そうだよなあ。何の手伝いもまともに出来ない。せめて「写し絵」のバッテリーがもっとあればなあ。


 写し絵。そうだ。


「そうだ。女将さん、実は私、絵が得意なんです! 似顔絵とか、描きます!」

「え、葵って似顔絵できるの!」

「本当かい。ちょっとやってみてくれないかい? 私ねえ、実は似顔絵好きで。前にね、ここに有名な絵師が来たときにね、泊まり賃代わりに描いてもらったりしたのさ」


 そう言うと、女将は隣の部屋に入っていった。


「似顔絵って、どんなの? 南蛮の似顔絵、ってことなんだよね」

 お繭が興味深げに訊いてきた。

「えーと、そう。南蛮……の似顔絵」


 ちょっと自信が無くなってきた。ここに絵の具とかあるのかどうか。


「ほら、これだよ」

 女将が持って来た数枚の紙を広げる。半紙に墨でサササっと描いてあるようだ。

 なるほど、線だけなのにダイナミックな躍動感があって凄く雰囲気を捉えている。漫画的にも見えるが確かに女将さんの似顔絵だ。

 これは見事だ。


「あとこれね」

 掛け軸を拡げた。

「あ、すてき!」

 葵は目を見張った。一メートルほどの長さの紙に女将の着物の立ち姿がサラリと描かれていた。ワンポイントで朱の墨が入っているのが、またお洒落だ。

「こういうの描けるかい?」

 どうだろう。墨絵は描いたことがない。自分が得意な、何度も重ねて塗っていく感じじゃないから、やってみないと分からないけど。

 でもこれが出来なきゃ、め、飯盛……。

「や、やってみます」

「本当かい!? じゃあ紙と筆、墨なんかを用意するね。実は私もさ、この似顔絵描いてもらってから少しだけやってみたんだよ。でもなかなか上手くなれなくてねえ。道具だけ遊んでるのさ」

「ありがとうございます!」


 ほっとした。絵が描ければとりあえず、ちょっとは置いておいてもらえそうだ。

 ちゃんと描ければ、だけど。

 再び隣の部屋に行った女将が箱を持って戻ってきた。


「これ使いな。好きな場所で描いたらいいよ。何枚か出来たら見せとくれ」


 箱を開けてみる。筆が数本と、朱と黒の墨。すずり、あと、色のついた粉。これ、顔料?


「女将さん、これ、絵の具……ですか?」

「よく判ったねえ。色つけるのにね、モローさんに頼んで調達してもらったんだけどね、なんだか上手く出来なかったんだよ。使っていいよ」


 見ると、三種類ほどの色がある。

 黄色と藍色、ちょっと光沢があって白っぽいのはサンゴか何かの粉だろうか。


「ニカワと紙は、その底のほうに入ってるからね」


 箱の上半分を取り出すと、箱は二段になっていた。

 底の段には皿とニカワの棒、あとは半紙と思しき紙が束になって入っている。

「ありがとうございます! 頑張って描きます!」

 葵は箱の段を戻して蓋を閉じると、丁寧にお辞儀をした。


「私の顔、描いてみない?」

 お繭がちょっと照れた顔で葵を誘ってくる。

「お繭、お繭にはまだ仕事があるよ」

 女将が笑いながらお繭に声をかけるとお繭は「じゃあ後で」と言いながら部屋を出ていった。


 女将はちらりと葵のほうを見ると、ニヤリと笑い「あとで私もお願いしたいねえ」と一言行って部屋を出ていった。


 もちろんですよ!


 葵はお辞儀しながら、心の中で返事をした。

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