始業式
僕の学校は入学式の次の日に始業式がある。始業式は入学式をやった場所と同じ講堂で行われる。講堂は昨日の華やかさはどこへ行ったのやら、すっかり元のような無機質な内装に戻ってしまっていた。
「おはよう藤川。」
「おはよう桧山くん。」
後ろから僕の高校初の友人である桧山くんが声をかけてきた。
「今日はクラスごとに並ぶみたいだな。行こうぜ。」
「うん。そうだね。僕の後ろの人、確か藤浪君だったかな。話してみたいな。桧山くんは原口君のこと知ってるの?」
「あぁ。同じ中学だったんだよ。クラスも同じでさ。出席番号も前後だったからいっつも一緒だったぜ。」
「へぇ。そうだったんだ。原口君とも話してみたいな。」
「お前誰彼構わず話しかけるのな。原口はともかく藤浪は変なやつかもしれないから気をつけろよ?とりあえず二人でだべってようぜ。」
二人で10分くらいしゃべっていると、僕の左隣からガタッという音がした。
驚いて見てみるとそこには高身長のがっしりとした人が座っていた。
座高だけでも明らかに僕より背が高い。これでも僕は身長175cmあるのだが目線を上げなければ顔が見えない。
おっといけない。僕のお隣さんになる人だ。話しかけなくては。でもやっぱり知らない人に話しかけるのは怖い、そうだ桧山くんなら、と思い反対を見たが彼は茫然とした顔で藤浪君を見ていた。頼みの彼も機能しないし自分で話しかけてみよう。これも一種の挑戦だ。
「君、もしかして藤浪君?身長いくつ?」
話しかけることができた。初めての会話でこれは適切なものなのか僕にはわからないけれど多分平気だろう。
「あぁ。俺が藤浪だ。これからよろしくな。身長は197cmだ。ただこの背で周りから浮いてきて少しコンプレックスなんだ。あまり身長の話はしないでもらえると助かる。」
「よろしくね。藤浪君。ごめん、そうだとは知らなくて。僕もクラスで孤立してたから似た者同士なのかな。」
「かもな。お前とは仲良くできそうだ。」
「うん、そうだね。」
最初は失敗したと思ったけれど彼もとてもいい人だった。彼とも仲良くできそうだ。ただ何か忘れているような⋯。
「っておい!俺のこと放置して話進めるなよ!」
ごめん、桧山くん。君のことをすっかり忘れていたよ。
「お前桧山っていうのか。よろしくな。俺は藤浪だ。」
「あ、あぁ。ヨロシク。」
桧山くんがなぜかカタコトになっていたがコミュニケーションがとれたようだ。これで僕の前後という絶対領域は確保された。高校ボッチ生活は無くなりそうだ。
始業式まであと10分。その時間は三人で色々と話したいな。友達(?)が出来た瞬間人安心する藤川であった。
初めて後ろの出席番号の子に会ったよ。彼とも仲良くできそうだよ。だから心配しないで見守っていてね。
かあさん。
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