目覚め






 目が覚めて最初に視界に入ってきたのは、薄暗い室内の天井だった。




「……生きてる?」




 俺、生きてる? その事実に驚いて身体を動かそうとしたら身体に激痛が走った。




「あだだだだだだ!!」


「ね、姉ちゃん!! 目が覚めたのか!?」




 声がして首だけどうにか動かすと俺の隣にはポロポロと涙を零す俊和がいた。


 ここは……俊和の家の居間か。どうやら、俊和は俺を看病してくれていたようだ。外が暗いから、それなりに時間が経っているようだ。




「どうして、ここに?」


「日が暮れて、姉ちゃんが帰って来ないから心配になってこっそり浜辺に様子を見に行ったら、姉ちゃんが浜辺で倒れてたんだよ」


「そうか、どうにか辿り付けたのか」




 ホッとしていると、俊和は袖で涙を拭う。




「姉ちゃん。身体は? 痛いところないか?」


「…………痛みはじっとしていればないな、身体はあまり動かせない。けど、夜が明けたら無理にでも防空壕に移動する。念の為だ」


「うん、分かった」


「その時、力を貸してくれ」


「うん、当然だろう」




 何度も頷く、俊和に俺はどうにか腕を伸ばして頬を撫でる。


 気恥ずかしそうだけど、不思議そうな表情をする俊和。


 俺はこの言葉を言っていいのか少し悩んでしまったけど、言うことにした。




「姉ちゃん?」


「ただいま、俊和」


「――っ、ああ、お帰りなさい。し、信濃姉ちゃん!!」




 俺は俊和の泣き笑いの表情を眺めながら、眠りに落ちた。










 次に目俺が覚ましたのは、猛烈に喉が渇いたからだ。


 眠ったおかげなのか、それともこの身体のお陰なのか大分体が動くようになった。


 手をぐーぱーと動かし、軽く肩を回して俺は隣で寝ている俊和を起こさないように寝かされていた布団から出て、台所へ向かった。


 だが、防空壕に水を全て持って行ったことを思い出して、俺は勝手口から外に出て近くの井戸へ歩いて行く。


 少なくても、ある程度は身体が動かせるようになるくらいには回復したようだ。


 井戸の手押しポンプを動かして、水を出して両手で水を掬い口に運んだ。




「ふぅ」




 溜息が出た。これからのことを考えるとどうしてもネガティブな考えが思い浮かんでしまう。


 あの空母のエイリアンがこちらへ来るかもしれない。そのことを考えると直ぐにでも島を出るべきだろう。


 けれど……。




 まだ、身体が震えている。


 恐怖だけではなく単純な身体のダメージが原因だ。


 明日は防空壕に移動して、一晩息を殺すしかない。仮に近海にあの空母のエイリアンが来たとしても、やり過ごすしかない。


 頭は既に倒した。少しは時間を稼げているはずだ。


 俺はそう考えて、俊和の所に戻ろうとした時だった。




 ――ザッ、――ザザッ。と地面をする音がした。




「俊和、起こしたか?」




 俺は俊和が起きて俺を探しに来たと思い、後ろを振り返った。






 俺の視界に入ってきたのは、赤黒くいびつな顔をした。赤黒い人の形をした【何か】だった。


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