第23話 悪魔の暴走

202×年2月下旬 世界保健連盟本会議


 世界各国の専門家がオンライン会議を行っていた。

一同を集めて行う会議は危険と判断され、オンライン会議だった。

それほど事は重大化していた。


『有効な薬はないのですか?うちのような医療技術が整っていない国では、もう限界です』


と、発展途上国の医師が言うと


「今、陽華人民共和国やアメリカや日本が必死に既存の薬で対処できないか治験をしています。もうしばらく、外出自粛を国民に呼びかけて、対処して下さい」


『うちは、もう限界なんだ』


と、テレビ電話の向こうで苦痛の叫びを上げていた。


【日本代表です。今、Xバースターの治験を行い、初期の感染者には一定の効果を確認しています。もちろん増産も開始しました。どうか、もうしばらく待っていただきたい】


《陽華人民共和国代表です。我が国でも新薬インゼツメツの治験を開始しています。効果が確認され次第世界に供給できるようにしたいと考えています》


「皆さん、陽華人民共和国を見習いましょう。都市龍々のように発生地域を封鎖して、外出自粛を徹底的にして、感染拡大を抑えるのです」


と、世界保健連盟事務総長アルテロが発現すると、アメリカの代表が


「貴国が発表が遅れたからではないですか。都市龍々だけでなく早期に国その物を一端閉ざしてくれさえすれば、世界には広がらなかった、貴国の責任は重大です。そしてアルテロ総長、あなたはこの病気を確認したとき楽観視していたはず、責任問題ですよ」


「過ぎたる事を言ってはいけません。それに今の社会、国を閉ざすことなど、そう容易いことではないのは皆さん承知のはず。今は我慢の時です。人間はいつの時代も疫病と戦ってきた。乗り越え慣れない疫病はないはず。エボラ出血熱だってワクチンは開発され、薬だって出来た。なら、この新型強毒性インフルエンザだって出来ないはずがない」


と、世界保健連盟事務総長アルテロが言う。


【それまで国を閉ざせと?もう食糧だって生活物資だって少なくなってきているんだ】


と、怒る国の代表もいた。

観光資源で成り立ってきた国、地下資源を売ることで成り立ってきた国、自動車だけの製造に突出してしまった国、国のありかたは昔と大きくことなり、自国で全てをまかなう事は出来ない国がほとんどであった。


工業に突出してしまった国は食糧受給率が下がり、他国から輸入することで成り立っていることなど珍しくない。


観光業が盛んならば、生活用品だって輸入に頼っている国もある。


そのような状況下で国を閉ざすことが続けば、脆弱な国はどんどんと物資不足に陥っていく。


人間が最低限生きるために必要な薬だってそうだった。


輸入に頼る事は珍しくない。


長く続けば、病原菌の蔓延だけでなく、飢えで死んでいく者が出始める、既往症で死んでいく者だって・・・・・・。


待ったなしの状況はすぐ側まで来ていた。


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