第15話 傷口
血がしたたっていたはずの那珂湊教授の左手は一時間もすると、完全に傷口は閉じていた。
宇都宮秀男が出て行った後、監視人が那珂湊教授の左手を止血だけはしようとすると、那珂湊教授は必要ないと断った。
血が乾いて出ていないという表現ではない。
もう傷口は完全に閉じ、新しい爪が生えようとしていた。
あり得ない速さの治癒のスピードだった。
それを見た拘束を担当していた黒服面の男達は、
「・・・・・・間違いない、化物め」
と、那珂湊教授を罵るが、
「怪我の修復能力を上げたくらいで、あなた方は化物と認識するのですね?私にはその考えその物が古い物だと感じますよ。ネアンデルタール人はあなた方では?」
「人間としての誇りは亡いのか?」
「誇りで人は救えますか?病気は治りますか?怪我は治りますか?答えはNOだ」
と、言われるとそれ以上の反論を止めた。
那珂湊教授の再生能力を聞かされた宇都宮秀男は驚愕していた。
「どこまで改造したんだ?どこまで・・・・・・人間が人間を捨てる選択をする?そんなこと間違っている。・・・・・・・いや?なぜに間違っているんだ?誰かに教えられたから?嫌悪感から?神を信じていたから?異質な物を受け入れたくないという本能から?俺自身なぜにやっていイケないことだと人気している?なぜに?なぜに?」
宇都宮秀男は極度のストレスを感じ始めていた。
『倫理』『道徳』と、言いながら自白剤や拷問をしていた自分。
それに気が付くと、頭の中で葛藤生じ始めていた。
仕切り直し、そして自分の心を保つために三日ほど休んだ。
その間に那珂湊教授の爪は生えそろっていた。
剥がされたことがなかったかのように綺麗に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます