205日常~エレーナが風邪を引いた
武術大会まであと二週間を切ったある日の朝.窓から弱い光を取り入れた部屋でエレーナは外出着のドレスを身に纏い,装飾が施された椅子に座りながら,机の上でファッション・プレート集を開いていた.そこに描かれていたのは綺麗な貴婦人達で,その衣装を退屈な馬車の中から風景を眺めるかのように気の抜けた表情で見ていた.そうして,静かに時間を潰していると,部屋の呼び鈴が鳴った.彼女は黒色の帽子を被り,朽葉色の布外套をドレスの上に羽織って,鞄と純白の雨傘を手にして扉を開ける.
「レーナ,おはよう」
何時も通りに声を掛けたのは,彼女が雇った魔女アンナ・二コラエヴナであった.傘を持たずに普段通りの恰好で訪れたアンナに対して,彼女は少し間を空けて普段通りの声色で言う.
「……おはようございます.少し待っていて下さい」
そして部屋に戻ると,純白の雨傘をもう一本持ち出して再び扉を開ける.二本の傘を持つ彼女を見たアンナは彼女に何か期待するかのような眼で静かに待ち続けた.
「……アーニャ,この雨傘は貴方に差し上げます.雨の日に使って下さい」
アンナはその言葉を聞いて差し出された傘をゆっくりと受け取った,そして彼女を真剣な表情で見つめて言う.
「分かった.大事にするよ」
そんな会話をして,二人はどす黒い雲に覆われた空の下,歩いてアンドレイの営む酒場へ向かう.この時点では雨が降っていないため,多くの市民が街道を行き来しており,更に普段と異なって人々は小走りで動きが早く,背の低い彼女達にとっては動きにくい環境であった.そのため,アンナの提案で大通りではなく人気の無い路地を通って酒場へ向かう.しかし,アンナは途中で道に迷った.
「……地図が古かったか?」
「……」
地図を暗記してきたアンナが珍しく独り言を漏らしたが,彼女は何も言わなかった.歩き始めて一時間,未だに酒場までの道程の半分も歩いていなかったが彼女は頭痛に悩まされていて,余計な事を喋るだけの気力が無かった.更に二時間以上掛けて酒場に辿り着き,玄関の黒い扉を開けて店の中に入ると彼女達は椅子に座った,そしてアンナは少し俯きながらエレーナにこう言った.
「私が余計なことをしたせいで時間が掛かったことについて詫びる.すまなかった」
「……別にいいですよ.気にしないで下さい」
エレーナが青ざめた顔で返事を返したため.アンナは彼女の言葉を聞いても気が休まらなかったのだろう.目を下に遣りながらアンナは話を進めた.
「本題に移るが,魔法杖の調整のためにレーナの魔力を見たい.正確に見るために身体に触るのだが,何処なら触っても大丈夫なんだ?」
「……背中以外なら構いませんよ」
「嫌だったら直ぐに言ってほしい.直ぐ止める」
アンナはそう言った後,彼女の傍に椅子を持って移動して,布外套に覆われたドレスの上から身体を触り始めた.その手は白樺のような細い手足を触り,水面のように平たいお腹を撫でる,そして,雪のように柔らかい胸に触れたとき,彼女は一瞬,顔を歪めた.しかし,アンナは気づかない.そのまま,オコジョのように細い首,少女のような柔らかい頬,そして,思い出したかのように骨盤に触れる.その後は少し間を置いてからお腹に手を置いた.その行動に対して彼女はアンナの硝子のように透き通った青い瞳を見ながらこう尋ねた.
「……アーニャ,何か別のことを考えてたりはしませんか? 正直に言って下さい」
「すまない.最後は骨格を見ていた」
アンナも彼女の目を見ながら答えたが,目的は語っていない.骨盤に触れて分かる事の一つは性別である.骨盤の男女の違いはその形状にあるが,彼女の骨盤は男性的な物だった.つまり,アンナは再び彼女の性別を疑っていたのである.アンナは性別を判断する方法をいくつか知っているつもりだった.魔力,骨格,性器の形状,染色体等.この時までは彼女の事を勇者であるから,何らかの目的があって女装をしていると捉えていたのだろう.そして,それらの事には触れずに真剣な表情でこんな事を言った.
「レーナ,君はもう少し栄養を摂った方がいい.痩せすぎている.はっきり言えば栄養失調で,恐らく発育にも影響が出ているはずだ.私も何か対策を打つ.君は食事量を増やせ」
「……考えておきます.それより,まだ終わりませんか?」
「今は魔力を同調させてる所だ,もう少し掛かる」
アンナが行っていたのは,彼女が持つ魔力の周波数と位相に自身の魔力を合わせることだった.自身の魔力を変化させるのは魔法使い養成学校を出た程度では出来ない非常に高度な技能だったが,エレーナはその事には反応せずに待ち続けた.そして6分かけて魔力を同調させた後,アンナは彼女から手を離す.
「色々と触ってすまなかった.後は杖の調整だけだが,私だけで出来る作業で時間も掛かるから後回しにする.代わりの物は用意してあるから杖を預かっていいか?」
「……分かりました」
その後,アンナは彼女から檸檬色の杖を受け取って二階へ続く階段を登っていった.そして,少し経った後,代わりのサーベル『シャシュカ』を両手で抱えながら少しずつ登った階段を降りてきて,座って待つ彼女の元まで運び,両手で持って目の前に差し出す.
「レーナ,この曲刀は君に渡す.傘の礼だ.受けとって欲しい」
「ありがとうございます」
彼女は『シャシュカ』を受け取って鞄の中に入れた.そして,アンナは椅子に座ってからこう言った.
「他にも同型の『シャシュカ』を12本,ライフル銃を12丁,投げナイフは16本準備した.特に銃は高精度な物を選別してある.これらも受け取って欲しい」
彼女は少し良くなった顔色で目を細めながら尋ねた.
「……すみませんが,それらは何処で購入した物ですか? それと掛かったお金は何ルーブルですか?」
「元はアンドーリャが所有していた物だ.質は信頼出来る.それに値段は気にしなくていい.ツケで買ったからな」
アンナは普段通りの声色で答え,それに対して彼女は素の口調を出しながら所々間を空けて聞き始める.
「アーニャ,貴方……そのお金払えるの?」
「あぁ.手元には無いが後で払えばいい.とりあえず,お父様に立て替えて貰うつもりだ」
「……他の所でも同じようなことはしてないよね? それと……アンドレイ・アレクサンドロヴィチは今,何処にいるの?」
「アンドーリャは今は商人ギルドの会合で何処かに行ったな.それと他の所でのツケは無理だ.この街での知り合いは彼くらいだからな」
彼女も多少は安心したのか,普段の口調に戻して話し始める.
「そうですか.分かりました.明日,賃金を払いますので……今後は後払いをするのは控えて下さい.良いですか?」
「いや,手持ちの金を減らさないためにもツケ払いの方が良い.特にアンドーリャはお父様の友人だからな,そこまで迷惑にはならないだろう」
「……」
アンナの発言に彼女は言葉を失った.アンナが高い技術力で作られた銃を所持している事,銀製の杖と装身具を身に付けている事,親が魔法使いである事を忘れたわけでは無いだろう.しかし,アンナがローブの下に着ている民族衣装は社会的な階級の低い人間達が着るものだった.そのため,彼女には「アンナは貧乏である」という思い込みがあったのである.静かに固まっている彼女に対して,アンナは普段通りの表情をしながら声を掛けた.
「それより,早く外に出ないか? 雨が降る前に強者を勧誘をする予定なんだろ?」
「……そうですね,この事は後にします.道案内をお願いしますね」
彼女達は黒い扉を開いて酒場から出て行き,どす黒い雲に覆われた空の下,歩いて西側の広場に向かった.
そして,彼女達は10:00頃に広場に到着した.中央に噴水が設置され,綺麗に整備された広場では,シルクハットを被り,濃い色の燕尾服を着て,白いズボンにブーツを身に付けた紳士や,頭を広く覆う帽子を被り,質の良いドレスを身に纏った婦人等のお洒落な人々が行き交い,高級な馬車も多く見受けられた.そんな中で朽葉色のローブ姿のアンナは,同じく朽葉色の布外套を身に纏う彼女に言った.
「強者は居ないな,少し待ってみるか」
「……分かりました」
彼女達は強者が通るのを待ち続けた.そして,暫く経った後,彼女はアンナにこんな事を聞いた.
「貴方は私に雇われる前,この街で何をしていましたか?」
「そうだな,街を歩き回ってヴルガ・マスクヴァの勇者を探してた.ヴラド通りで君を見かけたことがあるが,あの場所にはもう近づくな.ろくな場所じゃない」
「私も同感ですね……一つ気になることが有るのですが,私の事を白と言っていたと思いますが,どういう意味ですか?」
彼女の質問にアンナが口を開くまで少し間が空いた.そして,彼女を見ながら別の事を話し出す.
「……それより,強者が歩いているから聞いてくるといい.一時の方向,30m先,東側に向かって歩いている,髭を生やして,ルパシカを着ている男だ.私はここで待ってる」
「貴方も着いてきてください」
「分かった」
そして,彼女はアンナを連れてこの国の言葉で髭の生えた男に声を掛ける.
「私と共に魔王軍ウル・タルタルスと戦ってくれませんか?」
彼はその言葉に対して直ぐには答えず,アンナを指しながら彼女にこの国の言葉で尋ねる.
「……そっちの子は妹?」
「いえ,私が雇った魔法使いです」
彼はアンナの方を向いて口調を変えて話し出した.それに対してアンナはいつも通りの口調で返事を返す.
「へぇーー始めて見たな.君,魔法使いなの? その棒が魔法杖?」
「そうだ」
「魔法使いってどんなことが出来るのかな? それと魔法使い養成学校にはもう入ったの?」
「養成学校には入って無い.魔法使いは様々な事が出来るが,私は氷の粒を作って飛ばしたり,氷像を作る事が出来る程度だ」
「そっか,偉いねーーでも,言葉使いがちょっと荒いから,早く治した方が良いよ」
笑顔でそう言った後,彼はエレーナの方に向いて真剣な表情で話し出した.
「多分,君達はヴルガ・マスクヴァ帝国出身だよな?」
「はい.この街には傭兵を雇う為に来ました」
「愛国心が有るのは良いことだけど,君は滅多な事を言う物じゃない.せめて,もう少し準備を行った上でそういうことを言え,そっちの子は魔法使い養成学校に入れて,君はもう少し鍛えろ.そもそも戦争や戦いは男の仕事だ.君達は家にいればいい.とにかく両親も心配しているだろうから早く帰りなさい.これが俺の言える全てだ.用事があるので失礼させて貰うよ」
男はその場を去っていった.それからも,幼い姿をしているアンナに言及してから去る強者が後を絶たない.6名に声を掛けて全て失敗に終わった後,アンナは彼女に俯きながらも普段通りの声色で言う.
「私は10歳の見た目だから子供扱いされることが多いんだ.それにヴォルフであっても今の私は弱い.だから話し合いで良い方向に働くことが無い.さっきの場所で待機させてくれ」
彼女は少し間を置いてから,真剣な表情で所々間を空けながらこう返した.
「……ダメですよ.どちらにせよ,貴方の事は紹介しないといけません……後で伝えて不信感を与えるよりも,先に伝えて断られた方が良いです……私が欲しいのは信頼の出来る仲間であって,それ以外は要りません……だから着いて来て下さい」
「分かった.従う」
それから少し経つと大粒の激しい雨が降り始めた.身体が濡れるのを嫌う人々は小走りで広場から離れていったため,数分も経てば広場は閑散とした空間に変わり果てる.そのような場所に彼女が望むような人材は居ない.そのため彼女達も傘を指して酒場への帰路に着いた.しかし,エレーナの足は遅く,身体はふらついていた.それを見たアンナは傘を閉じて鞄の上に置き,直ぐに手を彼女の額に当てて体温を調べた.突然の行動であったため彼女はこんな反応をした.
「アーニャ,冷たいよ」
全身を雨で濡らしたアンナは風邪で熱くなった彼女を真剣な表情で見ながら言う.
「肩を貸すから,早く腕を寄越せ」
アンナは彼女の腕を取って自身の肩に回した.そして,無詠唱で盾魔法の変型を発動させると彼女達の50cm上に白い透明の膜が傘のように張られ,それに当たった雨粒は横方向に逸れてから地面に落下し,彼女達をそれ以上濡らすことは無かった.アンナは彼女に肩を貸して,その魔法で彼女を護りながら酒場に帰っていった.
客が十名程入っている酒場に帰ると,アンナは酒場に入って直ぐの場所からカウンターで接客をしているアンドレイに声を掛けた.
「アンドーリャ,彼女が熱を出した.私の部屋に運ぶから,手伝え」
「分かった」
その話を朦朧としている頭で聞いていた彼女はアンドレイに抱えられながらこんな事を言っていた.
「一人で動けます,止めて……」
二人は彼女の言葉を無視して,アンドレイは二階にあるアンナの部屋に彼女を運び込み,アンナは金属製の桶を持って部屋に入ると無詠唱で魔法を発動させて,彼女の服と髪に含まれていた水分を桶に移動させる事によって乾かした.その後,彼女をベッドに寝かせるのを確認すると直ぐにアンドレイに尋ねた.
「アンドーリャ,二つ聞く,この建物のポーション生成機能は維持してあるか? 材料は残っているか? 特に柳の樹皮が必要なのだが」
「設備は維持してある.材料は二週間前に入れ替えたから大丈夫だ」
その反応を聞いて直ぐに部屋を出て行こうとするアンナは更にこんな事を言う.
「分かった.100ルーブルで借りる」
「いや,別に……」
アンドレイの言葉を遮り,アンナは怒気を込めてこう言った.
「うるさい,200ルーブル払うから,使わせろ!」
「分かった」
その言葉をアンドレイが言った瞬間,アンナは部屋を出て地下室に向かった.その部屋はカウンターの奥,生活用の空間にある横幅3mを超える巨大な階段を降りた先にあり,その入り口は分厚い金属製の両開き扉であった.その部屋には鍵も掛かっていたが,アンナは容易にこれを開けて入って行った.
アンナが入った部屋には液体の入った瓶や数々の材料,ガラス製の容器が並び,蒸留器や分離漏斗,遠心分離機といった小型の機材,ボールミルや混和機,乾燥機等の大型の機材が所狭しに置いてあった.その中からアンナは柳の樹皮と数種類の液体を取り出し,樹皮から成分を抽出して,幾つかの工程を経てポーションを作り出していく.
ポーションと薬の違いは魔力の有無である.本来の薬に対し魔力を加えることによって効能を強くしたり,即効性を持たせたりすることが可能であり,身体の傷を治すような物もあった.それらを作るのは魔法使いの仕事であったが,その腕は魔力の量よりも薬の知識に大きく左右されるため,今のアンナでも良質なポーションを作ることが出来た.
二時間程経った後,アンナは苦味の強いポーションの味を蜂蜜等の甘味料で調整してから硝子製のコップに入れて,エレーナの居る部屋に急いで持って行く.
アンナが部屋を開けると机には金属製の湯沸かし器『サモワール』が置いてあり,ベッドの近くにある椅子の上に紅茶の入ったティーカップが置かれ,ベッドには苦しそうな表情をしながら掛布団の下で体を震わせているエレーナが居た.アンナは直ぐに彼女の傍に駆け寄り,身体を起こそうとこう言いながら背中に片手を入れる.
「レーナ,薬を用意したから早く飲め.身体が楽になる」
「……薬,取りに行ってたの? ……ありがとう」
彼女は小さな声でそう言ってから身体を起こして,アンナの持つポーション入りのコップにゆっくりと手を伸ばした.そして,ポーションを受け取ると両手で掴んでゆっくりと口に運び,一気に飲み干した.
「身体の痛みと熱はじきに収まる.だが,今日は安静にしていてくれ.今,横にするからな」
アンナはゆっくりと背中に置いた手を降ろして,彼女をベッドに戻す.その後,ティーカップを机の上に移して椅子に座り,どこか安心したような表情で彼女に話しかける.
「私はここで待機しているから,何か用があったら言ってくれ」
エレーナはすぐには言葉を返さず,アンナの方に頭を向けて視線を動かそうとしない.そして,三分後には彼女の身体の震えは収まり,普段の柔らかい表情に戻っていた.彼女はアンナに尋ねる.
「アーニャ,少し前に私に飲ませた物ってポーションだよね? アーニャが作ったの?」
「そうだ,原材料は柳の樹皮を使っていて,幾つかの工程を魔法で代用しているから,質は保証できる」
「……アーニャ,お腹空いた」
彼女は暫く間を開けてから,突如そんな事を言い出した.それに対してアンナは
「あぁ,すまなかった.スープくらいなら大丈夫だろう.貰ってくるよ」
と言ってから,一階へ降りて,接客中のナターリヤを横目にカウンターの奥の部屋へ向かい,調理場に居たアンドレイに言う.
「さっきは怒鳴って済まなかった.それで『ボルシチ』は今あるか?」
アンドレイは後ろに振り向いて,真剣な表情でアンドレイの眼に視線を向けるアンナにこう返事をした.
「別にいいさ.それとスープは15人分はある.器は持ちやすい物で良いな?」
「あぁ,一人前で頼む」
アンナがそう言うと,アンドレイがビーツのスープ『ボルシチ』を家族で使っている底の深い器に注ぐ.アンナはそれを持って部屋に戻り,ベッドに横になっている彼女を起こして片手にボルシチを,もう一方の手にはスプーンを手にして,普段通りの表情でこんな事を言い出した.
「レーナ,口を開けてくれないか?」
「アーニャ,私は独りで食べられますよ.器を貸して下さい」
「……そうか」
アンナは彼女にそう言われ,残念そうに『ボルシチ』とスプーンを手渡した.そして,彼女は食べ終わると真剣な表情でこんな事を口にする.
「私とアンドレイ・アレクサンドロヴィチの料理の腕はどっちが上ですか?」
アンナは真っすぐと彼女の目を見て,こう返した.
「君の方が上だな.アンドーリャは私のお母様から料理を学んだ身だが,お父様によれば,まだ細かい所で荒があるとの事だからな」
「そうですか,私,もう寝ます! おやすみなさい!」
彼女は少し不機嫌そうに言って,ベッドに横になり眼を閉じた.
アンナは暫くすると机の傍で仕込み杖の調整を始めた.杖を分解して部品の欠落が無いか,摩耗してないかを確認すると再度組み立て直す.そして,彼女の魔力に最適化するために杖の内部に備えられた調整用の可変器群を弄って,彼女に偽装した魔力を流し込み,その結果を羽ペンで紙に記録して再び可変器群を弄る事を繰り返す.
調整が終わった頃には激しい雨は小雨に変わり,外は暗くなっていた.アンナが仕込み杖を両手で持って立ち上がると,エレーナは眼を開けて,少し間を置いた上で声を掛けた.
「……アーニャ,おはようございます.私が寝ている間,杖の調整をしていたのですか?」
「あぁ,調整は君の火属性の魔力に合わせて,雷属性でも火属性の8割程度の性能を発揮出来るようにした.それより,夕食も食べて行くと良い.少し待っていてくれ」
その日も彼女達は夕食を共にして,彼女はアンナの付き添いの元,歩いて宿に帰って行った.
ちなみに,後日,エレーナはアンナがツケ払いで入手した武器を立て替えるとアンドレイに申し出たが断られた.
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