204日常~エレーナの一日,アンナを添えて
武術大会まであと二週間を切ったある日の朝.窓から優しい光を取り入れた部屋でエレーナは外出着のドレスを身に纏い,装飾が施された椅子に座りながら,机の上で女性ファッション誌を読んでいた.その雑誌は挿絵が少なく,文章中心で書かれているため,彼女は自身の頭の中でその衣装を想像しながら少しずつ読み進める.そうして,静かに時間を潰していると,突然部屋の呼び鈴が鳴った.彼女は黒色の帽子を被り,朽葉色の布外套をドレスの上に羽織って,鞄と幾つかの布袋を持ってから扉を開けた.
「レーナ,おはよう」
そう声を掛けたのは,彼女が雇った魔女アンナ・二コラエヴナである.朽ち葉色のローブを着て,銀の杖を携えながら,茶色の鞄を肩から掛けたアンナの装いは流行とは無縁であるが,彼女はその事には触れずにこう返した.
「おはようございます.私の方は準備が出来ていますので,市場に向かいましょうか」
「そうだな.分かった」
そういった会話をした後,彼女達は天色の空の下,歩いて東側の地区にある市場に向かった.
二人の身長差はおよそ15cm,似たような外見を持つ彼女達は周りの人々には姉妹のようにも見えたのかもしれない.白い布張りの平らな屋根を持つ露店が立ち並び,市民で雑踏としている市場を歩いていると彼女に声を掛ける者が居た.
「小さい勇者ーー今日も何か買っていくか?」
露店の屋根の下から笑みを浮かべながらエレーナに声を掛けたのは果物屋の店主パウル.彼は丸眼鏡を掛けた白髪の50代男性であるが肌は若々しく艶があり,日々の労働に耐え続けた肉体は鍛え上げられている.彼こそが彼女にアンドレイの営む酒場を紹介した人物だった.
「パウル・アントネスク,小さい勇者と呼ぶのは止めて下さい.私は真剣に義勇兵として志願しようとしているだけですよ」
彼女は安易に勇者だと公言することは無かった.特にパウルのような普通の市民に話してはいない.しかし,小さな少女の姿でありながら「義勇兵として志願する」と言っていたため,彼には冗談で小さい勇者と呼ばれていた.勇者と普通の人間には明確な違いがあるが,一市民である彼がそんなことを知る由も無い.そして,彼女はいつも通りの笑顔のまま言葉を続ける.
「それはともかく,おすすめの果物は何ですか?」
「林檎だな.最近は上客が居るものだから,今日は大量に仕入れたんだ.どうだ,買わないか?」
「昨日貴方から買ったばかりですよ」
彼女がそう言うと,パウルは笑みを浮かべながら血のように赤く熟した林檎のツルを掴んで,彼女の身長程の高さにまで持ち上げて見せびらかす.それを見た彼女は少し間を置いた後,鞄の中にある紙幣を取り出しながら普段通りの声色で言う.
「……分かりました.赤い林檎を10個お願いします」
「おぉーーいつも,ありがとうな」
彼はお金を受け取り,彼女から差し出された袋に林檎を詰め始めた.そして,手を動かしながら彼女にこう言った.
「ところで,今日は妹を連れてきたのか?」
彼が妹と言ったのはアンナの事である.彼は酒場の常連であったが,ここ数週間は果物の仕入れ量を増加させるために忙しく,酒場には顔を出せていなかった.そのため,アンナの姿を知らなかったのである.彼女は林檎を目を細めて観察しているアンナを横目で見た後,彼の方を向いて返事をした.
「いえ,この前紹介して頂いた酒場で雇った傭兵です」
その言葉にすかさず店主の方を向いたアンナが話を繋げた.
「彼女の言葉を補足すれば,私は見習いの『魔法使い』だ.彼女に酒場を紹介して頂いたことに感謝する」
「そうかーーよかったな.まあ,色々と大変だろうが,早く一人前になって,小さな勇者を護ってあげようなーーほれ,一つあげるよ」
彼は笑顔でアンナに林檎を差し出すと,アンナは一言
「……すまないな」
と言ってから受け取った.そして,彼は笑いながらエレーナに話しかける.
「いやーー実のところ,少し不安だったんだよ.あの酒場は店主がやたらと強くて強盗とかが入るようなことは無いし,下手なチンピラみたいな奴も居ないから基本的には安全で,料理も旨く,展示物も面白い.だけど,たまーに訪れる,そこの魔法使いみたいな可愛い子が曲者でね,偶に酒場を吹き飛ばすことがあるんだよ」
その言葉を聞いた彼女は黙って話を聞いているアンナに少し視線を遣った後,再び彼に視線を戻す.その後も彼は話し続ける.
「あーーでも,建物が残っていることが多いから吹き飛ばすっていうのは言い過ぎたかな.さっき,『偶に』とは言ったけど正確に言えば12回,その内,半分は80年代の話で,近年は減少傾向にある.まあ,慣れれば,何となく分かるから,常連が酒場から避難したら,それについて行けば安全だろうね」
彼女は再び黙って話を聞いていたアンナに視線を送るが,直ぐにパウルに視線を戻す.彼の話は更に続く
「そうそう,毎回,数日で酒場を建てるから現場を見たのは一回だけなんだけど,あの酒場は見た目こそ平凡だが,そこら辺の建物と違って大量の金属が使われている.骨組みだけじゃなくて壁や床も金属で補強してあるが,完成した酒場はそういった物を一切外に出さないようにしてある.つまり,あの見た目はアンドレイの拘りという事だ.他にも……」
彼は彼女達に様々な事を話し続けた.そして20分程経った後,お喋りなパウルはこう言って話すのを止めた.
「……まあ,他にも色々と話せるが流石に飽きてきただろう.また今度買ってくれた時にでも話すよ」
「そうですね,是非お願いします」
エレーナは笑顔でそう返した後,彼女達は歩いて別の店に向かった.その途中でアンナは彼女に言う.
「荷物を運ばせてくれないか?」
「まだいいです.何か美味しそうな物を見つけたら教えてくださいね」
彼女達は市場を回って食材を中心に買い込んでいく.時間が経つにつれて荷物は増えていき,彼女が抱える布袋はその小さな身体よりも大きな物になっていたが,アンナが運ぶ荷物は彼女の元を訪れた時と変わらない.そして,太陽が真上で輝き始めた頃,彼女達はニコライ通りにある仕立屋に入る.少し経って店から出てきたとき,アンナは10kgの袋を大事そうに両手で抱えていた.その後,彼女達は帰路に就いたが,しっかりとした足取りで荷物を運ぶ彼女に対して,アンナの足は遅く,よろめいたりするなど安定性にも欠けていた.それを見かねたのか彼女は優しく声を掛けた.
「無理しないでください,その荷物は私が持ちます」
「いや,私が言い出したことだ,最後までやらせてくれ」
「分かりました.辛くなったら言ってくださいね」
宿に着いたとき,荷物を運びきったアンナは汗こそ掻いてはいないが,数歩ごとによろめき倒れそうになるほど消耗していた.一方,エレーナにそう言った様子は無く,数秒ごとにアンナが倒れないか,荷物を落とさないかを確認しながら部屋まで歩いて行く.
彼女達は焦げ茶色の両開き扉を開けて彼女の部屋に入った.その部屋は白色の高い天井を持ち,内壁は大半が薄墨色で塗られ,天井に近い部分には白を基調とした装飾が施されている.更にエレーナの背丈を軽々と超える巨大な窓にはスワッグバランスのカーテンを備え,光沢のある木製の床には模様が描かれた絨毯が敷かれていた.他にもガス灯のシャンデリアや暖炉,装飾が施された戸棚や柱時計,座り心地の良さそうな布張りのソファーや椅子,蝋燭の備え付けられた広い机に,枕が二つ置かれた天蓋ベッドなどの家具があり,絵画まで飾られていた.そして,別室には台所やお風呂なども有していた.
エレーナは部屋に荷物を降ろして,アンナに指示を出す.
「アーニャ,そのドレスは袋に入れたままベッドの隣に置いて下さい」
「分かった」
アンナは彼女の指示通りに荷物を降ろした.それから部屋を見渡しながら彼女に言う.
「椅子に座っても良いか?」
「はい.どの椅子も座り心地が良いので好きなところに座って下さい」
それから,彼女は食材を隣の部屋に運び込み,台所に置いていた洋包丁を手に取って,巨大な窓の傍で鏡のように磨き上げられた刀身を見つめながら話し始めた.
「お昼は私が作ります.何か食べたいものはありますか?」
「何でもいい,『好きに作ってくれ』て構わない.私も何か手伝って良いか?」
エレーナは子供のように輝いた目をしながら口元に笑みを浮かべて,抑揚のある声で返事をする.
「アンナ・二コラエヴナ,貴方は客人です.全部私に任せて下さい.それと『好きに作っていい』って言いましたよね.分かりましたよ.全力で作ります!」
「そうか,楽しみにしている」
そして,エレーナは別室へ移動して料理を始めた.一人になったアンナはローブを脱いで部屋の隅に置き,朱色を基調としたサラファン姿で銀の杖を壁に立て掛け,身に付けていたナイフと拳銃を机に置いた上で椅子に座った.それから少しの間は部屋を見渡して彼女を待っていたが,12分後にはエレーナが入っていった扉の傍まで音を立てずに忍び寄り,扉を無音で彼女の背中が僅かに見える程度に開いて覗いていた.それに対して,彼女は牛肉の塊を切り分けながら振り向かずに声を掛ける.
「アーニャ,部屋に入っても構いませんよ」
アンナは扉を開けて部屋に入ると,適当な壁に寄りかかり,普段通りの声色で言った.
「すまない,君が何を作るか気になってな」
「大丈夫ですよ,きっと貴方の口に合います」
そう返事をして,エレーナは料理を作り続ける.ザワークラウトを取り出し,キャベツ,キノコ等の野菜を切って鍋で煮る.何か喋っていたカマスの鱗を取り,三枚に降ろして別の鍋で野菜と煮込む.白鳥の羽毛を剥ぎ取り内臓を引き抜いて焼く.ソバの実を挽き割りにして牛乳で煮て,バターで味付けを行う.生地をフライパンで焼く.濃い紅茶を作る等,様々な調理を一人でこなした.
彼女の料理には時間が掛かった.太陽は彼女達の真上を通り過ぎて最も暑い時刻になった.それでも彼女は料理を作り続け,アンナはその背中を見つめていた.そして,外気が涼しくなった頃になってようやく料理は完成した.
彼女が作った料理は一度に机の上に並べられる.きつね色に焼けた厚みのある円状の生地『ブリヌイ』,酸味の強いキャベツのスープ『シチー』,魚のスープ『ウハ―』,白鳥の丸焼き,ぽろぽろしたソバ粒の粥『カーシャ』,そして大量の林檎に少量の干し杏子と,エゾイチゴ.飲み物はティーカップに入れた濃い紅茶を花瓶のような形をした金属製の湯沸かし器『サモワール』のお湯で適度に薄めた物だった.それらが白いテーブル掛けの上を埋め尽くしていく.エレーナは椅子を引いてアンナを座らせると子供のような笑顔で話しかけた.
「アーニャ,私,全力で作りました.ぜひ食べて下さい!」
「あぁ,頂くよ」
そう言った後,アンナは山のように積み重なった『ブリヌイ』の一つを取ってバターをかけてから口に運び,『ウハ―』の油の乗ったカマスの切身を齧り,更に白鳥の丸焼きからナイフで肉を切り取って食いつく.そして,ジャムを口に含んで紅茶を飲んだ後,少し高めの声でこう言った.
「お母様の料理よりも美味しい」
「それって褒めていますか?」
エレーナが目を細めながら聞くと,アンナは真剣な表情をしてその目を見ながら答える.
「あぁ,お母様は私の知っている一番美味しい料理を作る人だからな」
「そうですか,ありがとうございます」
それから,エレーナも席について目の前の料理を少しずつ減らしていった.彼女は作った料理を口に運んで舌鼓を打ち,紅茶の匂いを堪能してから口を付け,林檎を次々と齧っていく.アンナはその様子を見つめながら料理を味わっていた.
何時しか太陽は黄金のように輝き,空は赤く染まり,彼女達を照らす光も弱くなっていた.エレーナが薄暗くなった部屋でシャンデリアの灯りに火を入れると,蝋燭と同じような色の暖かい光が彼女達を照らし始める.そして,彼女はベッドの方まで歩いて行き,葡萄酒を携えて戻ってくると,笑顔でアンナに声を掛ける.
「アーニャ,フランツィヤ・クーリツァの葡萄酒を開けますが,どれくらい飲めますか?」
エゾイチゴを口に運んでいたアンナはそれを飲み込んで,少し間を置いてから目を下に遣って答える.
「……すまないが,殆ど飲めない.一口含むだけで記憶が吹き飛ぶから帰れなくなる……本当に申し訳ない」
「分かりました.今度は別の飲み物も用意しておきますね……」
残念そうに言葉を発したエレーナはグラスに葡萄酒を注いで一人で飲み始めた.林檎を齧りながら一本目を飲み干し,机の上に置かれた拳銃を見ながら二本目を飲み干し,三本目の葡萄酒に差し掛かった頃,彼女は突然アンナにこんな事を聞いた.
「アーニャ,貴方の理想的な勇者像とはどの様な物ですか?」
ジャムを掛けた『ブリヌイ』を少しずつ口に運んでいたアンナはそれを食べ切った後,彼女の目を見て答える.
「優しく,民に寄り添い,害為す者共を打倒する絶対的な力と,道を逸れることのない強い心を持つ勇者だな」
「私も大体同じですが,信心深いことも必要だと思います.過去,そして現在においても勇者は教会と深い繋がりがありまして,例えば,現在の勇者養成学校の運営は国と教会によるものです.しかし,私は10歳まで教会に行ったことが無く,勇者養成学校を出た後は一度も教会を訪ねた事がありません.つまり,私は信心深くないと言って良いのでしょう.更に魔法も使えないということで弱く,勇者としての資質は無いのです.それでも,貴方は私に付いてきますか?」
彼女の言葉にアンナは真っ直ぐに彼女の水晶のような青い瞳を見てこう答えた.
「付いて行くからそんなに心配しないでくれ.それと,レーナは自分を過小評価している上に悲観的に見過ぎているな.勇者としての資質は生まれ持った雷属性の魔力と勇者固有の良感情を糧に事象を……教会風に言えば奇蹟を起こす事が出来る能力くらいで,特に後者に関して君は200年前の今よりも強大だった勇者達と同程度の能力を持つ.それに魔法使いとしての才能もあるから努力すれば強くなれる.それ以外の事なんて意識して努力すればいくらでも身に付ける事が可能だ」
「……分かりました」
エレーナが目線を逸らして小さな声で返事を返したため,アンナはこんなことを言った.
「……まあ,どうしても無理だったら『勇者を辞める』選択も無くはない.私はその為の手段を持ち合わせている.相談してくれれば,その後の支援も含めて協力するから安心して欲しい」
アンナは彼女に『勇者を辞める』という選択肢を示した.それは,彼女にとっては有り得ないと言っても良い物であったため,彼女は俯いて眼を逸らしながら話し出す.
「……勘違いしないで下さい.勇者は私の小さい頃からの夢です.辞めたいと思ってはいません……私が不安なのは貴方が私を才能や素質が有ると言う根拠を示さないからです.貴方は以前私の事を『生粋の魔法使い』だと言いましたが,私の家族はお母様や二人の妹,戦死した父親も含め全員が魔法使いです.その環境に居て魔法が使えないのなら,私には魔法使いとしての才能なんてありません」
「そうだな,すまなかった.根拠を説明するから,よく聞いてくれ」
アンナはそう言った後,彼女が目線を戻したのを確認してから話し始める.
「『生粋の魔法使い』と言った根拠だが,君は勇者の特徴である雷属性,それとは別に火属性の魔力も備えている.どちらの魔力容量も養成学校の連中よりも多く.今の土属性の魔力しか持たないアンドーリャどころか,彼が全盛期に備えていた雷属性の魔力容量よりも多い.それほどの魔力を鍛えずに保有しているなら『生粋の魔法使い』としか言いようが無いな.魔法が使えないのは,二種類の魔力を備えている関係で波形が歪んでいるからと私は考えている.だから,私が教えれば魔法を使えるようになる」
アンナは紅茶を一口飲むと,更に話を続けた.
「それと,勇者固有の能力に関しては,魔法で計測したとしか言いようが無いな.私は勇者,魔王どちらでもないから,そう言った能力の強弱は魔法で計測する以外の手段が無い.これで私の話は終わりだが,これでいいか?」
魔法の属性は一般的な区分では錬金術の四大元素(火・風・水・土)と第五元素の『エーテル』とも呼ばれる勇者の力に分類されていた.アンナの言う雷属性というものは存在せず,その区分では『エーテル』に含まれていた.アンナの所属する魔法使いの派閥で使われている拡張した区分では,四大元素と雷属性,勇者と魔王の力としての第五元素『エーテル』という分け方となっていた.しかし,エレーナはその事には触れずにこんな事を聞いた.
「アンドレイ・アレクサンドロヴィチが雷属性の魔力を失っているのは,彼が勇者では無くなったからですか? もし,そうなら勇者では無くなった原因は一体何ですか?」
アンナは直ぐに答えようとしなかった.下を向いて暫く間をおいてから,彼女の方を向いて答える.
「…………そうだな.アンドーリャは元勇者だ.勇者固有の能力を消し去った時に紐付いていた雷属性の魔力も一緒に失ったから,その通りだな.原因は……分かった.正直に答えよう」
アンナは紅茶を一口飲んで話し出す.
「アンドーリャは勇者であることが嫌になったんだ.彼が現役の頃は彼より優秀な勇者が何人か居てな,それで,ある戦闘で彼の師団が殿を務める事になったが,彼以外は魔王に皆殺しにされ,彼自身も手足が吹き飛んでいた.それで……私のお父様が拾って治療した.死に掛けた事と以前行った反乱の鎮圧で同郷の人間を多数殺した事で嫌気が差していたらしく,別人に成りすます為に勇者の力を私のお母様が取り除いた.魔力を偽装する程の技量は当時の彼には無かったから仕方が無かったんだ.君は恐らくそこまでしなくても大丈夫だろうが……な」
彼女は普段通りの様子でこう言った.
「真の勇者は敵であれば息子すら殺害します.彼は覚悟が足りなかったのかもしれませんね」
「……彼は望んで勇者になった訳じゃないから仕方ない」
その後も会話を挟みながらエレーナはお酒を飲み続け,食の細いアンナは目の前にある料理を減らしていく.そして,アンナは更に二時間以上かけて完食した後,目の前で座りながらお酒を飲み続ける彼女にこう言った.
「ありがとう.実に美味しい料理だった.一応聞くが,普段から今日みたいな料理を作っているのか?」
「いえ,実家に居た頃はフランツィヤ・クーリツァ料理を中心に作っていて,週に2,3食だけは,今日のように伝統的な料理を作っていました.私の一番自信がある料理を美味しいと言って頂けて本当に嬉しいです!」
彼女は笑顔で返事を返した後,食べ終わった食器を台所へと運び始めた.その様子を見てアンナが尋ねる.
「もし良かったら,片付けを手伝わせてくれないか?」
「ダメです.清掃も食器を洗うのも私の仕事です.アーニャは休んでいて下さい」
そうして,エレーナは一人で後始末を行い.アンナは暫く休んだ後,日の落ちた人気のない暗闇の中を一人帰っていった.
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