拝啓、青猫様

 これは、青い猫様と、眼鏡の少年が活躍する、

 某国民的なアニメに出てくるアイテムを元に、

 書かれております。


◆◆◆


 このドアは、どんな所にでも行けるドアです。

 そんな売り文句と共に、昼時の大きな広場にて、その商品は公開された。


「これは嘘じゃありません。あなたの望む所、好きな場所、国内はおろか、外国にだって行くことができます」


 要は、テレポートの応用なのだとか。

 様々な実験を繰り返した上で公開されてはいるが、それでも簡単には信用できない観衆。

 物は試しにと、ランダムに人を選び、そのドアを使わせる販売員達。

 疑問の声は徐々に、称賛へと変わっていく。

 値段設定がまだまだ高い為、購入を決める者が未だに出てこないが、いかにも金持ちそうな男がドアを見て、足を止めたのが目に入る。

 後もう一押し、売り手側の誰もがほくそ笑む中、


「彼女の元へ、行きたいです」


 一人の少年の登場によって、雲行きが怪しくなる。

 ドアは──少年の望む場所へと、連れていってはくれなかった。

 開かれたドアの向こうには、ドアの反対側に立っていた人々の姿しかない。


「どうしてですか? どうして彼女の元に、行けないのですか?」


 泣きながら、呆然とドアを見つめる少年。


「どこへでも行けるはずなのに、このドアは──天国に、僕を連れてってはくれないのですか?」


 少年の会いたい人物とは、そもそも……。

 その場にいた観衆、販売員さえも口をつぐみ、少年に憐れみの視線を向けても、慰めることも、この場から引き離すこともせず、時間だけが無為に過ぎていった。

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