第13話 答え合わせ②
5分は待っただろうか。
1人の男子を引き連れてこっちへやってくる小飼の姿が見えた。
だが、少し様子がおかしい。
その男子は大層困惑した様子で小飼に手を引っ張られている。
……これは俺が呼んだことをろくに説明してないな。
いや、本人的には説明したつもりだろうけどそれが伝わってない感じか。
淡々と単語のみを言い連ねる小飼の姿がたやすく想像できる。
それよりも問題なのは……
呼ばれた男子が今朝教室で俺に「黒田に近づくな」と警告してくれた優しい彼にめちゃくちゃ似てたことだ。
というか、本人だ。
おお! なんとここに来てようやく彼の名前が篠原だということが明らかに!
誰得の伏線回収キタコレ。
俺はすぐに陰キャモードに切り替え、迎撃準備完了だ。
篠原は俺の顔を見た瞬間、拍子抜けしながら怪訝な顔をした。
「え、なんで出雲がこんなところにいんの?」
「あの、篠原君を呼んだのは実は僕なんだ」
「じゃあ子飼は?……ってあれ、いねぇ」
篠原は小飼の姿を探したが、もうすでに音もなく消えていた。あやつは忍者か。
「小飼さんには篠原君を呼んできてもらっただけだから」
「なんでわざわざ小飼に頼んでんの?」
「そ、それはその……」
まさか「お前の名前を全く覚えてなかったからだ、影の薄い奴め」とは言えない。
もごもご口ごもっていると、
「あ、そうか。お前が一人で行っても誰も相手にしてくんないからか。ごめんなー、言いにくいこと訊いて」
ウザイにやけ顔のまま勝手に納得された。
実際それも正解だから文句を言えないのが悲しいところだ。
「つーか、呼んだのお前なら帰るわ。お前なんかのために俺の有意義な時間を費やす気なんてさらさらねーし。じゃーな、ぼっちくん」
そう言い残してその場を去ろうとする篠原の背中に俺は一言声をかけた。
「あの、相沢さんについての話なんだけど……」
途端、篠原の動きが止まる。
つかつかとこちらに戻って来ると、俺の胸倉を掴んだ。
「どこから聞いた話だ、それは」
「ええ!? 急にどうしたの!?」
篠原の変貌に驚くフリをしながら俺は内心でほくそ笑んだ。
やはりか。
……と言っても全部坂倉が推理したことだが。
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