第3話


"はじめまして!いいねありがとうございます!ふみといいます。よろしくお願いします!"


ありきたりだけど、きちんとした挨拶に

少し好感を覚えた


"はじめまして、こちらこそありがとうございます。奈緒と言います。よろしくお願いします!"

私もごく普通の返事をして、彼の返信を待つ


アプリでやりとりをしている人の中には、

一体どうしたのだと心配になってしまうほど

会話のキャッチボールが危うい人や、

そちらは悪くないのだが個人的にどうしても

好きになれなさそうな文面の方が結構いる

そういった人たちの中で彼とのやりとりは

朗らかで真面目で、気持ちが良かった

メッセージが来るテンポも、分量も、内容も

ちょうど良かった

年下の後輩に懐かれているような、

そんな軽やかな嬉しさを彼に抱いたのを憶えている


でもだからこそ、ときめきやドキドキというより、

年下の男の子に抱きがちな、かわいいなー

という気持ちにしかならず、

次第に彼への連絡頻度は落ちていった


..


(あ…もう4日ほど返していないな…)

仕事終わり、疲れ切った体で家に帰り、

最低限のすべきことをして布団に潜り込んだ私は、アプリの存在を思い出していた


潔い人ならば、もう次へと見切りをつけている頃だと思う

まだなんとなく別れた元彼を吹っ切れずにいた私は

アプリの誰と会うこともまだ乗り気ではなく

必然的にやりとりも消極的になってしまっていた

それに輪をかけて急に仕事が忙しくなり、

私は彼どころか、やりとりをしていた全員への返信を止めてしまっていたのだ


それでも明日はやっと休み

特に予定はないが、ゆっくりして

夕方から買い物にでも行こうかな

返事は明日返そう、そう決めて私は

電気を消した



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藤とミモザと金木犀 @htr_mc

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