第2話

..


彼と出会った頃、私は手痛い失恋をして、

日々を紛らわすものは仕事しかなかった


もうあの人以上はいないと思っていたし、

しばらく恋愛なんて、とも思っていた

だから、予定のない休みの昼下がり、

恋愛アプリに手を出したのは完全に、

魔がさした としかいいようがない


これまでその手のものに興味もなく

むしろ嫌悪感さえ持っていたから、

その先に広がる世界は、最初とても

白々しく、軽薄に見えた


(インスタントに手に入れた恋は

 きっと終わるのも早いのだろうな)

ズラッと表示される男性達の厳選された

プロフィール写真を浮かない気持ちで

眺めながら私は白けていた


そんな気持ちでインストールした

恋愛アプリは、しばらくの間退屈で退屈で

死にそうな時になんとなく見るだけで、

何も発展せず、変わらない日々が続いた


( やっぱりさ、自分が生きてきた人生の中で出会った人と恋愛したい 例えばバイト先とか、学校とか )

学校なんてとうに卒業して、職場には10も20も年上の男達しかいない日々の中で、

出会いなんて到底望めないのに、

私はまだそういう恋愛を諦められなかった



それでも今までの人生の中でこれほどまでに

不特定多数の男性達からアプローチを受けることがなかった私にとって、

この状況は自分が恋愛市場においてまだ必要とされていると思うことができたし、男性からのいいね!が溜まっていくたびに、振られて傷ついた自尊心が少しずつ、少しずつ、

癒えていくのを感じていた


..


その日も、せっかくの2連休だというのに

予定がなく、朝からゴロゴロしていた私に

恋愛アプリから1通通知が届いた


開いてみると、そこには

横を向いて、遠くを見ている男の子の

写真が映っていた

正面からの写真はないし、歳も随分下だった

プロフィールも簡素で、どんな人か全然わからなかった

それなのに、どうしてか、

この人に惹かれた自分がいた

話をしてみたいと思った


もし運命があるとしたら、

それがどんなふうに私たちに知らせるのか

わからないけれど、私はこの時感じた気持ちを

合図だったと思いたい



私は思わず、ハートマークを押した



ピンクの花が咲き、キラキラ光る演出に

切り替わった画面が、

私と彼が出会ったことを祝福していた


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