第61話 水族館で告白するのですが?
や、ややややってしまいましたどうしましょう! 自然体を装ってはいたけどもう心臓が破裂しそうです! 翔馬くんが食べたアイスに口をつけちゃいました! 間接キス……!
耳に仕込んでいるワイヤレスイヤホンから声がします。ずっと通話しっぱなしだから相手にも状況は伝わっているようです。
『ほえー。やるじゃないの翔馬。自分からツーショットだなんて』
「榊さん。これで上手くいってるの?」
『あの唐変木の行動を考えたら怖いくらいに成功してるわ! 後もう少し押せば翔馬は沙耶香のものよ!』
実は、ここまでずっと榊さんにアドバイスをもらっていました。おおまかな指示をくれていたのですが、ここまで上手くいくとは驚きです。ほんと、榊さんには感謝しかありません。また今度美味しいスイーツを買って届けないと。
私たちは大水槽から離れて次のクラゲコーナーに来ました。到着するなり翔馬くんはまた水槽に張り付いています。あんな翔馬くんを見ることなんてないからすごく新鮮。もし、翔馬くんとお付き合いできたらまた水族館もいいかもしれない。
……けど、やっぱり妬けます。私よりもお魚さんがいいみたいに思えて嫉妬しますね。
翔馬くんの隣に立って手を繋ぎます。ちょっと勇気を出して指を絡めて。
「え!? 白崎さん!?」
「手、繋がない?」
「あ、うん手ね! 繋ごうか!」
戸惑いながらもしっかりと受け入れてくれる翔馬くん。もう、ずるいです。翔馬くんがとても優しいから私はこうして甘えてしまう。
指先から直接翔馬くんの体温を感じて歩いていきます。悲しいことにそろそろお昼。青山さんと交代の時間が近づいてきました。
私たちは最後にお土産屋さんに立ち寄ります。ここでお母さんたちにお土産を買いますか。あと、ずっと私をサポートしてくれた榊さんにもなにかお礼を買わないと。
『あ、二人セットのやつお願いできる? 駿太とお揃いにしたい』
さすがはカップル。小物の注文をもらったのでそれを買いましょう。
榊さんと河野くんへのお土産と、両親へのお土産にクッキーを買います。そうだ、補習を頑張っている堀越くんにもお菓子を買ってあげますか。
そして、翔馬くんにはなににしよう? やっぱりお揃いの小物……。
迷った末にキーホルダーを買いました。イルカのペアで合わせるとイルカが抱き合っているように見えます。
お会計を済ませて店を出ると、大量の荷物を抱えた翔馬くんの姿が。
「お待たせ」
「大丈夫だよ」
「翔馬くんもいっぱい買ったんだ」
「うん。あ、そうだ。白崎さんに渡したいものがあるんだ」
そう言うと、翔馬くんは小袋を取り出しました。中からは私が買ったものと色違いのキーホルダーが。
「これ、プレゼント。ペアが恥ずかしかったら受け取らなくてもいいけど……」
「ううん! ありがとう! ……実は、私も同じものを……」
私もキーホルダーを取り出す。合計四つのキーホルダーを見て私たちは笑います。
「考えることは同じなんだね」
「うん。ほんと、面白い」
「白崎さんと考えが同じで嬉しいよ」
翔馬くんが好きな笑顔を見せてくれます。嗚呼、私もう幸せです。
『さーやーかー?』
「ひゃい!」
「ひゃい?」
「あ、なんでもないよ」
『なに満足そうにしてるの? 話だけ聞いてるといけるわ! 告白の時間よ!』
榊さんからGOサインが出ました。出ちゃいました! いいのでしょうか?
でも、いきます! 白崎沙耶香人生最大の勝負です!
「あの、翔馬くん!」
「ん? どうしたの?」
「その、実は……ずっと、私、「あ、見て白崎さんペンギン!」好きでした!」
名前のタイミングで翔馬くんが興奮して声を発してしまいました。もちろん、好きでしたは聞こえたみたいだけど別の意味に取られてしまって……。
「白崎さんもペンギン好きなんだ! 可愛いよね!」
「あ、うん。可愛いよね……」
「俺、昔から水族館と言えばペンギンだって思ってて……」
人生最大の勝負が散りました……。これ、諦めろって事なんでしょうか?
『この……ッ! アホ馬鹿鈍感クソ唐変木ぅぅぅぅ!!! 沙耶香! 今すぐそこのアホに電話替わって! 顔が三倍になるまで引っぱたく!!』
「お、落ち着いて榊さん」
『落ち着いていられるかぁぁぁぁぁ!!』
電話口で暴れていた榊さんでしたが、ようやく少し落ち着いてくれたみたいです。
『と、とにかく諦めるとか言わないでよ』
「でも……」
『帰ってきたら夏祭りがあるでしょ? そこであたしがもう一度助けてあげるから頑張って!』
「う、うん!」
『今度変に邪魔したら翔馬のやつ瀬戸内海に沈めてやるんだから!』
物騒な言葉を最後に電話が切れました。
今回は残念だったけど、次は必ず! 夏祭りできっと翔馬くんとお付き合いして見せます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます