第58話 お友だちと相談するのですが?
や、ややややってしまいました! どうしましょう……はしたない女の子だと思われたのかな……? もしそうなら、泣きそうです。
翔馬くんに裸を見せるなんて、そんなの恋人みたいなもの。だから、恥ずかしさを我慢して思い切ったのに……。
翔馬くんはあんまり興味がなさそうでした。その理由は、また青山さん。二人は日頃一緒にお風呂に入っているらしいです。だから、私の裸になにも反応がなかった。
……私、翔馬くんとお付き合いできるのでしょうか? 青山さんに勝てる要素なんてありますか? 諦めろってことですか?
悲しい気持ちを引きずりながら服を着て、自分の部屋に戻ります。そして、スマホを手に取って連絡アプリを開き、榊さんと話す。
『言われたとおり、一緒にお風呂入ってきたよ』
『お疲れ様。どう? 疲れたでしょ? でもさ、それが幸せなんだよね~』
『疲れた?』
『うん。綺麗な景色を背景にピーしたんだからさ。今日はゆっくり休んで』
「そんなことしてません!」
思わず叫んでしまいました。既成事実を作れば勝てる。お風呂に入れば青山さんなんて敵じゃない。
そう言われて一緒に入浴したのに。既成事実って裸を見せることだと思ってました。それが、せ、せせせ……!
だめです。顔が真っ赤になってるのが鏡を見なくても分かります。
『してない! 何もしてないよ』
『え、うそ!? 極上のデザートを前に何もされなかったの!?』
『うん』
『あの腰抜け! あたしがちゃんと文句を言ってあげるから!』
『大丈夫だから!』
翔馬くんに変な目で見られちゃう。それは、本当にいやです。
体の関係云々はまだ早いです。そういうのは、きちんとお付き合いを始めてからでないと。
そういうわけで、なにかアドバイスを求めます。
『その、ピー以外でなにかない?』
『そうねぇ……』
『そうだ、近くにどこかデートスポットはないの?』
『えと、水族館が……』
『決まりよ! 明日水族館に連れ出しなさい! 大水槽の前で告ればいけるから!』
「そうかなぁ?」
不安です。そんな簡単に成功するなら、もうとっくに交際できているのではないかと思ってしまいます。
……怯えて思わず告白を断ってしまった私が言えたものではないですが、振られたときのショックが怖いです。一度断ってしまっているから、もう私に興味がなくなったのに必死にアタックするほど惨めなことはありません。
『本当に大丈夫?』
『今ネットで調べたわ! 正午直前に美しくライトアップされる大水槽があるらしいわよ。狙うはその時間ね!』
『わ、分かった!』
『頑張れ! ダブルデートに行ける日を楽しみにしてるから!』
『(頑張れのスタンプ)』
榊さんに応援のメッセージをもらい、頑張ろうという気持ちが湧いてきました。きっと、翔馬くんとお付き合いまでもっていってみせます!
そうと決まれば、早速準備しなければ。少しでも可愛いと思ってもらえる服を選びます。
また、ちょっと攻めた服装にしてみましょう。翔馬くんがすこしでも意識してくれたら嬉しい。キスくらいまでは許されますかね?
持ってきた服を広げると、ちょうどいいものがありました。明日はこれを着ていくようにしましょう。
明日が本当に楽しみです。
「翔馬くんとデート……えへへ……」
顔が思わずにやけます。だらしない顔をしているとは思いますが、仕方ないのです。
明日に備えて早く寝ることにします。……でも、眠れません。隣の部屋に翔馬くんがいると思うと、どうしても意識してしまいます。
部屋の扉に鍵をかけ、布団に潜り込みます。少しだけなら、きっと気持ちよく眠ることができますよね。
「んっ、翔馬くん……っ!」
私の夜は、こうして過ぎていきました。
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