第53話 海でトラブル発生なのですが?

 ビーチボートを海に浮かべ、俺たちは三人で海を満喫する。荷物の運び入れを終えた志乃さんが荷物を見てくれているので、安心して遊べるぜ!

 他の人に気を付けつつ、ボートを浮かべて泳ぐ。真夏の日差しと冷たい海水が合わさり、夏の空気を全面的に感じることが出来た。煌めく水面が眩しい。

 水着姿の男女の姿も、海に劣らず綺麗だ。けど、やっぱり彼らでも勝てないものがある。


「ねえ翔馬くん! 一緒にボートに乗ろうよ!」


 あぁ、眼福やぁ……。白崎さんの水着姿は、この海に舞い降りた輝ける天使様。露出高めのチューブトップは、惜しげもなく彼女の色白の肌を晒しており、青い大海原を一層引き立たせていた。

 泳いでいる人々の視線を集めている。男女関係なしに羨望の眼を向けられているのがよーく分かった。

 俺は幸せ者だよな。こんな可愛い美少女と同じボートで遊べるとかすげぇよ。俺、前世は聖徳太子とかだったりしない?

 白崎さんの誘いに乗ってボートへ。彩乃も一緒だから、少し狭いな。直接肌が触れあって、温かな体温を感じる。


「翔くん……そんなところ……だめっ……」

「うそっぽい妙な声出すなよ……ちょっと足が触れてるだけじゃないか……」

「ちぇー、ノリ悪いの。ここは、勢いのままに押し倒して、白崎やみんなが見てる前で、いつもみたいにあんなことやこんなことをする流れなのにさ」

「いつもそんなことしてねぇよ! てか、それどんな悪逆非道のド畜生だ!?」


 公衆の面前で幼なじみを襲うとか、即座に警察がやって来るレベルだよ……ハメの外しすぎはダメ絶対。

 必死にツッコむ俺の何が面白かったのか、彩乃がケラケラと笑う。


「冗談だよ。そういうのは夜にベッドの上で……」

「やらないからな!?」

「えー!? けち。でもいいよ。私、何か買ってくるね。二人ともほどほどで戻ってきてね」


 ボートから飛び降りた彩乃が泳いで岸まで帰っていく。というか、あいつ泳ぐの早いな。多分俺負けてると思うんだ。

 彩乃が行ったことで、ボートは俺と白崎さんの二人だけの空間となる。なんか、急に気恥ずかしくなってきたな。


「あの、さ。翔馬くん……」

「ん? どうしたの?」

「あのね。いろいろ考えたんだ。それで、改めて返事させてもらえないかな?」


 ん? 改めて返事って、俺、何か聞いたかな?


「修学旅行の時の告白。あれ、私とお付き合いして――」

「わっきゃあああぁぁぁっ!?」


 悲鳴が聞こえた。ふとみあげると、男性が一人サーフボードと一緒にこちらへと落ちてきていた。

 その人は、俺たちのボートのすぐ横に落下。激しい揺れと衝撃で俺たちを海へと放り出す。


「ご、ごめんな! とんでもない波にかっとばされて」

「いえ。気をつけて」

「すまん! じゃあ!」


 男性がどこかへと泳いでいった。なんだったんだ?

 というか、白崎さんは!? 同じくボートから飛ばされたはずだけど……? それに、あの人のせいで聞きづらかったけど、なんかお月見がどうとか……。

 ボートをひっくり返すと、肩に手が乗せられた。


「翔馬くん。大丈夫だった?」

「白崎さんこそ。平気?」

「うん。体はなんともないよ」


 それなら安心だ。俺は、ボートによじ登って白崎さんに手を差し出す。


「はい。どうぞ」

「ありがとう。でも、ごめん。行けない」

「どうして?」


 そういえば、白崎さんはおかしな姿勢になってるな。口から下はすべて海中に沈めてるし、手とかも出してないし……。

 ……待った。まさかね? そんな漫画みたいなことが現実であるわけないし……。


「その、水着がどっちも脱げちゃったの。ボートにあがったらその……見えちゃう……恥ずかしい……」


 はいでた海のお約束展開! 水着が脱げちゃったイベント! こういうのマジであるんだなぁ。というか、チューブトップって脱げるんだ。

 というか、まずいなこれ。上も下もってことは、白崎さんが隠せているのは前だけということになる。それは非常によろしくないぞ……!

 とりあえず、白崎さんとボートを人目に付かない場所に移動させて、海に潜る。波と潮の流れから考えて、水着が流れ着いたはずの海底を探す。

 あった。あれ、白崎さんの水着! ただ、問題があった。


「あんのボケ変態ガニ! 水着挟んで逃げやがった!」


 白崎さんの水着を挟んだカニが、猛スピードで海底をかけていってやがる。あいつ、とっ捕まえてカニ鍋にしてやらあぁぁぁぁ!!

 大事なものを取り返すため、カニと全力の鬼ごっこを開始する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る