第52話 三人で海水浴なのですが?

 目的地までにある最後のサービスエリアを越え、トンネルを抜けた。途端、窓から見える大海原! 高速道路を走りながら見る海は、これはこれでいいものですなぁ。

 そのまましばらく走った後に、白崎さん家の別荘に到着した。車から降りて建物を見上げる。


「でっかいなぁー……」

「ありがとう。ここ、お父さんが一目惚れで買ったんだ」


 立地最高だね。何部屋もありそうな大きな建物は、一家族では部屋が余りそうだ。また、徒歩で行ける距離にビーチまであるし! さすがにプライベートビーチなんかじゃないけどね。

 白崎家の財力に感動と驚きを感じていると、白崎さんのお父さんが荷物を下ろしながら提案してくれる。


「三人で先に海に行ってきたらどうだ? 荷物は俺たちが部屋に入れとくからさ」

「そうしない? 行こうよ翔馬くん」

「あ、うん。ありがとうございます」


 早速、家に入って適当な部屋を着替え用に使わせてもらう。白崎さんと彩乃も手頃な部屋に入っていった。

 俺は、さっさと服を脱いで海パンに着替える。早着替えは割と得意なほうで、一分もあれば終わる。

 着替えを整理し、部屋を出る。先に行くのもなんか申し訳ないので、二人を待つことにしようか。

 そのまま壁にもたれて待っていると、部屋の扉が開く。


「おまたせー。どう? これ」


 彩乃がポージングを決める。前屈みの姿勢でそれをやられると、健全な男子高校生の俺としては、どうしてもその一点に視線を向けてしまう。いかんいかん。こいつのそこなんて時々風呂場で見せられるだろ。気にしない気にしない。

 腕を組んで首を振る俺のことが気に入らないのか、少し不機嫌になられた。


「ちょっと、なにか反応ちょうだいよ」

「似合ってるよな、その水着」


 彩乃の水着は、黒を基調とした大人っぽい水着だ。控えめでありながら、けれども目立つところは目立たせるというかなりいいやつ。彩乃の魅力をふんだんに生かした一品だった。

 まぁ、評価を求められても困るんだけどな。俺、彩乃のこの水着は家で妙な踊りしてたときにもう見てるし。

 彩乃に詰められていると、また扉が開いた。出てきた白崎さんを見て、思わず息を呑む。


「ど、どうかな……?」

「……攻めすぎでしょ。尻軽って言われそう」


 彩乃が嫌みを口にしたが、そんなことも気にならないほど、白崎さんは輝いて見えた。

 白地に花柄がついたかわいらしい水着。俗に言うチューブトップというやつで、布面積は少し少なめだった。白崎さんのイメージから大きくかけ離れた、確かによく攻めた水着だった。

 苦しそうな胸は形を変えていて、少し激しい動きをすればすぐにずれてしまいそう。何というか、目に悪い水着だった。

 脳が働きを停止していると、両手を彩乃と白崎さんに握られる。


「「行こう?」」


 そのまま、二人に連れられるままにビーチへと歩いていく。途中、親父とばったり遭遇した。海の家で買ってきただろうアルコール入り飲料を六つ持ってきている。というか、よくそんなに持てたな。


「わぁお。沙耶香ちゃん、それ、かなりいったねぇ」

「あんまり見るなよ。絵面的にはアウトだから」

「なんだよ翔馬。独り占めか?」

「うっせ」

「そうだ。この先に人気のない岩場があってだな……」

「子供に何吹き込んでんだこの馬鹿親父!」


 そういうのダメ絶対。白崎さんは関係ないけど、そんな話に耳ざとい奴がいるんだよ!

 ほら見ろ! 彩乃が肉食獣みたいな目をしてるじゃないか! 海は泳ぐものであってそういうところじゃない!

 親父の背中を押して家の中に帰し、気を取り直して海へ。お昼を少し過ぎたくらいの海は、人で溢れていた。

 空いているスペースにパラソルをたてて陣地を確保。小さめの机も広げる。

 肌を焦がす熱い日差しの元で作業したので汗をかいた。これは、早く海で泳ぎたいものだ。

 そう思っていると、彩乃がバナナボートを、白崎さんが浮き輪を借りてきた。


「さあ、泳ぐよ!」

「行こう翔馬くん!」


 楽しそうな雰囲気の二人に連れられ、俺も真夏の海へとダイブだ!

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