第47話 アドバイスをもらうのですが?

 家に帰ってきた私は、買ってきたお土産を机に置きます。修学旅行、本当に楽しかったです。最後は……残念だったけど……。

 でも、まだです。まだ諦めてません。榊さんや河野くんがせっかく協力してくれるんです。絶対に翔馬くんにもう一度振り向いてもらう!

 きっと、翔馬くんは私と距離を取るでしょう。でも、私から距離を詰めていけばもう一度修学旅行前のような関係に戻れるはずです。今度は、私から告白する。


「好きだって……」

「なになに? 好きな人でもできたの? あっ、もしかしてこの前話してた翔馬くん?」


 ひゃあっ! 驚きました。

 お母さんはこういった恋愛話が本当に好きです。いつも仕方なく話していますが、きっと、私の顔も緩んでるんだろうなぁ。


「うん。今度は私から告白しないとダメだから……」

「えっ!? 今度はってことは、告白されたの!? きゃーっ!!」


 お母さん……。


「でも、思わず断っちゃった。私ってダメだなー」

「あらもったいない! でも、大丈夫よ。チャンスはまだまだこれからもある。一度や二度の失敗で挫けちゃダメよ。お父さんを見習いなさい」

「お父さんを?」

「ええ。あの人、私が何十回も断り続けたのにそれでも告白を諦めなかったんだから」


 知らなかった。お母さんとお父さん、そんな風だったんだ。

 少し、参考にしてみたい。もう少し聞いてみましょう。


「で、なんでお母さんは受け入れたの?」

「え? 実はね、私もそろそろいいかなって思っていた頃に、大学の学校祭で皆が見ている前で告白されたのよ。さすがに恥ずかしかったから、ビンタして受け入れたわ」

「へ、へぇ~」


 ダメです参考になりません。文化祭で公開告白なんてしたら、「す」の段階で私が倒れちゃいます。

 一体どうしたら……?


「告白のタイミングを迷ってるのね」

「うん。いつならオッケーしてもらえそうだろう……」

「そうねぇ。何か、特別なイベントがある時が私のオススメよ。夏休みとか、文化祭とかね」

「なるほど……」

「他にも、確実に男を虜にできる方法があるわよ」

「えっ!?」


 そんな方法があるなら、ぜひともやりたい!


「クリスマスかバレンタインの日に、裸で自分の体にリボンを巻いて……」

「却下! 娘になんてことやらせようとするの!」


 翔馬くんに軽い女だって思われたくない! 普通の女の子として愛してほしい。だから、そんなことしません。

 お母さんが笑いながら買ってきたご飯を広げます。今日は、近くの回転寿司の店でお持ち帰りのセットにしてもらいました。たまには、こういうのも悪くない。


「さて、恋愛話はここまでにしておきましょう? ご飯を食べながら修学旅行の話を聞かせてね」


 そうですね。今はひとまず置いておきましょう。思い出話も立派なお土産です。

 私がお茶の用意をしていると、玄関の扉が開きました。お父さんが帰ってきたのかな?


「ただいまー! 紗耶香帰ってるかー!?」


 お父さんが鞄をソファーに投げて私に抱きついてきます。なんだか、子供扱いされてるみたいで少し照れる。私、もう高校生です。


「お父さん、コップ持ってるから危ないよ」

「ほらほら離れて。紗耶香が困ってますよ」

「うぅ……紗耶香ロス……」


 私のことを大切に感じてくれているのは分かるのですが、もう少し控えてほしいものです。嫌ではないけど、恥ずかしい。

 お父さんも交えて夕食です。話題はもちろん、私の修学旅行。

 楽しかったことや新たな発見を両親に話します。青山さんに襲われたことは……心配させるわけにはいかないから黙っておきますね。

 私が話すことを真剣に聞いてくれる。時にはリアクションを返してくれます。私は、いい両親に恵まれてますね。


「そうかぁ。楽しかったんだね。良かった良かった」

「うん。すっごくね!」

「いいなぁ。俺も紗耶香と旅行に行きたいなぁ」


 あっ、これはあれです。旅行に行くパターンです。


「今日な、会社で友人と話してたんだよ。いや、そいつらも子供が修学旅行に行ってて、旅行行きたいなって話しててな」

「へぇー。それで、行くことにしたと」

「そうなんだよ。夏休みとか利用すればいけるって思ってな」


 先の早い話ですね。今、五月ですよ?


「いやー、羨ましいわ」

「え? なにが?」

「友人だよ。夏休みに海の近くに行くって楽しそうに話してて少しずつ準備とか進めるっぽいけどね」

「なら、うちも行こうよ。別荘あるでしょ?」


 羨ましいと言わず、私たちも旅行に行けばいいです。修学旅行から帰ってきてすぐ旅行の話とは、少し贅沢な気もしますが。


「そいつらな、どうも一緒に行くらしいんだ」

「一緒に? 二家族同時ってこと?」

「らしい。どうも家族ぐるみの付き合いで息子さんと娘さんも仲良しだとか。うちは紗耶香がいるからそれだけで癒しだけど、そういうのも楽しそうだと思ってな」


 家族の仲がよくてお子さん同士が仲良し?

 一瞬、青山さんと翔馬くんの顔が浮かびましたが……まさか?


「ねぇお父さん。その人たちって名字……」

「ん? あぁ、二人は――」


 お父さんから話を聞いて、思わず笑ってしまいました。早くもチャンス到来です。

 これは、急いで榊さんと相談しないと。私は、さっさとお寿司を食べて自分の部屋に戻ります。

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