第43話 勇気を出して告白をするのですが?
皆には帰ってていいと言ったのに、結局全員付いてきた。天音も駿太もニヤニヤしてるし、俺が何をするつもりなのかもう分かってるんだろうな。というか、焚き付けたのこいつらだし。
さて、そんなわけで俺たちは近くのイルミネーション広場にやって来た。やっぱり、こういう告白って雰囲気が大事なわけよ。
肌寒い夜に、色とりどりのきらびやかな灯りに照らされる白崎さんはまるで、異世界にいるような白銀の妖精みたいに美しい。髪をかきあげる動作一つでも、周囲の視線を集中させている。
あまりの美しさに思わず見とれていると、不思議そうな顔をした白崎さんが声をかけてくれる。そのおかげで、俺の意識も現実に引き戻された。
「大丈夫?」
「あっ、うん。大丈夫」
「そう。それで、話ってなにかな?」
さっきから外野がうるさい。奴らはひとまず無視して、俺は本題にはいることにする。
袋から綺麗にラッピングしてもらったストラップを取り出す。二つで一つでストラップらしく、うさぎが持っているハートの半分がもう片方の半分とぴったり合わさるというもの。
恋人にオススメと店員さんが言っていたこのストラップの力も借りて、告白する。
「実はさ、白崎さんに言いたいことがあるんだ」
「うん。聞くよ」
「あの、さ。……白崎さんは、好きな人がいるんだろう?」
「へっ!? う、うん……」
「だから、ここでハッキリさせたいんだ。白崎さん、俺と付き合って欲しい!」
決意の言葉と共に、ストラップを白崎さんに差し出す。頼む、届いてくれ!
そのままの姿勢で時間が過ぎる。白崎さんからの反応はない。これは……そういう、ことなのか?
少し悲しく思いながらも顔を上げる。すると、視界にはいったのは予想外の光景だった。
色白な白崎さんの肌が、今や真っ赤に染まっていた。口元を手で覆い隠し、潤んだ瞳でストラップを見つめている。
恐る恐る、といった様子で白崎さんが言葉を発した。
「え、嘘? わ、わわ、私? 私なの?」
「うん。白崎さんが好きなんだ」
「スキー場で話してくれた、翔馬くんが好きな人って……昨日言ってた告白する相手って……!」
「うん。白崎さんだよ。俺は白崎さんが好きだ。大好きだ! でも、白崎さんに好きな人がいるって聞いちゃったから、ここで俺の想いを伝えたかった」
「そ、それは……」
「遠慮しなくていい。素直な返事を聞かせて欲しい」
めっちゃ緊張する。正直、答えを聞かずに逃げ出したい気分だ。でも、それじゃまだモヤモヤは続く。
想いが届くなら万々歳。断られたら、悲しいことだがキッパリと諦めるしかない。友達として近くにいられたら、それでいいから。
顔を赤くしたままの白崎さんは、何かぶつぶつと独り言を言っている。よく聞こえないが、多分、好きな人と俺のどちらを取るかで必死に悩んでくれているのだろうと信じたい。
「はわ、どうしよう……夢……じゃ、ないよね? え? 本当に翔馬くんが私に告白? なにそれ? 私、ここで一生分の運を使っちゃうの? いやでもこれ、一生どころか来世とかの分まで……?」
……だ、大丈夫かな? ところどころ夢とか運とか聞こえてくるけど。一体、どんなことを考えているのだろう?
俺の後ろにいた天音たちが白崎さんの後ろに移動する。天音と駿太は白崎さんの肩を叩いて前へと押した。
「ほら。念願の出来事でしょ?」
「そうだよ。あの唐変木がここまで言うってすごいよ」
「おい駿太! 誰が唐変木じゃい!」
さらっと失礼なことを言いやがる駿太に一言言ってやる。というか、念願ってなんだ?
二人の言葉を聞いた白崎さんが一歩前に出た。ストラップを包み込むように俺の手を握ってくれる。
「嬉しい。本当に嬉しいよ。翔馬くん、ありがとうっ!」
満面の笑みを見せてくれる白崎さん。あぁ、心が浄化されていくぅ……。
おっ、彩乃も祝福してくれるのか? スッキリした笑顔で白崎さんに何か耳打ちしている。なんか、それだけは意外だな。
彰は……血涙流して倒れてた。こいつはこんなやつだったな。
「てことは、白崎さん。俺と付き合って……」
「……うん。でも、でもね。……ごめんなさい」
決定的な一言が白崎さんの口から放たれ、白崎さんが一歩引き下がった。天音と駿太の驚く顔が見えるが、俺も多分、同じような顔をしてるんだろうな。
手に残ったわずかなぬくもりと白崎さんのほのかな体温が、今は恨めしい。
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