第42話 札幌を楽しんでいくのですが?

 スキー場から帰ってきた俺たちは、ホテルに着くなり各自の部屋へ。そこから、札幌散策のために荷物を各自で取ってくる。

 待ち合わせは二階の部屋。どうやら、俺が一番乗りしたらしい。

 彩乃たちが来るまで少し時間がありそうだな。さて、どうするか。

 なんて、考えているとスマホの通知音が鳴る。何かと思って見てみると、SNSにいいねが押されたという通知だった。

 ……ただし、その数は尋常ではないが。

 俺の過去のツイートすべてにいいねが押されそうな勢いで通知が鳴り響く。なんじゃこりゃ!?

 と、新しくフォロワーが増えていることに気がついた。この人がいいね連発してるんだな。誰だ?

 アカウントを覗いてみて思った。この人、あれじゃん。裏垢とか病み垢とかそんな感じの人じゃん。

 なにがどうなってこの人に目をつけられ……待った。一人だけ心当たりがあるぞ?

 ……うん。気のせい気のせい。そう思って、俺はスッとスマホをスリープさせた。もちろん、サイレントモードに切り替えて。

 そんなちょっとした事件からすぐ、二番目に来たのは白崎さんだった。


「お待たせ。ごめんね遅くなっちゃって」

「いいよ。というか、白崎さん以外来ないんだけど?」

「榊さんは私よりも早く出たんだけど?」


 などと言っていると、噂の天音がやって来た。後ろから駿太と彩乃が続く。


「お待たせ~」

「うん。あとは彰だけか」


 あいつ、おっせぇ。置いていくぞこんにゃろぉ。

 それから、待たされること三分。ようやく彰もやって来て班が揃う。彰には何か罰ゲームでも考えておこう。

 さて、全員揃ったところで出発だ。まずは夕食の店を探そう。折角だし、札幌ラーメンが食べたい。

 ホテルを出て札幌駅の地下へ。グルメ通りともいうべき場所を見つけ、そこに入っていく。うん、見事にラーメン屋ばかりだ。他の店もちらほらあるが、基本的にラーメンラーメンラーメン。

 さて、どこにしよう? これだけ多いとさすがに迷って……。


「おい翔馬! この店北海道知事賞を獲った味噌を使ったラーメン出してるらしいぜ! ここにしよう!」


 彰がそんなことを言うので、その店にする。メニューも豊富で、目移りしそうだ。

 各自で好きなラーメンを注文する。そして、俺と彰は軽く後悔した。

 いけるだろうなと思い、餃子と全盛りラーメンを頼んだ。なんでも、トッピングを全部載せしたラーメンらしい。

 地元のラーメンサイズを想像していた俺たちだが、出てきたのは軽く二倍近くある味噌ラーメン。これ、餃子いらなかったな。

 ひぃひぃ言いながら食べ進めるも、彰と違って俺は餃子を食べきれなかった。でも、残すのは何か悪い気がして、誰か食べないかと勧めてみる。


「彰いらない?」

「無理。限界」

「じゃあ、彩乃は?」

「欲しいんだけど……私もおなかいっぱいで……」

「マジすか」


 さて、ではこれどうしよう? 少し時間を置いて自分で食うか?

 すると、白崎さんがおずおずと手を挙げる。


「私、もらってもいいかな?」

「え? 食べてくれるの?」

「うん。餃子も食べてみたかったんだ」


 ありがたい! 白崎さんマジ感謝!

 残った餃子を白崎さんに渡し、タレを入れ直すためにお皿を……、


「あっ、タレはそれで大丈夫」

「え? でもこれ、俺が使ったあとだけど?」

「いいの。まだ残ってるしね」


 うーん……じゃあ、そうする? 女子ってこういうの気にするほうだと思ってた。

 タレも白崎さんに渡し、白崎さんが餃子を食べる様子を見ている。ほんと、幸せそうに頬を緩めて食べてるなぁ。気のせいか、タレに浸している気もするけど、そういうのが好きな人もいるし。

 全員が食べ終わり、お会計をして店を出る。おなかいっぱい食べたのに一人千円ほどなのだから安い。隠れ名店を見つけた気分になった。

 さて、これからどうするか。……決まってるな。

 それは、班員全員が同意見だった。顔を見合わせて声を合わせる。


「「「お土産!!」」」


 札幌駅から移動し、隣のビルに入る。この地下に、お土産館なる場所があるとか。

 そこに行ってみると、北海道のお土産を集めたような空間が広がっていた。すげぇ、ここでなら何でも揃うな。

 ここで一旦解散。各自目的のお土産を買うために散っていく。

 俺は、とりあえず無難に食品コーナーへ。北海道の有名ブランドのチョコレートやクッキー、お饅頭に果ては夕張メロンを使ったゼリーまで。

 親父とおかん、蒼一さんや志乃さんが好きそうなお菓子を適当に選ぶ。それらを持ってレジに並ぶ。

 ……一つ、疑問なんだが、どうしてレジ横のちっこい商品って買いたくなるんだろうな。俺が見つけたのは、小さなストラップ。


「……これも買おう」


 使うべき場面はすぐだ。

 全員が買い物を終え、集合場所として決めていた場所に集まる。さて、これで札幌散策も終わりの時間が近い。なんだか、寂しいような複雑な気分だ。

 ……でも、俺はまだ終わらない。今夜最大のイベントを、今から決行しなくては。


「白崎さん! いいかな?」

「ん? どうしたの?」

「少し、話があるんだ。時間、いいかな?」

「いいよ。なに?」

「ここじゃあれだから、少し移動しない? 皆は先に帰ってていいから」


 さて、翔馬! 人生最大の勝負だぞ!

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